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新たなる脅威
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ワッシャー島に慈雨を降らしロッシーナの陣をなぎ払った嵐はとっくの前に消え、満天の星々が漆黒の空を飾っている。そんな銀のしずくが降りしきるような星空の下、鬼一法眼は自由を謳歌していた。
いかなる法の束縛、規則や規制に縛られることなく呪術を行使する自由を。
「乗虚御空、飛霊八方、廻転舞天。急々如律令!」
空を飛ぶ乗矯術を発動させ、フィギュアスケートの選手が銀盤を舞うように海上すれすれをすいすいと軽快に駆ける。
繰り返すが法眼のいた日本では退魔庁の定めた規則により呪術の使用は国が承認した資格を持つ者に限られ、またその使用に関しても厳密には細かい規定がいくつも設けられており、公共の場で好き勝手に使用しても良いものではない。
退魔庁が公式に認可している退魔師育成機関、たとえば陰陽学院などの生徒は機関の最高責任者の管理化でのみ、授業内などでは特別に呪術の使用が認められているが街中で自由に使えるものではない。
呪術者は不自由を強いられているのだ。
「自由だ! 俺は自由だ。それに、人に認められている……」
現代日本の呪術者に対する世間の目は厳しい。
霊的特殊生物災害の出現と共にそれまでうさん臭い詐欺師だと思われていた霊能者や拝み屋が実際に効果のある呪術・魔術を使い出したため、彼ら彼女らを霊的特殊生物災害と同様に思う人々は多い。
どんなに多くの怪異を祓い鎮めても「マッチポンプ」のように見えてしまうのだ。
どうせおまえらもおなじバケモノだろう、と。
「この世界の住人は違う、俺はみんなに認められた――」
喝采願望と承認欲求。このふたつこそ現代日本の呪術師たちが大なり小なり内に秘めている鬱結した感情であった。
「じゃっど、認めてやる!」
「ッ!?」
海面が飛沫を上げると鬼一を目がけて一筋の水流がほとばしる。
「土剋水!」
鬼一を打ちのめすかに見えた水流は雲散霧消した。
五行相生・相剋、土行を以って水行を剋す。
鬼一は土行術をもちいて自身に向かってきた水流を防いだのだ。
「おおっ、やるじゃんね!」
「……ナミか」
海面から姿を現したのは赤銅色の髪に褐色の肌色をした若い娘、ワッシャー海賊団頭領の娘ナミであった。
「今の術はなんだ」
「へっへっへー、ワッシャー海賊団に伝わる水霊術【水流尖】だ!」
「そのまんまだな」
「まだまだあるぞ!」
「よせよせ、いたずらにおのれの技を晒すものじゃないぞ」
「いたずら? 伊達や酔狂であんたにからんでんじゃないよ」
「ほう?」
「あたしは15年も生きてきて戦らしい戦は今回がはいめっなんよ、無駄に長く生きてきてようやく死に場所が見つかった。血が騒いでしょんなか」
「若くして死に場所を求めるとは、大鳥逸平かよ」
大鳥逸平。江戸時代のかぶき者で大久保長安に仕えた武士であったが長安の死後は武家の奉公人などを集めて徒党を組み「二十五まで生きすぎたりしや逸平」と銘を入れた太刀を手に暴れまわった。
しかしその狼藉ゆえに幕府から指名手配され、捕縛されて処刑された。
戦国乱世のまっただ中に生まれていれば武辺者として名を馳せていたであろうに、なまじ平和になりつつある世に生まれたがゆえに能力を発揮できなかった、ある意味不幸な人物だ。
「そこにあんたが現れて、摩訶不思議な術で侵略者どもを蹴散らしちまった。血が騒いで騒いで、しょんなか!」
そう言うとナミ音はもなく海面に立ち上がった。立ち泳ぎなのではない、完全に水の上に立っている。
「……今度は俺が『やるじゃん』と驚く番のようだ。それはなんだ? 体術でそこまではできない、かといってこの世界の――ルーン魔術とやらを使ったようには見えなかった」
「ワッシャー海賊団には魔法語魔術とはちごど独自の水霊術が伝わっている、これもそのひとつさ」
「なるほど、この世界の魔術、呪術もひとつではないのだな」
神道、密教、修験道、道教、その他数多の呪術宗派――それらの統合呪術ともいえる陰陽術を修めた法眼には複数の魔術が存在することを抵抗なく受け入れた。
「勝負しようぜ、術くらべだ」
「よせよせ、おまえも〝戦士〟ならいたずらに技や術を披露するのは三流のすることだと理解できよう」
「たいした技や術も使わない純粋な力くらべならいいだろ。相撲だ相撲、レスリングだ♪」
「まったく、まるで河童だな」
ナミの話す言葉は日本語ではない。鬼一の耳に入るのは異国の言語なのだが頭には日本語として伝わり『相撲』や『レスリング』と訳される。鬼一の脳は実に珍妙な二か国語放送に晒されているのだが、すでに慣れていた。
「昔の異世界ものラノベなんて言葉が通じないから最初は必死になって言語を覚えるシーンとかあったんだよな、その点俺は言葉の壁がないから楽なものだ」
「せからしかっ! ぶつくさいっちょらんでやるのかやらんのかはっきりしい!」
「こちらに選択の余地があるとは思えないが……その前に頼みがある」
「なんちな?」
「その変な訛りをなくして普通にしゃべってくれないか? ヘンテコな言葉遣いでキャラ作りするのって三流の書き手のすることなんだよね、それにいちいち鹿児島弁を調べて書くのがおっくうだと作者がめんどくさがっている」
「アホか、さっき地の文で脳内に翻訳される云々とか書いてあったろ。鹿児島弁でも共通語でも勝手に訳せ」
第四の壁を破りながら鬼一とナミは海上から砂浜へと場所を移し、相撲をとることにした。
ルールは簡単、先に地面に背中をつけたほうが負けだ。
「どすこ~い!」
向かい合った瞬間、ナミのぶちかましが炸裂。
さながらクロスボウから射出された弾丸のごとき勢いで鬼一に迫るが、軽くかわされた。
鬼一は砂に足を取られる、などという無様な姿は見せなかった。
なにもないのは道場だけ。
幼い頃より山野を駆け、滝に打たれ、『武術はもっとも実践的な魔術のひとつ』という教えのもとで鍛錬を重ねてきたのだ。
板や畳の上でしか戦わない、「よーい、ドン」の合図がなければスイッチの入らない現代の格闘家とは違うのだ。
「チェストーッ!」
ナミは間髪を入れずに突きや蹴りの連激をくり出す。
打撃は相手と接触するためのきっかけにすぎない。格闘戦はどうしても密着するものである。こちらから相手との接触点を作り、そこから手首をつかんだり、側面や背後にまわったり投げたりと、なんでもありだ。
打つ、突く、蹴る、投げる、崩す、極める、締める、固める、組み伏せる、挫く、受ける、避ける、捌く――。
拳と拳、脚と脚、身体と身体がぶつかり合う目まぐるしい素手の応酬。
「おまえ、強いな! あたしの思った通りのツワモノだ!」
「そりゃどうもッ!」
つかまれてあやうく投げ飛ばされそうになったナミだが、鬼一の身体にしがみついてやりすごす。
投げられそうだからと柔道式の受け身なぞとらない、下が畳などではないのが実戦である。音の出るような柔道式の受け身をアスファルトや砂利の上でしたら怪我をするだけで受け身をとる意味などない。
ナミ、実に実戦慣れをしていた。
「落ちろっ!」
「ええい、いい加減にせんか小娘!」
ナミはそのまま羽交い締めにしようとするが鬼一は後ろにまわした手で頭をつかみ前転してナミの背中を地に着けようとする。
ぬるり。
(なに?!)
鬼一の手がすべった。
いつの間にかナミの体を潤滑油のようなものがおおっており、それによってまともにつかめないのだ。
「なんだこりゃ!?」
「ふっふっふ~、ワッシャー海賊団に伝わる水霊術【潤粘滑体】だ! ぬるぬるの術だ!」
「カラリパヤットやヤールギュレシかよ……」
カラリパヤット。
南インドのケーララ州に伝わる武術でヒンドゥー教とも深いつながりがある。多彩な足技に様々な武器の技法を組み合わせたものが中心で、上級者は経穴への当て身も学ぶという。
カラリパヤットの使い手は伝統的に全身に油を塗って戦うが、これには相手からつかまれない、打撃の威力を下げるという意味を持つ。
ヤールギュレシ。
トルコに伝わる組み技を主とした格闘技で、やはり体にオイルを塗って戦う。これにより相手をつかんだり投げるには超人的な膂力や高い技術が必要となる。
「つうかそういう技や術は使わないんじゃなかったのか?」
「戦いは勢いだ!」
前に倒れないのなら後ろに倒れてしまえ。
背中から地面にダイブするが、素早く反応したナミは体を移して法眼の背中から前に移る。これでは地に背を着けるのは法眼のほうだ。
「なんの!」
しかし反応の早さなら法眼とて負けてはいない。【翻鯉転身】の絶技を駆使してさらに体を入れ替えようとしてたがいに側面から地に着く。
背中ではない、横腹だ。
まだ勝負はついていない。
つかんで組み伏せようと寝技の応酬となるが【潤粘滑体】による効果は絶大で法眼の手はヌルリ、
ヌメリとすべって空を切るばかり。
対してナミのほうも若い娘とは思えない剛力で押さえ込もうとするも法眼は体術を駆使してそれを拒む。
「はぁはぁハァハァ」
ヌルヌル――。
「はっ、はっ、はっ」
クチャクチャ――。
「んっ、くっ、あっ」
チャプチャプ――。
薄暗い闇夜にナミの激しい息遣いと吐息と潤粘体による湿った音が響き渡る。
(おお、これではまるでスク水ローションヌルヌルマットプレイではないか……! よく見ればこのナミ、有るか無しかの程よい貧乳。スクール水着もといシュクミズとやらが一番似合う体形――これはエロい)
思わね僥倖に股間を固くして相好を崩す鬼一。
戦いのさなかで色香に迷う。鬼一法眼、こういう男である。
欲望の塊である。
「おいっ、ヘラヘラしやがって真面目にやれ真面目に!」
「おお、真面目だとも。俺はいつだって真面目だ。たとえふざけている時でも真面目だ――むっ!」
遠くから剣呑な気を感じる。
それも生半可なものではない、流血をともなう破壊と暴力、死の気配を濃厚にただよわせる気配。
だが人ならざるものの放つ妖気や邪気、魔術や呪術の類ではない、これは――。
「軍気だ」
人が人を傷つけ、殺そうとする殺意の気配。それが彼方に広まるのを感じた
いかなる法の束縛、規則や規制に縛られることなく呪術を行使する自由を。
「乗虚御空、飛霊八方、廻転舞天。急々如律令!」
空を飛ぶ乗矯術を発動させ、フィギュアスケートの選手が銀盤を舞うように海上すれすれをすいすいと軽快に駆ける。
繰り返すが法眼のいた日本では退魔庁の定めた規則により呪術の使用は国が承認した資格を持つ者に限られ、またその使用に関しても厳密には細かい規定がいくつも設けられており、公共の場で好き勝手に使用しても良いものではない。
退魔庁が公式に認可している退魔師育成機関、たとえば陰陽学院などの生徒は機関の最高責任者の管理化でのみ、授業内などでは特別に呪術の使用が認められているが街中で自由に使えるものではない。
呪術者は不自由を強いられているのだ。
「自由だ! 俺は自由だ。それに、人に認められている……」
現代日本の呪術者に対する世間の目は厳しい。
霊的特殊生物災害の出現と共にそれまでうさん臭い詐欺師だと思われていた霊能者や拝み屋が実際に効果のある呪術・魔術を使い出したため、彼ら彼女らを霊的特殊生物災害と同様に思う人々は多い。
どんなに多くの怪異を祓い鎮めても「マッチポンプ」のように見えてしまうのだ。
どうせおまえらもおなじバケモノだろう、と。
「この世界の住人は違う、俺はみんなに認められた――」
喝采願望と承認欲求。このふたつこそ現代日本の呪術師たちが大なり小なり内に秘めている鬱結した感情であった。
「じゃっど、認めてやる!」
「ッ!?」
海面が飛沫を上げると鬼一を目がけて一筋の水流がほとばしる。
「土剋水!」
鬼一を打ちのめすかに見えた水流は雲散霧消した。
五行相生・相剋、土行を以って水行を剋す。
鬼一は土行術をもちいて自身に向かってきた水流を防いだのだ。
「おおっ、やるじゃんね!」
「……ナミか」
海面から姿を現したのは赤銅色の髪に褐色の肌色をした若い娘、ワッシャー海賊団頭領の娘ナミであった。
「今の術はなんだ」
「へっへっへー、ワッシャー海賊団に伝わる水霊術【水流尖】だ!」
「そのまんまだな」
「まだまだあるぞ!」
「よせよせ、いたずらにおのれの技を晒すものじゃないぞ」
「いたずら? 伊達や酔狂であんたにからんでんじゃないよ」
「ほう?」
「あたしは15年も生きてきて戦らしい戦は今回がはいめっなんよ、無駄に長く生きてきてようやく死に場所が見つかった。血が騒いでしょんなか」
「若くして死に場所を求めるとは、大鳥逸平かよ」
大鳥逸平。江戸時代のかぶき者で大久保長安に仕えた武士であったが長安の死後は武家の奉公人などを集めて徒党を組み「二十五まで生きすぎたりしや逸平」と銘を入れた太刀を手に暴れまわった。
しかしその狼藉ゆえに幕府から指名手配され、捕縛されて処刑された。
戦国乱世のまっただ中に生まれていれば武辺者として名を馳せていたであろうに、なまじ平和になりつつある世に生まれたがゆえに能力を発揮できなかった、ある意味不幸な人物だ。
「そこにあんたが現れて、摩訶不思議な術で侵略者どもを蹴散らしちまった。血が騒いで騒いで、しょんなか!」
そう言うとナミ音はもなく海面に立ち上がった。立ち泳ぎなのではない、完全に水の上に立っている。
「……今度は俺が『やるじゃん』と驚く番のようだ。それはなんだ? 体術でそこまではできない、かといってこの世界の――ルーン魔術とやらを使ったようには見えなかった」
「ワッシャー海賊団には魔法語魔術とはちごど独自の水霊術が伝わっている、これもそのひとつさ」
「なるほど、この世界の魔術、呪術もひとつではないのだな」
神道、密教、修験道、道教、その他数多の呪術宗派――それらの統合呪術ともいえる陰陽術を修めた法眼には複数の魔術が存在することを抵抗なく受け入れた。
「勝負しようぜ、術くらべだ」
「よせよせ、おまえも〝戦士〟ならいたずらに技や術を披露するのは三流のすることだと理解できよう」
「たいした技や術も使わない純粋な力くらべならいいだろ。相撲だ相撲、レスリングだ♪」
「まったく、まるで河童だな」
ナミの話す言葉は日本語ではない。鬼一の耳に入るのは異国の言語なのだが頭には日本語として伝わり『相撲』や『レスリング』と訳される。鬼一の脳は実に珍妙な二か国語放送に晒されているのだが、すでに慣れていた。
「昔の異世界ものラノベなんて言葉が通じないから最初は必死になって言語を覚えるシーンとかあったんだよな、その点俺は言葉の壁がないから楽なものだ」
「せからしかっ! ぶつくさいっちょらんでやるのかやらんのかはっきりしい!」
「こちらに選択の余地があるとは思えないが……その前に頼みがある」
「なんちな?」
「その変な訛りをなくして普通にしゃべってくれないか? ヘンテコな言葉遣いでキャラ作りするのって三流の書き手のすることなんだよね、それにいちいち鹿児島弁を調べて書くのがおっくうだと作者がめんどくさがっている」
「アホか、さっき地の文で脳内に翻訳される云々とか書いてあったろ。鹿児島弁でも共通語でも勝手に訳せ」
第四の壁を破りながら鬼一とナミは海上から砂浜へと場所を移し、相撲をとることにした。
ルールは簡単、先に地面に背中をつけたほうが負けだ。
「どすこ~い!」
向かい合った瞬間、ナミのぶちかましが炸裂。
さながらクロスボウから射出された弾丸のごとき勢いで鬼一に迫るが、軽くかわされた。
鬼一は砂に足を取られる、などという無様な姿は見せなかった。
なにもないのは道場だけ。
幼い頃より山野を駆け、滝に打たれ、『武術はもっとも実践的な魔術のひとつ』という教えのもとで鍛錬を重ねてきたのだ。
板や畳の上でしか戦わない、「よーい、ドン」の合図がなければスイッチの入らない現代の格闘家とは違うのだ。
「チェストーッ!」
ナミは間髪を入れずに突きや蹴りの連激をくり出す。
打撃は相手と接触するためのきっかけにすぎない。格闘戦はどうしても密着するものである。こちらから相手との接触点を作り、そこから手首をつかんだり、側面や背後にまわったり投げたりと、なんでもありだ。
打つ、突く、蹴る、投げる、崩す、極める、締める、固める、組み伏せる、挫く、受ける、避ける、捌く――。
拳と拳、脚と脚、身体と身体がぶつかり合う目まぐるしい素手の応酬。
「おまえ、強いな! あたしの思った通りのツワモノだ!」
「そりゃどうもッ!」
つかまれてあやうく投げ飛ばされそうになったナミだが、鬼一の身体にしがみついてやりすごす。
投げられそうだからと柔道式の受け身なぞとらない、下が畳などではないのが実戦である。音の出るような柔道式の受け身をアスファルトや砂利の上でしたら怪我をするだけで受け身をとる意味などない。
ナミ、実に実戦慣れをしていた。
「落ちろっ!」
「ええい、いい加減にせんか小娘!」
ナミはそのまま羽交い締めにしようとするが鬼一は後ろにまわした手で頭をつかみ前転してナミの背中を地に着けようとする。
ぬるり。
(なに?!)
鬼一の手がすべった。
いつの間にかナミの体を潤滑油のようなものがおおっており、それによってまともにつかめないのだ。
「なんだこりゃ!?」
「ふっふっふ~、ワッシャー海賊団に伝わる水霊術【潤粘滑体】だ! ぬるぬるの術だ!」
「カラリパヤットやヤールギュレシかよ……」
カラリパヤット。
南インドのケーララ州に伝わる武術でヒンドゥー教とも深いつながりがある。多彩な足技に様々な武器の技法を組み合わせたものが中心で、上級者は経穴への当て身も学ぶという。
カラリパヤットの使い手は伝統的に全身に油を塗って戦うが、これには相手からつかまれない、打撃の威力を下げるという意味を持つ。
ヤールギュレシ。
トルコに伝わる組み技を主とした格闘技で、やはり体にオイルを塗って戦う。これにより相手をつかんだり投げるには超人的な膂力や高い技術が必要となる。
「つうかそういう技や術は使わないんじゃなかったのか?」
「戦いは勢いだ!」
前に倒れないのなら後ろに倒れてしまえ。
背中から地面にダイブするが、素早く反応したナミは体を移して法眼の背中から前に移る。これでは地に背を着けるのは法眼のほうだ。
「なんの!」
しかし反応の早さなら法眼とて負けてはいない。【翻鯉転身】の絶技を駆使してさらに体を入れ替えようとしてたがいに側面から地に着く。
背中ではない、横腹だ。
まだ勝負はついていない。
つかんで組み伏せようと寝技の応酬となるが【潤粘滑体】による効果は絶大で法眼の手はヌルリ、
ヌメリとすべって空を切るばかり。
対してナミのほうも若い娘とは思えない剛力で押さえ込もうとするも法眼は体術を駆使してそれを拒む。
「はぁはぁハァハァ」
ヌルヌル――。
「はっ、はっ、はっ」
クチャクチャ――。
「んっ、くっ、あっ」
チャプチャプ――。
薄暗い闇夜にナミの激しい息遣いと吐息と潤粘体による湿った音が響き渡る。
(おお、これではまるでスク水ローションヌルヌルマットプレイではないか……! よく見ればこのナミ、有るか無しかの程よい貧乳。スクール水着もといシュクミズとやらが一番似合う体形――これはエロい)
思わね僥倖に股間を固くして相好を崩す鬼一。
戦いのさなかで色香に迷う。鬼一法眼、こういう男である。
欲望の塊である。
「おいっ、ヘラヘラしやがって真面目にやれ真面目に!」
「おお、真面目だとも。俺はいつだって真面目だ。たとえふざけている時でも真面目だ――むっ!」
遠くから剣呑な気を感じる。
それも生半可なものではない、流血をともなう破壊と暴力、死の気配を濃厚にただよわせる気配。
だが人ならざるものの放つ妖気や邪気、魔術や呪術の類ではない、これは――。
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