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シーベック動乱 15
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「俺は血迷ったわけでも悪魔にあやつられたわけでもない! みんな攻撃の手をゆるめるな、そして回復魔術の使える者はあの悪魔に使え。俺に考えがある、今は俺を信じろ!」
「…………!」
アヤネルをはじめ、その場にいた人々は鬼一法眼を信じた。
いや、賭けた。と言ったほうが近い。
「癒やしの風・恵みの雨・彼の者に安らぎを与えよ!」
その言葉に従い【治癒】を悪魔に使うアヤネルたち。
鬼一が猛然と攻撃を繰り出すいっぽうで相手を回復させるという異常な流れとなった。
(死ぬかな)
自身の血は流れ、体力と魔力が失われていく。
機械的に身体を動かしつつも、鬼一の頭の片隅にそんな考えが生じる。
(万魔を祓い、千妖を降し、百鬼を縛り従える。陰陽師たるこの俺が異国の地で異国の霊的特殊生物災害に負けるのかよ)
死の予感を感じたことは今までにも何度もあった。
葛城山で手持ちの式神をすべて一言主に複製されて戦闘になったとき。
京の街で牛頭天王の率いる百鬼夜行に遭遇したとき。
夜の鞍馬山で金星より飛来した護法魔王尊と相対したとき。
(ならばよし! ここで死ぬのなら俺はそれまでの男よ。なぁに、死んだら鬼となりこの悪魔を喰らってくれるわ!)
死を目前にしてなお、いや死を目前にしたからこそ鬼一の心の深奥から闘志がわいてくる。
それだけではない。
指示に従い悪魔に回復魔術を使う一方でアヤネルは鬼一の傷も癒している。
ナミも同様に隙を見ては癒しの水霊術をかけてくる。
アヤネルとナミ。ともに戦場を駆けた二人の戦乙女の援護が、加護が、助けがある。
(だれかに背中をあずけられるというのは、なんと心強いものか!)
元いた世界では特定の組織に深入り所属することなく、だれかに深入りすることなく、単独行動でひたすら霊的特殊生物災害を相手にしてきた鬼一法眼である。
このように〝助け〟を受けて戦うのは生まれて初めてであった。
これが高揚せずにいられようか。
(しかも美少女が二人も! むさいおっさんやホモ臭い優男じゃなくてスレンダー美巨乳と褐色肌の健康少女とか最高じゃねえか!)
スケベ心も加わり気力充溢。
死中に活を見出す、死を覚悟する。そのようなある意味で負の意気込みとは異なる陽の陽たる気力が全身にみなぎる。
剣をにぎる手に力がこもり、斬撃はその勢いと激しさを増し、刺突の速さと鋭さが冴え渡る。
そして、ついに――。
悪魔の身に異変が生じた。
鬼一の活剄やアヤネルの【治癒】やナミの【治癒慈雨】がかかっても傷がふさがらない。
それどころか傷が大きくなり、治したはずの傷まで開いている。
皮膚がはがれ、骨が折れ、出血性の障害が体内外の各器官で生じ、全身に壊死が広がっていく。
治癒限界。
ごく短期間に回復魔術による肉体治癒を何度も繰り返すと、とある施術回数から治癒の効きが極端に悪くなり、さらには肉体の自壊に至る状態をさす。
繰り返される過剰回復が生体組織活動に深刻な障害をあたえるために起きる現象で、戦いに身を置くだれもがこの現象を恐れる。
鬼一は経験や知識ではなく直感でこの現象を予感した。
直感は無視できない。直感とは意識では把握できない高速で処理されたデータなのである。
この悪魔はカルサコフの肉体を触媒に受肉した存在。
星幽体をした、概念が形をとった悪魔とはちがい、この世界の法則に縛られている。肉体の枷に囚われている。
肉体をもった存在ならば、治癒限界がある。
そう考えたゆえの回復魔術連続使用。
予想はあたった。
鬼一法眼の直感は的中した。
的中したのである。
「UGAAAaaaッッッ……」
もはや手をくだす必要はない。
カルサコフだった悪魔の肉体はボロボロに崩壊し、死滅した。
「キイチ!」
アヤネルとナミが鬼一のもとへと駆け寄る。
「たおしたの?」
「ああ、もうこいつは生きていない」
「勝った……勝ったわ!」
「バン・ウン・タラク・キリク・アク!」
「ひゃんっ!」
「なんばしょっと!?」
なにを思ったのか、鬼一はなにもない空にむかって印を切り呪力を放った。
「な、なによいきなり!?」
「いや、だれかに見られている気がしたんでな」
「はぁ?」
「そんなことより、まだ動けるか?」
「問題なか!」
「貴方よりかは動けるんじゃないかしら、魔晶石だってまだこんなにあるし」
「よし、なら負傷者の救助だ。こいつのせいで街中にけが人があふれているぞ」
「力なき人々を守り、助け、癒すのも王族、僧侶、治癒師の務め。まずはあなたを癒さないと」
「不要だ。この程度の負傷と不調なら活剄で回復できる。……というか、あんな方法で倒した後に治癒魔術を使われるのはなんかいや」
「あら、貴方にしてはらしくないこと言うわね」
「やるばい♪ やるばい♪
鬼一とアヤネル、ナミたちはみずからも疲弊していながらも夜遅くまで懸命に街中を奔走し、けが人の救助にあたった。
ジーベックを襲った災禍は、ようやく終焉をむかえた。
「…………!」
アヤネルをはじめ、その場にいた人々は鬼一法眼を信じた。
いや、賭けた。と言ったほうが近い。
「癒やしの風・恵みの雨・彼の者に安らぎを与えよ!」
その言葉に従い【治癒】を悪魔に使うアヤネルたち。
鬼一が猛然と攻撃を繰り出すいっぽうで相手を回復させるという異常な流れとなった。
(死ぬかな)
自身の血は流れ、体力と魔力が失われていく。
機械的に身体を動かしつつも、鬼一の頭の片隅にそんな考えが生じる。
(万魔を祓い、千妖を降し、百鬼を縛り従える。陰陽師たるこの俺が異国の地で異国の霊的特殊生物災害に負けるのかよ)
死の予感を感じたことは今までにも何度もあった。
葛城山で手持ちの式神をすべて一言主に複製されて戦闘になったとき。
京の街で牛頭天王の率いる百鬼夜行に遭遇したとき。
夜の鞍馬山で金星より飛来した護法魔王尊と相対したとき。
(ならばよし! ここで死ぬのなら俺はそれまでの男よ。なぁに、死んだら鬼となりこの悪魔を喰らってくれるわ!)
死を目前にしてなお、いや死を目前にしたからこそ鬼一の心の深奥から闘志がわいてくる。
それだけではない。
指示に従い悪魔に回復魔術を使う一方でアヤネルは鬼一の傷も癒している。
ナミも同様に隙を見ては癒しの水霊術をかけてくる。
アヤネルとナミ。ともに戦場を駆けた二人の戦乙女の援護が、加護が、助けがある。
(だれかに背中をあずけられるというのは、なんと心強いものか!)
元いた世界では特定の組織に深入り所属することなく、だれかに深入りすることなく、単独行動でひたすら霊的特殊生物災害を相手にしてきた鬼一法眼である。
このように〝助け〟を受けて戦うのは生まれて初めてであった。
これが高揚せずにいられようか。
(しかも美少女が二人も! むさいおっさんやホモ臭い優男じゃなくてスレンダー美巨乳と褐色肌の健康少女とか最高じゃねえか!)
スケベ心も加わり気力充溢。
死中に活を見出す、死を覚悟する。そのようなある意味で負の意気込みとは異なる陽の陽たる気力が全身にみなぎる。
剣をにぎる手に力がこもり、斬撃はその勢いと激しさを増し、刺突の速さと鋭さが冴え渡る。
そして、ついに――。
悪魔の身に異変が生じた。
鬼一の活剄やアヤネルの【治癒】やナミの【治癒慈雨】がかかっても傷がふさがらない。
それどころか傷が大きくなり、治したはずの傷まで開いている。
皮膚がはがれ、骨が折れ、出血性の障害が体内外の各器官で生じ、全身に壊死が広がっていく。
治癒限界。
ごく短期間に回復魔術による肉体治癒を何度も繰り返すと、とある施術回数から治癒の効きが極端に悪くなり、さらには肉体の自壊に至る状態をさす。
繰り返される過剰回復が生体組織活動に深刻な障害をあたえるために起きる現象で、戦いに身を置くだれもがこの現象を恐れる。
鬼一は経験や知識ではなく直感でこの現象を予感した。
直感は無視できない。直感とは意識では把握できない高速で処理されたデータなのである。
この悪魔はカルサコフの肉体を触媒に受肉した存在。
星幽体をした、概念が形をとった悪魔とはちがい、この世界の法則に縛られている。肉体の枷に囚われている。
肉体をもった存在ならば、治癒限界がある。
そう考えたゆえの回復魔術連続使用。
予想はあたった。
鬼一法眼の直感は的中した。
的中したのである。
「UGAAAaaaッッッ……」
もはや手をくだす必要はない。
カルサコフだった悪魔の肉体はボロボロに崩壊し、死滅した。
「キイチ!」
アヤネルとナミが鬼一のもとへと駆け寄る。
「たおしたの?」
「ああ、もうこいつは生きていない」
「勝った……勝ったわ!」
「バン・ウン・タラク・キリク・アク!」
「ひゃんっ!」
「なんばしょっと!?」
なにを思ったのか、鬼一はなにもない空にむかって印を切り呪力を放った。
「な、なによいきなり!?」
「いや、だれかに見られている気がしたんでな」
「はぁ?」
「そんなことより、まだ動けるか?」
「問題なか!」
「貴方よりかは動けるんじゃないかしら、魔晶石だってまだこんなにあるし」
「よし、なら負傷者の救助だ。こいつのせいで街中にけが人があふれているぞ」
「力なき人々を守り、助け、癒すのも王族、僧侶、治癒師の務め。まずはあなたを癒さないと」
「不要だ。この程度の負傷と不調なら活剄で回復できる。……というか、あんな方法で倒した後に治癒魔術を使われるのはなんかいや」
「あら、貴方にしてはらしくないこと言うわね」
「やるばい♪ やるばい♪
鬼一とアヤネル、ナミたちはみずからも疲弊していながらも夜遅くまで懸命に街中を奔走し、けが人の救助にあたった。
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