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本編
魔法の回路
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魔法を習う為、助けた黒猫と一緒にラーシュのお部屋にお邪魔することになりました。
ラーシュは他の冒険者達と同じように長期滞在が出来る宿屋の一室に住んでいるようで、狭い部屋の中にはベッドと椅子、そして数着の着替えとカバンが一つあるだけでした。
「座って」
そう言いながら。
ラーシュが助けた黒猫の為に水と用意していた魚の干物が入った器を部屋の隅に置きました。
子猫は部屋の中でしばらく鼻をヒクヒクさせていましたが、水とご飯には口を付けず、ベッドの上に飛び乗るとそのまま丸くなって寝てしまいました。
ラーシュにうながされるまま、ベッドの向かいにおいてある椅子に座れば。
狭い部屋故、膝を付き合わせる様にしてベッドにラーシュが座りました。
「とりあえず回復呪文だけ覚えようか」
ラーシュに言われ、それがいいと頷きます。
「じゃあ、手を重ねて」
しかし手袋を外したラーシュに手を差し出され、私は酷く戸惑いました。
彼が番であった私の事を、まだ強く求めていた頃の事です。
番の香りを無くした後、何かのきっかけで他意なく彼に触れようとした時、反射的に彼にその手を払われた事がありました。
もちろん、彼はそれほど強く叩いた訳ではありませんでしたし、自分がそんなことをしてしまった事に酷くショックを受けたようで。
何度も何度も謝って
「二度とこんなことしないから」
と、そう強く誓ってくれましたが……。
私は払われた手よりも心が痛くて仕方なかったことを今でも忘れられないのです。
そんな私の途惑いに気づいたのでしょう。
ラーシュが酷く申し訳なさそうな顔をした後
「じゃあ、レーアが手を出して」
と、そんな事を言い出しました。
ラーシュの言う通りにすれば、彼が優しく私の手にその大きく綺麗な手を重ねました。
久しぶり……というよりも、以前の記憶を無くした私としてはほぼ初めて感じる大好きなラーシュの少し低めの体温に、緊張のあまり息を詰めれば
「ちゃんと息して」
そう言ってラーシュが優しく苦笑します。
泣き出しそうな顔をした私の頬に触れようと、ラーシュが思わずその手を伸ばしましたのが分かりました。
しかし……。
ラーシュは結局そうすることなくその手を下ろすと、再びその手を私の手にそっと重ねたのでした。
「始めるよ。痛かったら言って」
思いもかけなかったラーシュの言葉に、何が起こるのかと思わず身を竦めます。
しかし私が感じたのは痛みではなく、触れあった手を通して体の中を暖かなお湯が巡るような心地のよい感覚で。
思わずホッと肩の力が抜けました。
「大丈夫だった? もう少し強くしても平気?」
ラーシュにそう問われて、良く分からないまま頷きます。
『もっと暖かくなるのかな?』
なんて、のほほんとした事を考えた時でした。
「っ?!」
不意にカラダに走った、よく分からない背筋がザワッとするくすぐったさに似た感覚に、思わずラーシュの手を離そうとした瞬間、彼に指を絡めるようにして手を握り込まれました。
「痛くはないだろう。『元』とは言え番だからな。相性は悪くないはずだ」
少しだけ低くなったラーシュの声に、いつもとは違う少し乱暴な言葉遣いに、海の様に綺麗な青い青い瞳に微かに混ざった金の光に。
何かいけないことをしているような気がしてやっぱり手を引こうとした瞬間
「あっ……」
まるで舌打ちをするかのように、小さく息を漏らしたラーシュにベロッと手首を舐められ、自分でも聞いた事が無いような甘い声が洩れました。
ラーシュは他の冒険者達と同じように長期滞在が出来る宿屋の一室に住んでいるようで、狭い部屋の中にはベッドと椅子、そして数着の着替えとカバンが一つあるだけでした。
「座って」
そう言いながら。
ラーシュが助けた黒猫の為に水と用意していた魚の干物が入った器を部屋の隅に置きました。
子猫は部屋の中でしばらく鼻をヒクヒクさせていましたが、水とご飯には口を付けず、ベッドの上に飛び乗るとそのまま丸くなって寝てしまいました。
ラーシュにうながされるまま、ベッドの向かいにおいてある椅子に座れば。
狭い部屋故、膝を付き合わせる様にしてベッドにラーシュが座りました。
「とりあえず回復呪文だけ覚えようか」
ラーシュに言われ、それがいいと頷きます。
「じゃあ、手を重ねて」
しかし手袋を外したラーシュに手を差し出され、私は酷く戸惑いました。
彼が番であった私の事を、まだ強く求めていた頃の事です。
番の香りを無くした後、何かのきっかけで他意なく彼に触れようとした時、反射的に彼にその手を払われた事がありました。
もちろん、彼はそれほど強く叩いた訳ではありませんでしたし、自分がそんなことをしてしまった事に酷くショックを受けたようで。
何度も何度も謝って
「二度とこんなことしないから」
と、そう強く誓ってくれましたが……。
私は払われた手よりも心が痛くて仕方なかったことを今でも忘れられないのです。
そんな私の途惑いに気づいたのでしょう。
ラーシュが酷く申し訳なさそうな顔をした後
「じゃあ、レーアが手を出して」
と、そんな事を言い出しました。
ラーシュの言う通りにすれば、彼が優しく私の手にその大きく綺麗な手を重ねました。
久しぶり……というよりも、以前の記憶を無くした私としてはほぼ初めて感じる大好きなラーシュの少し低めの体温に、緊張のあまり息を詰めれば
「ちゃんと息して」
そう言ってラーシュが優しく苦笑します。
泣き出しそうな顔をした私の頬に触れようと、ラーシュが思わずその手を伸ばしましたのが分かりました。
しかし……。
ラーシュは結局そうすることなくその手を下ろすと、再びその手を私の手にそっと重ねたのでした。
「始めるよ。痛かったら言って」
思いもかけなかったラーシュの言葉に、何が起こるのかと思わず身を竦めます。
しかし私が感じたのは痛みではなく、触れあった手を通して体の中を暖かなお湯が巡るような心地のよい感覚で。
思わずホッと肩の力が抜けました。
「大丈夫だった? もう少し強くしても平気?」
ラーシュにそう問われて、良く分からないまま頷きます。
『もっと暖かくなるのかな?』
なんて、のほほんとした事を考えた時でした。
「っ?!」
不意にカラダに走った、よく分からない背筋がザワッとするくすぐったさに似た感覚に、思わずラーシュの手を離そうとした瞬間、彼に指を絡めるようにして手を握り込まれました。
「痛くはないだろう。『元』とは言え番だからな。相性は悪くないはずだ」
少しだけ低くなったラーシュの声に、いつもとは違う少し乱暴な言葉遣いに、海の様に綺麗な青い青い瞳に微かに混ざった金の光に。
何かいけないことをしているような気がしてやっぱり手を引こうとした瞬間
「あっ……」
まるで舌打ちをするかのように、小さく息を漏らしたラーシュにベロッと手首を舐められ、自分でも聞いた事が無いような甘い声が洩れました。
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