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番外編 永遠の迷宮探索者 ~新月の伝承と竜のつがい~
6.正体(sideレリア)
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二人で、まるで駆け落ちでもするかのようにそのまま街を出た。
そのせいだろう。
そんな人が来るはずもないし、仮に誰かが私を連れ帰しに来たとて、私に帰る意思もなければテオに勝てる人なんていない事くらいテオだって分かっているだろうに。
テオは道中ずっとずっと、まるで追っ手を恐れるように先を急いでは、街から続く道を振り返ってばかりいた。
そうして――
辿りついた遠い遠い国で、テオは私に、彼の妻になる事を乞いたのだった。
******
「************」
またテオが私に何かを言った。
しかし、初めて晒されたテオの肌の香りに熱にすっかり溺れてしまった私には、やはりその言葉の意味が上手く理解出来ない。
ゆっくりと押し倒されたベッドの上、素肌に擦れるシーツの感覚さえもう苦しくて。
助けて欲しいと、あの日の様に口づけを強請れば、甘い甘いテオの香りと共に深く舌を絡められた。
テオに組み敷かれ、海に浮かんだ木の葉のように体を揺らされながら、テオの顔を盗みる。
すると、彼の瞳はありふれた青から金に変わっていて、その瞳孔は爬虫類のそれのように縦に細く割れていた。
昔見た、幾筋にも美しい内包物を含んだ琥珀の様な美しさに思わず魅入られて、また彼の目元に自ら触れれば。
天使様はもう私を拒絶することなく、
「ようやくオレの正体に気づいたの? だけど残念、君が望んだんだ。もう逃がしてなんてやらない」
そう言って、まるで懺悔のように哀しく、しかし私の知る誰よりも綺麗に笑って見せるのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
テオ視点続きます
そのせいだろう。
そんな人が来るはずもないし、仮に誰かが私を連れ帰しに来たとて、私に帰る意思もなければテオに勝てる人なんていない事くらいテオだって分かっているだろうに。
テオは道中ずっとずっと、まるで追っ手を恐れるように先を急いでは、街から続く道を振り返ってばかりいた。
そうして――
辿りついた遠い遠い国で、テオは私に、彼の妻になる事を乞いたのだった。
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「************」
またテオが私に何かを言った。
しかし、初めて晒されたテオの肌の香りに熱にすっかり溺れてしまった私には、やはりその言葉の意味が上手く理解出来ない。
ゆっくりと押し倒されたベッドの上、素肌に擦れるシーツの感覚さえもう苦しくて。
助けて欲しいと、あの日の様に口づけを強請れば、甘い甘いテオの香りと共に深く舌を絡められた。
テオに組み敷かれ、海に浮かんだ木の葉のように体を揺らされながら、テオの顔を盗みる。
すると、彼の瞳はありふれた青から金に変わっていて、その瞳孔は爬虫類のそれのように縦に細く割れていた。
昔見た、幾筋にも美しい内包物を含んだ琥珀の様な美しさに思わず魅入られて、また彼の目元に自ら触れれば。
天使様はもう私を拒絶することなく、
「ようやくオレの正体に気づいたの? だけど残念、君が望んだんだ。もう逃がしてなんてやらない」
そう言って、まるで懺悔のように哀しく、しかし私の知る誰よりも綺麗に笑って見せるのだった。
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テオ視点続きます
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