十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇

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第二章 俺の幼馴染は御曹司でポンコツで

二十六話

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「黒須、ちょっと後で話がある」


 部長は言い淀みながらそう黒須に伝えた。


「は、はい……」


 黒須はすごすごと自分のデスクへと戻っていった。

 俺は胸を撫で下ろす。

 終業のチャイムが鳴った。


「先輩、帰りましょう!」


 麗音は生き生きとした表情でこちらを見た。



「しゅん兄ちゃん、今日は」

「今日はまっすぐ帰るぞ」

「ええっ!」


 ガーン、と音がしそうな麗音の表情を、俺はぐっと堪えて続ける。


「俺は昨日スーツを変えてないんだ。洗濯物とか、掃除とかもしないといけないし、今日は帰らせてくれ」

「うー……うん、分かった」


 しょぼんとしつつも麗音は了承した。

 胸の奥が少しだけ痛んだ。


「あっそうだライン!ライン交換しよ!」

「ライン?ああそうだな、なんかあった時のために交換しとくか」


 ポケットからスマホを取り出し、ラインを交換する。

 麗音のアイコンは、シマリスの写真だった。


「ただいまー」


 誰もいないけれど、一応防犯の意味も込めて言う。

 しん、とした玄関と、その先に少し見えるリビング。

 よくある独身男性のワンルームだ。


「はー……色々、疲れることばっかだよ」


 俺は冷蔵庫に常備している発泡酒を取り出し、賞味期限の近づいた豆腐とキムチをつまみにちゃぶ台に向かう。

 かしゅ、とプルタブを開けると気泡が弾ける音が続いて聞こえる。

 一口飲んでから、俺は何気なくキャビネットの上を眺めた。

 そこには、二年前に撮った雄介のバンド十周年の集合写真があった。

 バンドメンバーやライブハウススタッフに混じり、雄介の隣に居る俺。

 雄介と恋人だと打ち明けた時は皆驚いていたが、温かく受け入れてくれた。

 なのに、なのに……


「俺が女だったら、別れなかったのかな」


 ぽた、と太腿に涙が零れた。

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