【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

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本編

強くなりたい

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【Rea】

十年ぶりに会った彼は、竜人だからでしょうか。

別れた時からあまり見た目は変わらず相変わらず息を飲む程綺麗で……。
そしてその瞳はあの日と変わらずどこか寂し気でした。


私を見て、彼が

「綺麗になったね」

そう言って優しく微笑んでくれました。
綺麗な人に『綺麗』と社交辞令を言われて反応に困ります。

まぁ、彼の番だった影響で、二十歳を超えたあたりから私の成長老化はゆっくり止まってしまったようで、幸か不幸か十年前に会った時とそれほど容姿は変わっていないと思うのですが。




少し世間話をした後で、彼とはすぐに別れました。

せっかく忘れかけていた彼への恋心を思い出してしまう前にとそう思ったのに、借りている部屋についてドアを閉めた瞬間、涙が溢れてその場にうずくまってしまいました。

会えばこうやってまた彼の事を忘れられなくなることが分かっていたから、また会いたいなんてそんな事を思った事もなかったのに……。
神様は残酷な事をなさるなと思います。






******

彼と会って二週間が経ちました。

彼は今頃、どの辺りを旅しているのでしょう。

そんなことを思いながら久しぶりに冒険者ギルドの隣にある食堂を訪れた時です。
全く思いも掛けず、冒険者ギルドから出て来た彼と鉢合わせました。


「エーヴェル?? どうして?! 何でまだいるの??」

また会えた喜びとは裏腹に、驚きの余り

『とっとと出ていけばいいのに』

とでも言わんばかりになってしまった私の言葉に、彼がバツが悪そうに首を掻きながら言いました。

「モンスター討伐依頼が多いらしく、しばらくここを手伝うよう頼まれたんだ」


そう言われてみれば、最近モンスターの数が増えたとか、討伐に出た手練れのパーティーが戻らないとかそんな物騒な話をよく聞く気がします。

「この街にはあとどのくらいの間いるつもり?」

また会えるかなと、そう期待してしまう心を必死に抑えた結果、まるで

『さっさと用がすんだら出て行って』

とでも言いたげな聞き方になってしまっていることに気づかずに前のめり気味に尋ねれば、彼が申し訳なさそうに言いました。

「一月程頼まれたんだが……」


「ギルドの手伝いって危なくはないの? くれぐれも無理して怪我したりしないでね?」

思わず彼に触れるのを懸命に耐えて。
でも彼がしばらくこの街にいることが嬉しくて、思わず縋るような目でそう言えば

「ありがとう。気を付ける」

彼がようやくホッとしたように顔を上げ、彼の人柄が透けて見えるような優しい穏やかな懐かしい笑顔を向けてくれました。




彼と離れた後で考えます。

お城にいたときには番ではなくなったことを理由にあっさりフラれてしまいましたが、私、今でも彼のことが好きです。
大好きです!

彼とまた会えてはっきり自覚してしまったこの気持ちは、どうしたらいいのでしょうか?


お城にいた頃、かつて彼の番であった頃の自分が書いた日記を読んだ事があります。
そこには『生まれ変わったら強くなりたい』、そう書かれていました。

番でも何でもない私にとって、王の座を退いたとは言え彼は本来手の届かない人です。

日記に書かれていた内容から察するに、かつて彼の番の私だったら、はなから彼と共にあることなんて諦めて、その姿を見ているのは苦しいからと早々にこの街をしばらくの間離れることでしょう。

でも……。
今の私はかつての私とは違うのです!
体は同じですが、かつての私が望んだ様に強く生まれ変わったのだと思っています。

そうです!!
せっかく生まれ変わったのだから、番であった私を越えるくらい彼に好きになってもらえるよう頑張ってみればいいのではないのでしょうか?!

そうと決めれば善は急げです。
少しでも彼の近くに居られるよう私も冒険者のお仕事してみようと思い、一直線に冒険者ギルドに向かいました。
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