兄が【剣聖】、妹は【聖女】になった双子の転生者はのんびり冒険者やってます♪

雪奈 水無月

文字の大きさ
49 / 53

第48話 「夜陰に紛れて」

しおりを挟む
 夜風が港町ルゼリアを撫でる。
 兄妹とロゼッタは、静かに屋敷の壁沿いに身を潜めた。

「……ここから入るわよ」
 ロゼッタが低く囁く。赤い瞳が月明かりに光る。

「了解……!」
 蓮が剣を握り、凛は小さな魔法陣を手のひらに描く。

 屋敷の裏口には、鍵がかかっていた。
 凛が小声で呟く。
「私に任せて、ね……《ロックブレイク・サークル》!」
 光の魔法陣が鍵穴に触れ、金属が軋みながら解除される。

「さすが凛……」
 蓮が感心する間もなく、三人は忍び足で屋敷の中へ滑り込んだ。



 暗い廊下を進むと、奥の部屋から微かに光が漏れている。
 黒衣の人物は巻物を広げ、何かを書き込んでいる様子だった。

「……あの人物、油断してるわね」
 ロゼッタはフードを深く被り、影に紛れる。

 蓮と凛も、息を殺して進む。
 だが、階段の軋む音や、服の擦れる音が少しでも響けば、すぐに警戒されるだろう。

「凛、左の通路を押さえて」
 蓮が指示を出す。
「わかった!」
 凛は小さく頷き、魔法で静かな光を作り出して暗闇に溶けた。



 黒衣の人物が巻物を机に広げる。
 そこには、海底王国の港の航路や、ルゼリアの防衛計画まで詳細に描かれていた。

「これは……かなり危険な情報ね」
 ロゼッタが囁く。

 その瞬間、黒衣の人物がふと手を止め、周囲を見渡した。
 赤い瞳がわずかに光る。

「……来ている?」
 ロゼッタが微かに息を潜める。

 だが、兄妹はうまく背後に隠れ、姿を見せずにいる。
 ここで気づかれたら、一巻の終わりだ。



 蓮は机に近づき、巻物を手に取るタイミングを伺う。
 ロゼッタは両手を掲げ、赤黒い魔力で小さな障壁を展開。
 その隙に凛が《シャドウ・ティア》で床板を透明化し、机の下に潜り込む。

「よし……!」
 蓮が静かに巻物を手に取る。

 その瞬間──
「……誰かいる!」
 黒衣の人物が振り向き、赤い瞳が三人を捕らえた。

「来たか……」
 ロゼッタが低く呟き、フードを払って顔を現す。

 黒衣の人物の顔色が一瞬で変わった。
「な、なんだ……吸血鬼……!?」

 その圧倒的な威圧に、兄妹は思わず身を固める。



「──油断なさらないで」
 ロゼッタが両手を振り、赤黒い鎖が宙を走る。
 黒衣の人物は剣を構えるが、鎖が瞬く間に動きを封じる。

「これで……巻物は確保可能ですわ」
 ロゼッタが囁き、蓮は巻物をしっかりと握る。
 凛も後方から光の矢を放ち、追撃を防ぐ。

 わずか数分の駆け引きで、三人は巻物を手中に収め、屋敷から静かに撤退した。



 港町の街灯の下。
 三人は息を整え、握りしめた巻物を見つめる。

「やっぱり……情報は力だな」
 蓮が真剣な眼差しで呟く。

「でも、これで海底王国の存在が確実になったわね」
 ロゼッタは巻物を軽く手に取り、微笑む。

「兄さん、次はどうする?」
 凛が期待に満ちた目で蓮を見る。

「……まずは、情報を分析して次の作戦を練ろう」
 蓮が答える。
 その背後で、ロゼッタが微かに赤い瞳を光らせる。

「この先、我々の戦いはもっと危険になりますわ……」

 港町の夜は、静かに、しかし確実に不穏な気配を孕んでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。 貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。 母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。 バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。 しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

処理中です...