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武僧ジルギタ
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「闇より生まれし者は闇へと還れ・地の底へと戻れ異形のものども・万象を照らす光は万魔を駆逐する」
餓鬼たちに続いて青牛怪と饕餮たちも耐えきれずに祓われてしまい、鬼一法眼は騎乗の人から徒歩になる。
その鬼一とて無事ではない、とっさに張った結界がびりびりと振動し、この魔術のもつ威力のほどをうかがわせた。
「これは魔術言語ではないな、神聖言語による魔術か!」
説明しよう!
神へと語りかける神聖言語。それは言葉と言語の力で宇宙の根源に繋がり、この世に変化をおよぼし世界を変えるルーン魔術とは異なり『神』という高次元の存在に直接働きかけることで奇跡を起こし、その加護を得るための言葉なのだ。
「今のは、たしか……悪魔や精霊などの異界の存在をもといた世界へと強制的に駆逐する破魔の神聖魔術【万魔駆逐】だったな。低位の存在ならば送り返すどころか直接滅ぼすことも可能な魔術だ」
「いかにも、そのとおり。そして【万魔駆逐】は普通の人間には効果はない。これに反応するとは、おまえは人ではないな。いかなる妖魔の類か、答えろ外道!」
大喝一声。
声に込められた雄大な気に近くに置いてあった水甕が揺れて中身がこぼれ落ちる。
【万魔駆逐】を行使して鬼一の式神を一掃し、獅子吼の如き声を発したのは並外れた巨漢であった。
ニメートルを軽く超える身長に太い筋肉の束を肌の下に張り巡らした肉体は巌を削って彫り上げた鬼神像さながら。
殴ったほうの拳が砕け剣や槍であっても貫けぬ鋼鉄のような筋肉の鎧に覆われていた。
「そいつは企業秘密だ」
「ならばその秘密、我が法力で暴いてくれよう――」
巨漢が鬼一に向かって大股に歩を進める。と見えた瞬間、すでに鬼一の脳天目がけて縦拳が振り下ろされていた。
大きな身長、体格の持ち主とは思えぬ颶風の速さ。
そして強さ。
鉄兜もろとも頭骨を打ち砕く拳打はしかし無造作に伸びた鬼一の手によって軽く受け流された。
一瞬交差状態になった腕と腕。
次の瞬間、鬼一の肘が跳ね上がると同時に相手の上体が下がりあごを打ち上げられる。
常人ならばあごの骨を砕かれて口から血泡を吹き出して白目をむいて卒倒していたことだろう。
骨法の掌握と呼ばれる技法に近い技だった。
「……なんだこれは」
たが巨漢は軽くのけぞったのみにすぎない。恐るべき強靭《タフ》さだ。
「なんだ今の妖しい技は、我が極聖真拳の一撃が返されるだと?」
「キョクセイシンケン……、退魔の魔術に武闘家の技。あんた僧侶にして格闘家、武僧というやつだな」
「そうだ、善なる光明神に仕える武僧ジルギタ。それが私の名だ」
「俺の名前は鬼一、鬼一法眼と尊称をつけて呼んでもいい」
「ふんっ」
「さてジルギタ、あんた善き神に仕える身ということは敵味方関係なく傷病兵を手当したり戦死者を供養するために来たのかな?」
「否。盛者必衰は人の世の理、滅びゆく国々に与していたずらに戦乱を長引かせる鬼道の徒を折伏しに参った!」
拳打、掌打、手刀、背刀、貫手、裏拳――、ジルギタの繰り出す手技の数々を右に避け左にさばき、後ろに跳んで避ける。
(呪術者を相手するにあたって呪文の詠唱や集中をさせないよう問答無用の肉弾戦をしかける。まぁ、常套手段だな。俺もよくやる手だ。だが、いかんせん粗い)
科学にせよ医療にせよ何にせよ、人の世の技術というものは日進月歩だ。武術という技術体系もまたしかり。
かの大山倍達が健在の頃の極真空手の訓練動画を見ると正拳突きのさいに肩が左右に揺れている。これでは重心が安定せず強烈な一撃はくり出せない。
だが当時はそれが常識だった。『重心の安定』や『全身の運動エネルギーを一点に集める』という概念はあったかも知れないが、それを実践する動作がだれもが使える技術として確立していなかったのだ。
実戦を謳った空手でさえこれだ。
武術とはより効率よく人体を動かす科学技術であり知識である。
この世界の武術すべてがそうだとは断言できないが、ジルギタの技は鬼一の生きていた時代よりも洗練されておらず無駄が多い。
現代武術ではルール違反とされる急所への攻撃さえ注意すれば存外恐れるようなものではなかった。
鬼一の体術をもってすればジルギタの猛烈な攻撃は、さばききれないものではない。
「鬼道の徒と言ったな。だが鬼に横道はない。国々に攻め込みいたずらに戦火を広げて天の定めた王朝の命数を削るロッシーナ軍こそ無法を重ねる賊軍だ」
「なにを言う! 小国が乱立し絶えることのない戦乱の世に終止符を打ち天下を治めることこそ神意である」
「禅譲もされずに剣で天下に立とうとする者を簒奪者というのだ」
「魔物を使って狼藉をはたらく者がなにを言おうと詭弁にしか聞こえぬ。おとなしく折伏されるがいい! 我が手に光在れ・我が胸に光在れ・我が足に光在れ」
ジルギタの霊気が急速に高まる。あふれ出る霊気が物質化して粗末な服装が一変。白銀の兜、甲冑、手甲、脚絆といった戦装束に変わった。
「なんだそりゃおい!?」
説明しよう!
神聖魔術【神性聖衣】
己の信仰する神に祈願することで神より与えられた霊力魔力によって生じた防具を装着すると同時に筋力や反射神経などの身体能力を強化する神聖魔術。聖衣装着のプロセスは0.05秒であり常人では視認が困難な早さで行われることから肉弾戦が不得意な僧侶や神官でも緊急防御用に習得・使用することが多い。もとより鍛えられた肉体を持つ武僧がこれを使用すれば恐るべき驚異となる。
「きてはぁっ!」
膂力も敏捷力も大幅に上昇したジルギタの攻撃は激しさを増し、ガードしても威力を殺しきれず受けた拳脚に痛みが残る。
今のジルギタの攻撃はボクシングのジャブにストレートの威力が込められているにひとしい。
霊力の込められた強烈な掌打が鬼一の頭蓋を打ち砕いた。
餓鬼たちに続いて青牛怪と饕餮たちも耐えきれずに祓われてしまい、鬼一法眼は騎乗の人から徒歩になる。
その鬼一とて無事ではない、とっさに張った結界がびりびりと振動し、この魔術のもつ威力のほどをうかがわせた。
「これは魔術言語ではないな、神聖言語による魔術か!」
説明しよう!
神へと語りかける神聖言語。それは言葉と言語の力で宇宙の根源に繋がり、この世に変化をおよぼし世界を変えるルーン魔術とは異なり『神』という高次元の存在に直接働きかけることで奇跡を起こし、その加護を得るための言葉なのだ。
「今のは、たしか……悪魔や精霊などの異界の存在をもといた世界へと強制的に駆逐する破魔の神聖魔術【万魔駆逐】だったな。低位の存在ならば送り返すどころか直接滅ぼすことも可能な魔術だ」
「いかにも、そのとおり。そして【万魔駆逐】は普通の人間には効果はない。これに反応するとは、おまえは人ではないな。いかなる妖魔の類か、答えろ外道!」
大喝一声。
声に込められた雄大な気に近くに置いてあった水甕が揺れて中身がこぼれ落ちる。
【万魔駆逐】を行使して鬼一の式神を一掃し、獅子吼の如き声を発したのは並外れた巨漢であった。
ニメートルを軽く超える身長に太い筋肉の束を肌の下に張り巡らした肉体は巌を削って彫り上げた鬼神像さながら。
殴ったほうの拳が砕け剣や槍であっても貫けぬ鋼鉄のような筋肉の鎧に覆われていた。
「そいつは企業秘密だ」
「ならばその秘密、我が法力で暴いてくれよう――」
巨漢が鬼一に向かって大股に歩を進める。と見えた瞬間、すでに鬼一の脳天目がけて縦拳が振り下ろされていた。
大きな身長、体格の持ち主とは思えぬ颶風の速さ。
そして強さ。
鉄兜もろとも頭骨を打ち砕く拳打はしかし無造作に伸びた鬼一の手によって軽く受け流された。
一瞬交差状態になった腕と腕。
次の瞬間、鬼一の肘が跳ね上がると同時に相手の上体が下がりあごを打ち上げられる。
常人ならばあごの骨を砕かれて口から血泡を吹き出して白目をむいて卒倒していたことだろう。
骨法の掌握と呼ばれる技法に近い技だった。
「……なんだこれは」
たが巨漢は軽くのけぞったのみにすぎない。恐るべき強靭《タフ》さだ。
「なんだ今の妖しい技は、我が極聖真拳の一撃が返されるだと?」
「キョクセイシンケン……、退魔の魔術に武闘家の技。あんた僧侶にして格闘家、武僧というやつだな」
「そうだ、善なる光明神に仕える武僧ジルギタ。それが私の名だ」
「俺の名前は鬼一、鬼一法眼と尊称をつけて呼んでもいい」
「ふんっ」
「さてジルギタ、あんた善き神に仕える身ということは敵味方関係なく傷病兵を手当したり戦死者を供養するために来たのかな?」
「否。盛者必衰は人の世の理、滅びゆく国々に与していたずらに戦乱を長引かせる鬼道の徒を折伏しに参った!」
拳打、掌打、手刀、背刀、貫手、裏拳――、ジルギタの繰り出す手技の数々を右に避け左にさばき、後ろに跳んで避ける。
(呪術者を相手するにあたって呪文の詠唱や集中をさせないよう問答無用の肉弾戦をしかける。まぁ、常套手段だな。俺もよくやる手だ。だが、いかんせん粗い)
科学にせよ医療にせよ何にせよ、人の世の技術というものは日進月歩だ。武術という技術体系もまたしかり。
かの大山倍達が健在の頃の極真空手の訓練動画を見ると正拳突きのさいに肩が左右に揺れている。これでは重心が安定せず強烈な一撃はくり出せない。
だが当時はそれが常識だった。『重心の安定』や『全身の運動エネルギーを一点に集める』という概念はあったかも知れないが、それを実践する動作がだれもが使える技術として確立していなかったのだ。
実戦を謳った空手でさえこれだ。
武術とはより効率よく人体を動かす科学技術であり知識である。
この世界の武術すべてがそうだとは断言できないが、ジルギタの技は鬼一の生きていた時代よりも洗練されておらず無駄が多い。
現代武術ではルール違反とされる急所への攻撃さえ注意すれば存外恐れるようなものではなかった。
鬼一の体術をもってすればジルギタの猛烈な攻撃は、さばききれないものではない。
「鬼道の徒と言ったな。だが鬼に横道はない。国々に攻め込みいたずらに戦火を広げて天の定めた王朝の命数を削るロッシーナ軍こそ無法を重ねる賊軍だ」
「なにを言う! 小国が乱立し絶えることのない戦乱の世に終止符を打ち天下を治めることこそ神意である」
「禅譲もされずに剣で天下に立とうとする者を簒奪者というのだ」
「魔物を使って狼藉をはたらく者がなにを言おうと詭弁にしか聞こえぬ。おとなしく折伏されるがいい! 我が手に光在れ・我が胸に光在れ・我が足に光在れ」
ジルギタの霊気が急速に高まる。あふれ出る霊気が物質化して粗末な服装が一変。白銀の兜、甲冑、手甲、脚絆といった戦装束に変わった。
「なんだそりゃおい!?」
説明しよう!
神聖魔術【神性聖衣】
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「きてはぁっ!」
膂力も敏捷力も大幅に上昇したジルギタの攻撃は激しさを増し、ガードしても威力を殺しきれず受けた拳脚に痛みが残る。
今のジルギタの攻撃はボクシングのジャブにストレートの威力が込められているにひとしい。
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