転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼

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第4章 フィオンティアーナ編

EX29 商人と秘書と魔王の話・Ⅱ

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 バリガンガルドにある冒険者ギルド。
 その建物の地下には倉庫がある。
 ドグラとの戦いの際、大量の鎧を提供したあの倉庫である。

 そこに、チェインハルト商会の会長であるエドがいた。
 傍にはその秘書であるクーネアが立っている。

 エドが鎧の一体の奥にある、壁の出っ張りを押した。
 一つだけ出っ張っていた石が押されると、それに合わせて壁が『開いて』いく。
 隠し扉だった。

 エドとクーネアはその扉をくぐり、さら地下へ続く下り階段を降りていく。

「ベル様の決起は成功したようですね」

「ええ。まあ、ガレンシア公のこれまでのやり方から考えれば、当然の結果でしょうね。私だって、どちらに仕えたいかと問われたら、ベル様を選びます」

 誰かに仕える気なんかかけらもないくせに、と内心苦笑しながらクーネアは頷く。

「エド様が提供したゴーレムたちの挙動も正常のようです。現状では百体。皆おとなしくベル様の兵隊として働いているようで」

「そうでなくては。ベル様にはガレンシア公国を取り戻していただかねばなりませんからね」

 エドは笑みを浮かべて言う。

 チェインハルト商会はエド・ガレンシアにゴーレム五百体を提供する。
 その代わりエドはガレンシア公国内の冒険者ギルドを増やし手厚く保護する。

 エドとベルはそういった約束を結んでいた。

 しかしもちろん、エドの目論見はそこで終わりではない。

 二人は階段を降りきりまた扉を潜る。
 そこは地下にしては大きな部屋になっていた。
 さまざまな器具や書物が置かれている。

 古代の錬金術師の工房といった雰囲気である。

 何人かの研究員が忙しそうに立ち働いている。

「調子はどうですか?」

 挨拶もなく問いかけるエドに、研究員も即座に答える。

「順調です。対象は分割後も変わらず魔力を保ち続けています。数値はすべて、分割前と同じです」

「なるほど……」

 エドは満足そうに頷き、部屋の奥へ赴く。

 仕切りがあり、その奥にもう一つ部屋がある。
 そこに、異形の肉片が横たわっていた。

 フィオンティアーナの実験施設に保管されていたものと同じ。
 しかし、そのサイズは随分と小さくなっていた。
 今は大体城の礎石ひとつ分といったところだろうか。

「ご機嫌いかがですか、魔王陛下」

 エドはそう問いかけるが、肉片は答えない。

 それでもエドは満足そうに頷くと、研究員に問う。

「分割はいくつくらいになりましたか?」

「はい。合計でゴーレム四万八七六五体分となりました」

「ふむ、素晴らしいね。では、皆さんは引き続き数値の観測を続けてください。なにか変化があったらすぐに知らせるように」

「はい」

 エドはクーネアとともに地下室を去る。
 研究員たちそれぞれにねぎらいの言葉をかけるのを忘れない。

「五万体近くですか……ゴーレムの手配が大変ですね」

 クーネアはすでにその算段を頭の中で展開しながら言う。

 ベルに提供したゴーレム兵。
 あの中には魔王の肉片が埋め込まれている。
 あいつらはそこから生まれる魔力を動力として動いていた。
 ゴーレム本体に刻まれた術式に魔力が流れることで思考回路として働くのだ。

 モンスターの肉片などを埋め込むことで魔力供給を行う。
 原初の魔法使いヘルメスが生み出した、ゴーレム創造の秘術の一端である。

 しかしエドは単にゴーレムを量産して兵器として売ろうとしているわけではない。
 それでいいなら、わざわざ魔王の肉片を使う必要はないからだ。

 古の魔力存在、魔王。
 その正体はいまだにはっきりとしない。

 ドラゴンの伝承では、世界を魔力で満たすために神々が生み出した装置とされ。
 ヤマトの里など一部の地域では、文字どおり魔族の王とされている。
 土地によって伝わるその正体は異なる。

 だが、とにかく膨大な魔力を有する『なにか』なのだ。

 エドはそれを使ってなにを為すつもりなのか。
 クーネアはその全容をまだ知らない。

「急ぐ必要はありません」

 ただ、エドは笑みを浮かべ、優しい口調でクーネアに告げる。

「時間はまだまだあります。焦ることなく、着実に、計画を進めていきましょう」
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