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シーベック動乱 7 搭乗操縦型ゴーレム『スターリ・ルイーツァリ』
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「ウラーッ! ウラーッ! いいぞ、わが鋼の軍団よ。鉄の嵐となって薄汚い金にまみれた豚どもを粛清するのだ! 逃げるやつは拝金主義者だ、逃げないやつは訓練された拝金主義者だ! ウラーッ! ウラーッ!」
シーベック総督府はカルサコフ率いるリビングアーマーたちによって猛攻撃にさらされていた。
城壁に開けられた狭間から間断なく放たれる攻性呪文や銃撃によってリビングアーマーたちの数は減っていくが、恐れも痛みも疲れも知らない鋼の群れの勢いは止まらない。
寄せ手の数が尽きるのが先か、守り手の戦意がくじかれるのが先か。総督府はリビングアーマーたちに押されて徐々に制圧されていく。
たとえリビングアーマーが全滅したとしてもカルサコフ自身が残っている。
みずからも魔導の鎧を身をつけた、カルサコフ自身が。
搭乗操縦型ゴーレム『スターリ・ルイーツァリ』。着用した人間の動きをそのままフィードバックして動かせるだけでなく、音声や思考による制御も部分的に可能な漆黒の巨人魔像。
四メートルを超える巨躯から繰り出される一撃の威力は破城鎚に匹敵し、その装甲は刀剣を防ぎ銃弾をも弾く。
このような規格外の怪物を屠れるとすれば魔導師級の魔術士が使えるような強力な魔術のみ。
「紅蓮の炎獅子よ・灼熱の炎虎よ・憤怒の戦吼をあげよ!」
そんな強力な魔術による攻撃によってスターリ・ルイーツァリが爆炎につつまれた。
熱エネルギーの球体を放ち、着弾地点を中心に爆炎と爆圧で薙ぎ払う爆裂の呪文【爆裂火球】。
その威力は大きく、城壁はもとより堅固な鎧や厚い皮膚を持つ生物をも粉々に破壊することができるため、城攻めのさいにもっとも多用される爆裂の呪文。
並の人間がこの爆炎に巻き込まれれば消し炭すら残らない。
「……朝に嗅ぐ攻性呪文の匂いは格別だな」
「な、なに!?」
しかし物陰に潜んでいた総督府勤めの魔導士による不意打ちはカルサコフを倒すどころか、スターリ・ルイーツァリの外装に傷ひとつ負わせることもできなかった。
黒光りする金属の表面に無数のルーンが浮かび上がっている。その文字の意味するものは耐魔。
魔術抵抗および魔術防御・回避力上昇、魔術ダメージの減少。
魔術に対するありとあらゆる防性・対抗処理が施されているのだ。
「くそっ、雷槍よ・閃き迸れ・貫き穿て!」
魔導士は矢継ぎ早に次なる攻性呪文を唱える。
【閃光雷槍】。貫通力の高い電撃の一閃で敵を射抜く、基本にして最強の呪文と名高い攻性呪文。
さらに――。
「二射!! 三射!!! 四射!!!!」
直前に使用した魔術を複数節の呪文詠唱なしにひとことのルーンを口にすることで連続発動できる最新鋭の魔術技法によって生じた幾筋もの雷光がほとばしる。
そのひとつひとつが厚い岩盤を穿ち鉄板をも貫く強力な雷光。だが先ほどの【爆裂火球】同様、内部のカルサコフどころかスターリ・ルイーツァリの外装にわずかな傷もあたえることもできなかった。
必殺必中のはずの雷光は命中寸前にひしゃげてあらぬ方向へと飛んでいってしまったり、あるいはかき消されてしまうからだ。
「魔法回避率、無効率ともに90パーセント超。計算通りだ。さぁ、次は魔法防御力について試させてくれ。んん? ……どうした、早く次を撃て。撃つんだ!」
必殺の魔術が通用しない鋼の巨人を前に呆然とする魔導士。もはや次の呪文が唱えられる状態ではなかった。
蒼白になって身をひるがえし、脱兎のごとく逃走する。
「敵に背を向けるとは、敗北主義者め。粛正だな。――鉄拳射出装置起動、発射!!」
コマンドワードに応じてスターリ・ルイーツァリの腕の先が本体からはずれ、火箭と化して突き進み、逃げる魔導士の上半身を後ろから吹き飛ばした。
腰だけを残した二本の足は数歩ほど走ると、もつれるようにしてたおれ、血と臓物をぶちまける。
射出した拳が【念動力】によって自動的に腕に戻るのを見て満足げな笑みを浮かべるカルサコフ。
そこには無駄な血を流さないよう【精神破砕】による精神的ダメージを負った女たちを治療して帰した数日前の面影はない。
血の臭いに興奮し、死と破壊に悦びを感じる狂人の姿しかなかった。
これが、カルサコフの――いや、ムードラスチという魔術結社たち全員に共通する正体であった。
知識の習得、真理の探求、魔術の奥義を極める――。
どのような正義やお題目や大義名分を掲げようが、他国を武力で侵し、政治でも経済でも文化でも芸術でもなく軍事力を誇る国の支配下におかれた集団に属する人間の心根など、しょせんはこのようなものだ。
暴力主義者に堕落し、ロッシーナの尖兵と成り果てたカルサコフの身体にかすかな振動が伝わってきた。
城壁の上に設置された複数の銃身を環状に束ねた火器――ガトリング砲から猛烈な勢いで鉄弾が発射され、リビングアーマーたちを蜂の巣にしていく。
その銃弾の嵐がカルサコフにも降りかかっているのだ。
「……ふぅむ、【矢避け】は作動せず、か。やはり火器による銃撃はやっかいだ。これは改良の余地がある。だがこの防御力、これはすばらしい!」
スターリ・ルイーツァリの表面にふたたびルーンが浮かび上がっている。魔術による攻撃を受けたときとはまた別の種類、物理的な打撃に対する盾のルーンが。
「アダマント鋼への耐物理・耐魔術符呪。予想通り、いや予想以上の出来栄えだ!」
アダマント鋼とは鋼の元素配列構造内に一定周期で炭素の層構造を配列することによって通常の鋼よりも圧倒的に優れた剛性と靭性を持たせた特殊鋼材だ。
各国内でもアダマント鋼を工業的に生産できる鍛造技術者の数はとても少なく、年間生産量はごくわずかなため、錬金術による魔術的な手法での錬成法が研究されている。
だが錬成物の永続的な固定がむずかしく、配列構造の複雑怪奇さから錬成そのものにも時間がかかるという、実に希少な金属なのだ。
このスターリ・ルイーツァリは、そのアダマント鋼によって造られ、さらに各種の符呪がほどこされた魔鋼鉄のゴーレムなのだ。
リビングアーマーたちを一瞬で鉄屑へと変えた銃撃の嵐の中を悠然と突き進む。
「……かつて世界を征服せんとした魔導皇帝ヘルヴスト=ケストリッツァーは真銀魔像を大量に造り、大いに活躍したというが、私のスターリ・ルイーツァリもそれに比肩するのではないか? ……くっくっく、シーベック兵の銃撃はまるで霧雨のようだ。銃撃というのは――不可視の手・見えざる指は・万物を動かす!」
【念動力】によって周囲に散らばる落ちた銃弾をすくい上げ、飛ばす。
念動力で斉射された何百何千という数の弾丸が炸裂。
ガトリング砲は射手もろとも粉々に破壊され、鉄と血肉の混合物となった。
狭間の狙撃手の頭部を貫通した銃弾は建物内を跳弾して城壁の中にいた兵士たちをも死に至らしめる。
亜音速で荒れ狂う鉄の飛礫は周囲を一瞬にして死の静寂に満たした。
「どうだね、シーベックの兵士諸君。これが真の銃撃というものだ。……と言ってもだれも聞いていないか」
念のために生存者を確認。視界を生命探知モードに切り替えてあたりを見渡すと瓦礫の下に生存者を発見した。
鋼のかいなで瓦礫をどかすと、ひとりの兵士が恐怖におののいた顔で見上げている。
「こ、降参だ! 降参する! 武器は捨て――ッ!?」
手にした銃を投げ捨て、両手をあげて投降の意思を示す兵士にカルサコフは無言のまま瓦礫を押しつけ圧殺した。
「なげかわしい。ここにも敗北主義者か。ひとたび戦火を交えたからには勝つか負けるか。どちらかが死ぬまで終わることはない、闘争における血と鉄の掟を忘れたか」
血肉のこびりついた瓦礫を城門にむかって投げつけると、その一撃で崩壊した。
カルサコフの進撃を阻む障害はもはや存在しない。
シーベックの権威たる総督府。
シーベックの権力を司る貴族や豪商。
シーベックの象徴である商業施設。
これら三つを徹底的に破壊し、虐殺し、蹂躙し尽くすことで堕落した街を無に帰す。
もはや目的達成は時間の問題だろう。
勝利を確信し、無人の野を征くカルサコフが歩みを止めた。
「なんだ……」
操縦席内のモニターが雲地区から潮風地区にかけて展開したリビングアーマーたちの数が減っていることを示している。
雲地区にはよほどの手練れでもいるのか。
貴族や豪商らが金にあかせて凄腕の冒険者や傭兵を雇っている可能性はある。彼らが奮戦でもしているのだろうか。
「あちらは〝将軍〟が率いる一隊がいる。たとえ歴戦の冒険者が相手だとしても、まず負けはしないだろうが……」
このまま総督府の制圧を続けるか、潮風地区にむかうか、カルサコフはしばし逡巡した。
シーベック総督府はカルサコフ率いるリビングアーマーたちによって猛攻撃にさらされていた。
城壁に開けられた狭間から間断なく放たれる攻性呪文や銃撃によってリビングアーマーたちの数は減っていくが、恐れも痛みも疲れも知らない鋼の群れの勢いは止まらない。
寄せ手の数が尽きるのが先か、守り手の戦意がくじかれるのが先か。総督府はリビングアーマーたちに押されて徐々に制圧されていく。
たとえリビングアーマーが全滅したとしてもカルサコフ自身が残っている。
みずからも魔導の鎧を身をつけた、カルサコフ自身が。
搭乗操縦型ゴーレム『スターリ・ルイーツァリ』。着用した人間の動きをそのままフィードバックして動かせるだけでなく、音声や思考による制御も部分的に可能な漆黒の巨人魔像。
四メートルを超える巨躯から繰り出される一撃の威力は破城鎚に匹敵し、その装甲は刀剣を防ぎ銃弾をも弾く。
このような規格外の怪物を屠れるとすれば魔導師級の魔術士が使えるような強力な魔術のみ。
「紅蓮の炎獅子よ・灼熱の炎虎よ・憤怒の戦吼をあげよ!」
そんな強力な魔術による攻撃によってスターリ・ルイーツァリが爆炎につつまれた。
熱エネルギーの球体を放ち、着弾地点を中心に爆炎と爆圧で薙ぎ払う爆裂の呪文【爆裂火球】。
その威力は大きく、城壁はもとより堅固な鎧や厚い皮膚を持つ生物をも粉々に破壊することができるため、城攻めのさいにもっとも多用される爆裂の呪文。
並の人間がこの爆炎に巻き込まれれば消し炭すら残らない。
「……朝に嗅ぐ攻性呪文の匂いは格別だな」
「な、なに!?」
しかし物陰に潜んでいた総督府勤めの魔導士による不意打ちはカルサコフを倒すどころか、スターリ・ルイーツァリの外装に傷ひとつ負わせることもできなかった。
黒光りする金属の表面に無数のルーンが浮かび上がっている。その文字の意味するものは耐魔。
魔術抵抗および魔術防御・回避力上昇、魔術ダメージの減少。
魔術に対するありとあらゆる防性・対抗処理が施されているのだ。
「くそっ、雷槍よ・閃き迸れ・貫き穿て!」
魔導士は矢継ぎ早に次なる攻性呪文を唱える。
【閃光雷槍】。貫通力の高い電撃の一閃で敵を射抜く、基本にして最強の呪文と名高い攻性呪文。
さらに――。
「二射!! 三射!!! 四射!!!!」
直前に使用した魔術を複数節の呪文詠唱なしにひとことのルーンを口にすることで連続発動できる最新鋭の魔術技法によって生じた幾筋もの雷光がほとばしる。
そのひとつひとつが厚い岩盤を穿ち鉄板をも貫く強力な雷光。だが先ほどの【爆裂火球】同様、内部のカルサコフどころかスターリ・ルイーツァリの外装にわずかな傷もあたえることもできなかった。
必殺必中のはずの雷光は命中寸前にひしゃげてあらぬ方向へと飛んでいってしまったり、あるいはかき消されてしまうからだ。
「魔法回避率、無効率ともに90パーセント超。計算通りだ。さぁ、次は魔法防御力について試させてくれ。んん? ……どうした、早く次を撃て。撃つんだ!」
必殺の魔術が通用しない鋼の巨人を前に呆然とする魔導士。もはや次の呪文が唱えられる状態ではなかった。
蒼白になって身をひるがえし、脱兎のごとく逃走する。
「敵に背を向けるとは、敗北主義者め。粛正だな。――鉄拳射出装置起動、発射!!」
コマンドワードに応じてスターリ・ルイーツァリの腕の先が本体からはずれ、火箭と化して突き進み、逃げる魔導士の上半身を後ろから吹き飛ばした。
腰だけを残した二本の足は数歩ほど走ると、もつれるようにしてたおれ、血と臓物をぶちまける。
射出した拳が【念動力】によって自動的に腕に戻るのを見て満足げな笑みを浮かべるカルサコフ。
そこには無駄な血を流さないよう【精神破砕】による精神的ダメージを負った女たちを治療して帰した数日前の面影はない。
血の臭いに興奮し、死と破壊に悦びを感じる狂人の姿しかなかった。
これが、カルサコフの――いや、ムードラスチという魔術結社たち全員に共通する正体であった。
知識の習得、真理の探求、魔術の奥義を極める――。
どのような正義やお題目や大義名分を掲げようが、他国を武力で侵し、政治でも経済でも文化でも芸術でもなく軍事力を誇る国の支配下におかれた集団に属する人間の心根など、しょせんはこのようなものだ。
暴力主義者に堕落し、ロッシーナの尖兵と成り果てたカルサコフの身体にかすかな振動が伝わってきた。
城壁の上に設置された複数の銃身を環状に束ねた火器――ガトリング砲から猛烈な勢いで鉄弾が発射され、リビングアーマーたちを蜂の巣にしていく。
その銃弾の嵐がカルサコフにも降りかかっているのだ。
「……ふぅむ、【矢避け】は作動せず、か。やはり火器による銃撃はやっかいだ。これは改良の余地がある。だがこの防御力、これはすばらしい!」
スターリ・ルイーツァリの表面にふたたびルーンが浮かび上がっている。魔術による攻撃を受けたときとはまた別の種類、物理的な打撃に対する盾のルーンが。
「アダマント鋼への耐物理・耐魔術符呪。予想通り、いや予想以上の出来栄えだ!」
アダマント鋼とは鋼の元素配列構造内に一定周期で炭素の層構造を配列することによって通常の鋼よりも圧倒的に優れた剛性と靭性を持たせた特殊鋼材だ。
各国内でもアダマント鋼を工業的に生産できる鍛造技術者の数はとても少なく、年間生産量はごくわずかなため、錬金術による魔術的な手法での錬成法が研究されている。
だが錬成物の永続的な固定がむずかしく、配列構造の複雑怪奇さから錬成そのものにも時間がかかるという、実に希少な金属なのだ。
このスターリ・ルイーツァリは、そのアダマント鋼によって造られ、さらに各種の符呪がほどこされた魔鋼鉄のゴーレムなのだ。
リビングアーマーたちを一瞬で鉄屑へと変えた銃撃の嵐の中を悠然と突き進む。
「……かつて世界を征服せんとした魔導皇帝ヘルヴスト=ケストリッツァーは真銀魔像を大量に造り、大いに活躍したというが、私のスターリ・ルイーツァリもそれに比肩するのではないか? ……くっくっく、シーベック兵の銃撃はまるで霧雨のようだ。銃撃というのは――不可視の手・見えざる指は・万物を動かす!」
【念動力】によって周囲に散らばる落ちた銃弾をすくい上げ、飛ばす。
念動力で斉射された何百何千という数の弾丸が炸裂。
ガトリング砲は射手もろとも粉々に破壊され、鉄と血肉の混合物となった。
狭間の狙撃手の頭部を貫通した銃弾は建物内を跳弾して城壁の中にいた兵士たちをも死に至らしめる。
亜音速で荒れ狂う鉄の飛礫は周囲を一瞬にして死の静寂に満たした。
「どうだね、シーベックの兵士諸君。これが真の銃撃というものだ。……と言ってもだれも聞いていないか」
念のために生存者を確認。視界を生命探知モードに切り替えてあたりを見渡すと瓦礫の下に生存者を発見した。
鋼のかいなで瓦礫をどかすと、ひとりの兵士が恐怖におののいた顔で見上げている。
「こ、降参だ! 降参する! 武器は捨て――ッ!?」
手にした銃を投げ捨て、両手をあげて投降の意思を示す兵士にカルサコフは無言のまま瓦礫を押しつけ圧殺した。
「なげかわしい。ここにも敗北主義者か。ひとたび戦火を交えたからには勝つか負けるか。どちらかが死ぬまで終わることはない、闘争における血と鉄の掟を忘れたか」
血肉のこびりついた瓦礫を城門にむかって投げつけると、その一撃で崩壊した。
カルサコフの進撃を阻む障害はもはや存在しない。
シーベックの権威たる総督府。
シーベックの権力を司る貴族や豪商。
シーベックの象徴である商業施設。
これら三つを徹底的に破壊し、虐殺し、蹂躙し尽くすことで堕落した街を無に帰す。
もはや目的達成は時間の問題だろう。
勝利を確信し、無人の野を征くカルサコフが歩みを止めた。
「なんだ……」
操縦席内のモニターが雲地区から潮風地区にかけて展開したリビングアーマーたちの数が減っていることを示している。
雲地区にはよほどの手練れでもいるのか。
貴族や豪商らが金にあかせて凄腕の冒険者や傭兵を雇っている可能性はある。彼らが奮戦でもしているのだろうか。
「あちらは〝将軍〟が率いる一隊がいる。たとえ歴戦の冒険者が相手だとしても、まず負けはしないだろうが……」
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