魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行

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辺境異聞 8 吸血鬼

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 吸血鬼、それは暗黒の貴公子、アンデッドの頂点、不死者の王。
 かりそめの生を過ごし、黄昏に目覚め、夜明けに恐怖し、憧れる者。
 その起源は神話の時代にまでさかのぼる。
 人類最初の殺人を犯したある人間が神によって不死の呪いを受けた。
 彼、あるいは彼女はみずからの呪いに苦しみ、生と死について徹底的に調べたが、それを解く方法は見つからなかった。
 だが他人におなじ呪いをかける方法は見つかった。それが、吸血鬼のはじまりだ。
 そしてそれには知恵ある者の生き血を求めてしまうという新たな呪いまでくわわってしまった。
 吸血鬼の能力はひとりひとりがまったく異なっている。
 太陽の光に極端に弱く、陽光に焼かれる者もいれば、そうでない者もいる。
 流れ水を渡ることができない、足を踏み入れれば麻痺する者もいれば、そうでない者もいる。
 善なる神々の聖印に弱い者もいれば、そうでない者もいる。
 昼間は眠って活動を停止しなければならない者もいれば、そうでない者もいる。
 知的生物の血を吸わなければ死んでしまう者もいれば、飢えや渇きにさいなまれることはあっても死なない者もいる。

「やつらは個体差が大きいんだ。他に特徴といえば――」

 赤く光る眼には恐怖フィアー麻痺パラライズ魅了チャームの魔力があり、狼や蝙蝠や鼠、霧に姿を変えることができる。
 人並み外れた怪力と敏捷力、極めて高い魔力と治癒力。
 心臓に杭を打ち込まれない限り、一度死亡しても復活し続ける。その再生能力は凄まじく、燃やし尽くして灰にしても、したたり落ちた一滴の血からよみがえることもある。

「――といった特殊能力を持つ。また吸血鬼は血を吸いつくした獲物を、おのれの一族にくわえることがあり――」

 相手の血を吸い尽くしてから自分の血を与える儀式を行う。
 この際に一度で血を吸い尽くせばスレイブ・ヴァンパイアと呼ばれる干からびた怪物になる。
 スレイブは下僕としてしかあつかわれず、意識をなくし知力が極端に低下する代わりに体力と生命力が高まり、並のゾンビやスケルトンよりは手ごわいアンデッド・モンスターだ。
 二度ならば姿はそのままで記憶をなくしたレッサー・ヴァンパイアとなる。
 意識を持ち知力はそのままだが、血を吸った主人の手下となる。レッサーは魅了や変身などの特殊能力は持たないが、怪力や再生能力は吸血鬼と変わりはない。
 三度なら姿にくわえても記憶も知力もそのままに、性格だけが邪悪となった吸血鬼となる。
 この場合、血を分け与えた吸血鬼から対等の仲間としてあつかわれることが多い。

「なるほどな~。で、リッチのほうは?」
「禁断の魔術の果てに死にぞこないアンデッドと化した出来損ないの不老不死。生者から精気を吸わないと自分の身体を維持することもできない、醜く生き汚い無様な化け物。以上」
「なんか、吸血鬼の説明とくらべてぞんざいじゃね? リッチに遺恨でもあるのか?」
「これがやつらのすべてだ」
「…………」

 どうもウィリデはリッチという存在が嫌いらしい。先入観ありきの説明を聞くのもなんなので、鬼一はリッチに関してはウィリデからそれ以上のことを聞かないことにした。
 必要なことは他者の言葉ではなく、自分自身の目と耳で調べるのが一番だ。

「まぁ、リッチについてはもういい。リッチと吸血鬼の差異はなんだ?」
「リッチが純粋な魔術によって不死性を得たのに対し、吸血鬼は魔術的な措置の他に悪魔や邪神の加護を得て不死と化すんだ」
「なるほどな~」
「……この城の主は、いやこの城の住人すべて吸血鬼かもしれない」
「う~ん、だが一応みんな『人の気』をしているんだよなぁ」
「気? ああ、そういえばおまえはそういうのがわかるんだったな」
「陰の気、負の生命力は感じられない。ただ、みんな妙に弱々しい気なのが面妖だが」
「かたっぱしから【聖光ホーリー・ライト】でもぶちかましてやるか」

聖光ホーリー・ライト】。屍鬼や悪霊などへの対抗手段として考案された祓魔の浄化呪文。術者を中心とした光を生み出し、対象を祓い清める神聖魔術。

「優雅でない真似はやめろ。……まてよ、この城にはまだ俺たちの知らない人物が潜んでいるかもしれないぞ」
「そいつが黒幕の吸血鬼だとでも?」
「まだ吸血鬼だと決まったわけではないが」
「おいおい、なにを言ってるんだ。首筋にふたつの穴が開いた血のない死体が出てきたんだぞ。今回のお話は吸血鬼ものに決まっているだろ」
「いや、まあ、たしかにお約束だが……」

 shinyピカッ! clapバリバリ! kaboomドカーン

 pourザー pourザー

 雷光がほとばしり、雷鳴が轟く。
 小降りになっていた雨がまた強く降り出した。大粒の雨が温室の壁を叩く。
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