兄が【剣聖】、妹は【聖女】になった双子の転生者はのんびり冒険者やってます♪

雪奈 水無月

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第52話 「黒骸海賊団との船上決戦」

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 甲板に渦巻く緊張。
 海霧を切り裂く波の轟音の中、バラード船長が大斧を振り上げた。

「行けぇぇッ! こいつらを海に沈めろォォッ!」

 咆哮と共に海賊団が一斉に飛びかかってくる。
 だが、その瞬間──。

「はああああっ!」
 蓮の剣が蒼い残光を放ち、正面の海賊を一閃。鉄の鎧ごと叩き斬り、火花を散らす。

「こっちだって負けてられないよっ!」
 凛が詠唱し、空に魔法陣を浮かべた。
 次の瞬間、数十の光の矢が降り注ぎ、海賊たちを次々と吹き飛ばす。

 甲板が爆ぜ、悲鳴と怒号が渦を巻いた。



「ふふ……退屈しない夜になりそうですわね」
 ロゼッタがゆっくりとフードを外す。赤い瞳が海霧を照らし、蒼ざめた海賊たちを睨みつける。

「吸血鬼だァァ!? こ、こんな怪物が……!」

 恐怖で震える海賊をよそに、ロゼッタは優雅に一歩踏み出した。
 その足元から黒い魔力の棘が伸び、襲いかかってきた数人を一瞬で串刺しにする。

 吸い込まれるように彼らの生命力が霧となり、ロゼッタの白い指先に流れ込んだ。

「う、美しい……だが恐ろしい……」
 敵味方の区別なく、誰もがその光景に息を呑む。



 バラードは動じずに大斧を振り下ろした。
「おらァッ! 怪物相手なら俺がやるしかねぇ!」

 轟音と共に斧が甲板を砕く。
 しかし、その直撃を蓮が剣で受け止めた。

「ぐっ……! 重い……!」
 剣と斧がぶつかり合い、衝撃波で甲板の木片が四散する。

「兄さんっ!」
 凛が叫び、雷撃の魔法を放つ。
 青白い雷が斧を伝い、バラードの全身を貫いた。

「ぐぉぉぉっ!」
 しかし、船長は歯を食いしばってなおも立ち続ける。



「こいつ、ただの人間じゃないわね……」
 ロゼッタが目を細めた。
 バラードの体に刻まれた刺青が青白く光り、傷口から黒い蒸気が噴き出す。

「……禁呪刻印か」

「ハッハァ! 俺は“海の悪鬼”と呼ばれた男だ! 人間なんざもう捨てた!」
 バラードの筋肉が膨れ上がり、巨体がさらに化け物じみた姿へと変貌していく。



「やば……兄さん! 完全に魔族寄りになってるよ!」
「わかってる! だけど、引くわけにはいかない!」

 蓮が剣を構え直し、ロゼッタは魔力を練り上げる。
 凛は二重の魔法陣を展開し、海そのものを光で覆うほどの魔力を解放した。

「行くわよ──総攻撃ッ!」



 三人の力が同時に放たれる。

 蓮の蒼剣が閃光のように斬り裂き、
 凛の光の奔流が大砲のように甲板を抉り、
 ロゼッタの紅い魔力が竜巻となって敵を飲み込む。

 夜の海に三色の輝きが交錯し、轟音と衝撃波が空を裂いた。

 バラードの巨体がその光に呑まれ、断末魔の咆哮を上げて──
 黒骸海賊団の旗艦は、甲板ごと爆散した。



 波が静まった時、残骸が海に浮かんでいた。
 蓮は肩で息をし、凛は魔力を使い果たして座り込む。
 ロゼッタは艶やかな笑みを浮かべ、月明かりに照らされた髪をなびかせた。

「お見事ですわ。これでまた伝説が一つ、増えましたわね」

 だが、その目の奥にはほんの少しだけ、不穏な影が揺れていた。
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