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鬼一法眼、異世界で奇門遁甲を説く 3
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「……これは、その、なんていうか今日の特別演習の内容は、さすがに危険なんじゃないかしら?」
「たしかに……今の爆発はかなりのものでした。ただこの〝危険〟もふくめてキイチ殿の教えたいこ事のようです」
「それはどういう意味?」
「危機感を抱かせる。いざという時に自分自身の身に迫るリアルな死や暴力に対して耐久をつけさせたいと言っていました」
「そう、それはまぁわかるけど……」
「常日頃から危ない目に遭っていれば肝が据わるから、大事の際に慌てず騒がず冷静に対処できる。そのために彼はこのような類の実戦を想定した課題を考えたと推察します」
「馬鹿げていると言いたいところだけど、確かにそれも一理あるわね。けれども今日のこれは馬鹿げていると思うわ」
「なぁ、騎士爵さん。これってなんとかならないのか?」
鬼一の罠にかかった新兵のひとりが全身にこびりついた粘液を気持ち悪そうに見下ろしてそう言った。周りにいる木の幹に貼り付いている他の新兵たちも似たような状態だった。
無理にはがそうとすれば確実に着ている服をダメにしてしまうし、生身の肌だったら皮をもっていかれ、痛い思いをすることになる。
「時間がたてば自然に朽ちるし、水をそそげば離れる」
「じゃあ、そうしてくれ」
「あと10分もすれば離れるから水がもったいない」
「ちぇ、ケチ。……つうか、この接着剤? なにでできてんだ?」
「主な材料は膠だな」
「ふ~ん、じゃあ、今の爆発。火薬はどうしたんだ?」
「硝石と硫黄に木炭、それとその他もろもろ。基本、雑貨店や気の利いた薬屋にある材料で火薬が作れる事がわかり勉強になった」
「そりゃよかっですね」
「もちろんきちんと安全面を考慮して作ったんだぞ。その証拠に音と煙しか出なかっただろ」
「たしかに」
「で、この訓練の話に入るが」
「おいおい、こんなのが訓練て言い張るのかよ」
「立派な訓練だ。実戦的な魔術が普及しつつあるからこそあえて魔術を使わない相手でも地の利や道具、これは罠のことな。を活かせば苦戦するって体で理解しただろ? で、さっきの講義で俺は孫子の兵法の話をしたが、そこで『半進半退者、誘也』半ば進み半ば退くは誘いなり。て言ったよな?」
「あー、たしかにそんなこと言ってたような言わなかったような……」
「言ったの! これ見よがしに姿を見せて、わざわざ足跡をつけて山中に潜んだんだ。次からはもっと警戒しなければいけない」
「おいおい『次』なんてあるのかよ…」
「こういう経験は大事だ、訓練で汗を流せば、戦場で血は流れない」
「あ、そのセリフはいいですね、名言です。いつか使わせてください」
「いいよ」
そう言って鬼一は木々の中へと消えていった。
鬼一がいるであろう小山を目指すデックとボウ。
「帰ってきたみんなの話だと、どの罠も怪我をするような類のものじゃない。そして罠にかかったら退場する。なんて決まりもない。という事は罠にかかっても気にせず進めばいいんだよ」
「肉を切らせて骨を断つ。猪突猛進だな、デック。ここはひたすら前進あるのみだ」
「おう! 都会の坊ちゃん嬢ちゃんにはない、チャーザー村育ちのガッツを見せてやる」
「チャーザー!」
緑にあふれた草原、川のせせらぎ、涼しい風。
遠くにはプリンプリン山をはじめとした山々が軒を連ねている。
この風景だけを見ていると訓練というより行楽のようだ。少々汚れるかもしれないが、それはそれで子どもの頃に戻って野遊びをするようで楽しい。デックとボウがそんなふうに考えつつ目前にそびえる小山にむかい突進をはじめた。
険しい坂を駆け登る。
細縄に足首を取られ吊り上げられる、どこからともなく丸太が飛んでくる、落とし穴にはまる、頭上から泥の塊や網が落ちてくる……。
「ごめん、無理だった」
ボロボロになった服の裂け目から肌をのぞかせたボウ彼らの成功を願い待っていた新兵仲間たちにつげる。
「面目ない」
ボウなど裸に近い、着ていた服はほとんど腰布のようになっていた。
例の接着剤つきトラップを強引に突破し続けた結果、衣類をもっていかれポルノまがいの三流俗悪エロラノベばりのサービスシーン状態になってしまったのだ。
もっともこいつらは野郎なので全然サービスシーンにならないが。
絵とかないし。
「さすがにこの格好じゃあリタイアだ」
「いや、俺はマッパでもいけるんだが、デックのやつがな……」
「おいおいさすがに全裸はヤバイだろ、全裸は」
「最後まで健闘した貴方がたふたりの闘志と行動力を称賛します。だからすぐに服を着てちょうだい」
内心で赤面しつつも表情には出さないアヤネルがねぎらいの言葉をかける。
「いや、でも着替えとか持ってきてないし」
「おれたちゃ裸がユニフォームってことで」
「『ことで』じゃない! ……新しい服はこちらで用意しますし破損した衣類代はこちらで出しましょう」
「おお、太っ腹!」
「さすがアヤネル王女!」
「動ける人はいなくなったけど、日没までまだ時間があるわね。あたし、ちょっと行って終わらせてくる」
「私も同行いたします」
「そうね、シェラ。貴方も一緒に来てちょうだい。貴方の身体が役に立つかも」
「は? はい」
「たしかに……今の爆発はかなりのものでした。ただこの〝危険〟もふくめてキイチ殿の教えたいこ事のようです」
「それはどういう意味?」
「危機感を抱かせる。いざという時に自分自身の身に迫るリアルな死や暴力に対して耐久をつけさせたいと言っていました」
「そう、それはまぁわかるけど……」
「常日頃から危ない目に遭っていれば肝が据わるから、大事の際に慌てず騒がず冷静に対処できる。そのために彼はこのような類の実戦を想定した課題を考えたと推察します」
「馬鹿げていると言いたいところだけど、確かにそれも一理あるわね。けれども今日のこれは馬鹿げていると思うわ」
「なぁ、騎士爵さん。これってなんとかならないのか?」
鬼一の罠にかかった新兵のひとりが全身にこびりついた粘液を気持ち悪そうに見下ろしてそう言った。周りにいる木の幹に貼り付いている他の新兵たちも似たような状態だった。
無理にはがそうとすれば確実に着ている服をダメにしてしまうし、生身の肌だったら皮をもっていかれ、痛い思いをすることになる。
「時間がたてば自然に朽ちるし、水をそそげば離れる」
「じゃあ、そうしてくれ」
「あと10分もすれば離れるから水がもったいない」
「ちぇ、ケチ。……つうか、この接着剤? なにでできてんだ?」
「主な材料は膠だな」
「ふ~ん、じゃあ、今の爆発。火薬はどうしたんだ?」
「硝石と硫黄に木炭、それとその他もろもろ。基本、雑貨店や気の利いた薬屋にある材料で火薬が作れる事がわかり勉強になった」
「そりゃよかっですね」
「もちろんきちんと安全面を考慮して作ったんだぞ。その証拠に音と煙しか出なかっただろ」
「たしかに」
「で、この訓練の話に入るが」
「おいおい、こんなのが訓練て言い張るのかよ」
「立派な訓練だ。実戦的な魔術が普及しつつあるからこそあえて魔術を使わない相手でも地の利や道具、これは罠のことな。を活かせば苦戦するって体で理解しただろ? で、さっきの講義で俺は孫子の兵法の話をしたが、そこで『半進半退者、誘也』半ば進み半ば退くは誘いなり。て言ったよな?」
「あー、たしかにそんなこと言ってたような言わなかったような……」
「言ったの! これ見よがしに姿を見せて、わざわざ足跡をつけて山中に潜んだんだ。次からはもっと警戒しなければいけない」
「おいおい『次』なんてあるのかよ…」
「こういう経験は大事だ、訓練で汗を流せば、戦場で血は流れない」
「あ、そのセリフはいいですね、名言です。いつか使わせてください」
「いいよ」
そう言って鬼一は木々の中へと消えていった。
鬼一がいるであろう小山を目指すデックとボウ。
「帰ってきたみんなの話だと、どの罠も怪我をするような類のものじゃない。そして罠にかかったら退場する。なんて決まりもない。という事は罠にかかっても気にせず進めばいいんだよ」
「肉を切らせて骨を断つ。猪突猛進だな、デック。ここはひたすら前進あるのみだ」
「おう! 都会の坊ちゃん嬢ちゃんにはない、チャーザー村育ちのガッツを見せてやる」
「チャーザー!」
緑にあふれた草原、川のせせらぎ、涼しい風。
遠くにはプリンプリン山をはじめとした山々が軒を連ねている。
この風景だけを見ていると訓練というより行楽のようだ。少々汚れるかもしれないが、それはそれで子どもの頃に戻って野遊びをするようで楽しい。デックとボウがそんなふうに考えつつ目前にそびえる小山にむかい突進をはじめた。
険しい坂を駆け登る。
細縄に足首を取られ吊り上げられる、どこからともなく丸太が飛んでくる、落とし穴にはまる、頭上から泥の塊や網が落ちてくる……。
「ごめん、無理だった」
ボロボロになった服の裂け目から肌をのぞかせたボウ彼らの成功を願い待っていた新兵仲間たちにつげる。
「面目ない」
ボウなど裸に近い、着ていた服はほとんど腰布のようになっていた。
例の接着剤つきトラップを強引に突破し続けた結果、衣類をもっていかれポルノまがいの三流俗悪エロラノベばりのサービスシーン状態になってしまったのだ。
もっともこいつらは野郎なので全然サービスシーンにならないが。
絵とかないし。
「さすがにこの格好じゃあリタイアだ」
「いや、俺はマッパでもいけるんだが、デックのやつがな……」
「おいおいさすがに全裸はヤバイだろ、全裸は」
「最後まで健闘した貴方がたふたりの闘志と行動力を称賛します。だからすぐに服を着てちょうだい」
内心で赤面しつつも表情には出さないアヤネルがねぎらいの言葉をかける。
「いや、でも着替えとか持ってきてないし」
「おれたちゃ裸がユニフォームってことで」
「『ことで』じゃない! ……新しい服はこちらで用意しますし破損した衣類代はこちらで出しましょう」
「おお、太っ腹!」
「さすがアヤネル王女!」
「動ける人はいなくなったけど、日没までまだ時間があるわね。あたし、ちょっと行って終わらせてくる」
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「は? はい」
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