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番外編 永遠の迷宮探索者 ~新月の伝承と竜のつがい~
4.帰宅(side レリア)
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結局、薬草はテオが見つけてくれた。
地上へと続く道を手を繋ぎテオに支えられるようにして歩きながら、どうしてテオはそんなにも強いのかと尋ねれば。
「もう、長い事生きているからね」
と、テオはそんな不思議な事を言い出した。
テオの年の頃は二十代後半位に見える。
確かに私よりは長く生きているのだろうが、しかしそれだけが理由とは到底思えない。
難しい顔をしていたら、テオは私がまだ知らない迷宮の秘密について話してくれた。
テオの話によるとこの街にある迷宮は迷宮とも呼べない、ただの魔物の巣喰う洞穴で。
本当の迷宮は、別の世界に続く通路の一角であり、そこは外界とは流れる時間が異なるのだという。
「探索に訪れた街の食堂で食べた食事が美味しくてさ。どうしてもそれがもう一度食べたくなって探索帰りに寄ったらもう二代も代替わりしてて、結局その料理には二度とありつけなかった、なんてのはしょっちゅうかな」
そんなテオの言葉を聞いて、子供の頃読んだお話を思い出した。
『男の子が助けた妖精と共に迷宮に潜って沢山の宝を手に入れるのだけれど、数日後に地上に戻ってみればそこに住んでいた家も家族も無くなっていた』
そんな話だ。
テオの話によると、更に深い階層の存在する迷宮では時間の逆行が起こるらしく。
彼の知り合いの探索者の中には、その姿が余りに子供帰りしてしまわぬよう、時折地上で数年間に渡る休憩を取る者も少なくはないらしい。
「じゃあ、テオは本当は何歳なの?」
私の質問に、
「……さぁ、忘れてしまったな」
そう言って、テオはまたどこか寂し気に笑った。
******
テオは私を抱えたまま、随分高い距離を飛んだらしい。
私が懸命に急いだにも関わらず、地上に戻るまでに私の足では丸二日を要した。
道すがら。
私の幼い頃からの夢が竜に会う事で、こんな風に冒険に出る事に憧れていたのだと話しをすれば。
何を勘違いしたのか、テオはドラゴンスレイヤーと竜の王様の弱点のおとぎ話を、まるで傍で見て来たように私に語って聞かせ始めた。
どうやらその口ぶりからして、彼も多くの探索者の類に漏れず竜が嫌いらしい。
そんなテオに嫌われるのは怖かったけれど……。
それでも幼い頃よりの憧れを否定されるのは辛くて。
「私ね、竜が好きなの。無理やり攫って行ってしまう位自らの番を深く愛する竜の事が好きなの。番の心をを傷つけたが為酷く相手から恨まれようと、決してその側を離れないその竜の一途さが、昔から涙が零れてしまいそうなくらい愛おしく思えて仕方ないの」
そう思い切って言葉にすれば、テオは酷く驚いたような顔をして黙り込んだ。
「だから私の夢はね、竜を討伐する事なんかじゃなくて。いつか竜に会って、その愛情深さに報いる事だったの。例え私がその番として選ばれる事は無くても、それで構わないと思ってた」
続く私の告白に、テオはしばし酷く複雑な顔をして何か言いかけては止めるを繰り返していたが。
優しい人らしく、そんな私の思いを他の大人の様に、口に出して否定する事は無かった。
結局――
行きの『近道』のおかげで、どうにかまた私は弟を救うのには間に合った。
地上へと続く道を手を繋ぎテオに支えられるようにして歩きながら、どうしてテオはそんなにも強いのかと尋ねれば。
「もう、長い事生きているからね」
と、テオはそんな不思議な事を言い出した。
テオの年の頃は二十代後半位に見える。
確かに私よりは長く生きているのだろうが、しかしそれだけが理由とは到底思えない。
難しい顔をしていたら、テオは私がまだ知らない迷宮の秘密について話してくれた。
テオの話によるとこの街にある迷宮は迷宮とも呼べない、ただの魔物の巣喰う洞穴で。
本当の迷宮は、別の世界に続く通路の一角であり、そこは外界とは流れる時間が異なるのだという。
「探索に訪れた街の食堂で食べた食事が美味しくてさ。どうしてもそれがもう一度食べたくなって探索帰りに寄ったらもう二代も代替わりしてて、結局その料理には二度とありつけなかった、なんてのはしょっちゅうかな」
そんなテオの言葉を聞いて、子供の頃読んだお話を思い出した。
『男の子が助けた妖精と共に迷宮に潜って沢山の宝を手に入れるのだけれど、数日後に地上に戻ってみればそこに住んでいた家も家族も無くなっていた』
そんな話だ。
テオの話によると、更に深い階層の存在する迷宮では時間の逆行が起こるらしく。
彼の知り合いの探索者の中には、その姿が余りに子供帰りしてしまわぬよう、時折地上で数年間に渡る休憩を取る者も少なくはないらしい。
「じゃあ、テオは本当は何歳なの?」
私の質問に、
「……さぁ、忘れてしまったな」
そう言って、テオはまたどこか寂し気に笑った。
******
テオは私を抱えたまま、随分高い距離を飛んだらしい。
私が懸命に急いだにも関わらず、地上に戻るまでに私の足では丸二日を要した。
道すがら。
私の幼い頃からの夢が竜に会う事で、こんな風に冒険に出る事に憧れていたのだと話しをすれば。
何を勘違いしたのか、テオはドラゴンスレイヤーと竜の王様の弱点のおとぎ話を、まるで傍で見て来たように私に語って聞かせ始めた。
どうやらその口ぶりからして、彼も多くの探索者の類に漏れず竜が嫌いらしい。
そんなテオに嫌われるのは怖かったけれど……。
それでも幼い頃よりの憧れを否定されるのは辛くて。
「私ね、竜が好きなの。無理やり攫って行ってしまう位自らの番を深く愛する竜の事が好きなの。番の心をを傷つけたが為酷く相手から恨まれようと、決してその側を離れないその竜の一途さが、昔から涙が零れてしまいそうなくらい愛おしく思えて仕方ないの」
そう思い切って言葉にすれば、テオは酷く驚いたような顔をして黙り込んだ。
「だから私の夢はね、竜を討伐する事なんかじゃなくて。いつか竜に会って、その愛情深さに報いる事だったの。例え私がその番として選ばれる事は無くても、それで構わないと思ってた」
続く私の告白に、テオはしばし酷く複雑な顔をして何か言いかけては止めるを繰り返していたが。
優しい人らしく、そんな私の思いを他の大人の様に、口に出して否定する事は無かった。
結局――
行きの『近道』のおかげで、どうにかまた私は弟を救うのには間に合った。
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