魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行

文字の大きさ
17 / 123

武僧ジルギタ

しおりを挟む
「闇より生まれし者は闇へと還れ・地の底へと戻れ異形のものども・万象を照らす光は万魔を駆逐する」

 餓鬼たちに続いて青牛怪と饕餮たちも耐えきれずに祓われてしまい、鬼一法眼きいちほうげんは騎乗の人から徒歩になる。
 その鬼一とて無事ではない、とっさに張った結界がびりびりと振動し、この魔術のもつ威力のほどをうかがわせた。

「これは魔術言語ルーンではないな、神聖言語による魔術か!」



 説明しよう!
 神へと語りかける神聖言語。それは言葉と言語の力で宇宙の根源に繋がり、この世に変化をおよぼし世界を変えるルーン魔術とは異なり『神』という高次元の存在に直接働きかけることで奇跡を起こし、その加護を得るための言葉なのだ。



「今のは、たしか……悪魔や精霊などの異界の存在をもといた世界へと強制的に駆逐する破魔の神聖魔術【万魔駆逐アンホーリー・バニッシュ】だったな。低位の存在ならば送り返すどころか直接滅ぼすことも可能な魔術だ」
「いかにも、そのとおり。そして【万魔駆逐アンホーリー・バニッシュ】は普通の人間には効果はない。これに反応するとは、おまえは人ではないな。いかなる妖魔の類か、答えろ外道!」

 大喝一声。
 声に込められた雄大な気に近くに置いてあった水甕が揺れて中身がこぼれ落ちる。
万魔駆逐アンホーリー・バニッシュ】を行使して鬼一の式神を一掃し、獅子吼の如き声を発したのは並外れた巨漢であった。
 ニメートルを軽く超える身長に太い筋肉の束を肌の下に張り巡らした肉体は巌を削って彫り上げた鬼神像さながら。
 殴ったほうの拳が砕け剣や槍であっても貫けぬ鋼鉄のような筋肉の鎧に覆われていた。

「そいつは企業秘密だ」
「ならばその秘密、我が法力で暴いてくれよう――」

 巨漢が鬼一に向かって大股に歩を進める。と見えた瞬間、すでに鬼一の脳天目がけて縦拳が振り下ろされていた。
 大きな身長、体格の持ち主とは思えぬ颶風の速さ。
 そして強さ。
 鉄兜もろとも頭骨を打ち砕く拳打はしかし無造作に伸びた鬼一の手によって軽く受け流された。
 一瞬交差状態になった腕と腕。
 次の瞬間、鬼一の肘が跳ね上がると同時に相手の上体が下がりあごを打ち上げられる。
 常人ならばあごの骨を砕かれて口から血泡を吹き出して白目をむいて卒倒していたことだろう。
 骨法の掌握と呼ばれる技法に近い技だった。

「……なんだこれは」

 たが巨漢は軽くのけぞったのみにすぎない。恐るべき強靭《タフ》さだ。

「なんだ今の妖しい技は、我が極聖真拳の一撃が返されるだと?」
「キョクセイシンケン……、退魔の魔術に武闘家の技。あんた僧侶にして格闘家、武僧モンクというやつだな」
「そうだ、善なる光明神に仕える武僧ジルギタ。それが私の名だ」
「俺の名前は鬼一、鬼一法眼と尊称をつけて呼んでもいい」
「ふんっ」
「さてジルギタ、あんた善き神に仕える身ということは敵味方関係なく傷病兵を手当したり戦死者を供養するために来たのかな?」
「否。盛者必衰は人の世の理、滅びゆく国々に与していたずらに戦乱を長引かせる鬼道の徒を折伏しに参った!」

 拳打、掌打、手刀、背刀、貫手、裏拳――、ジルギタの繰り出す手技の数々を右に避け左にさばき、後ろに跳んで避ける。

(呪術者を相手するにあたって呪文の詠唱や集中をさせないよう問答無用の肉弾戦をしかける。まぁ、常套手段だな。俺もよくやる手だ。だが、いかんせん粗い)

 科学にせよ医療にせよ何にせよ、人の世の技術というものは日進月歩だ。武術という技術体系もまたしかり。
 かの大山倍達が健在の頃の極真空手の訓練動画を見ると正拳突きのさいに肩が左右に揺れている。これでは重心が安定せず強烈な一撃はくり出せない。
 だが当時はそれが常識だった。『重心の安定』や『全身の運動エネルギーを一点に集める』という概念はあったかも知れないが、それを実践する動作がだれもが使える技術として確立していなかったのだ。
 実戦を謳った空手でさえこれだ。
 武術とはより効率よく人体を動かす科学技術であり知識である。
 この世界の武術すべてがそうだとは断言できないが、ジルギタの技は鬼一の生きていた時代よりも洗練されておらず無駄が多い。
 現代武術ではルール違反とされる急所への攻撃さえ注意すれば存外恐れるようなものではなかった。
 鬼一の体術をもってすればジルギタの猛烈な攻撃は、さばききれないものではない。

「鬼道の徒と言ったな。だが鬼に横道はない。国々に攻め込みいたずらに戦火を広げて天の定めた王朝の命数を削るロッシーナ軍こそ無法を重ねる賊軍だ」
「なにを言う! 小国が乱立し絶えることのない戦乱の世に終止符を打ち天下を治めることこそ神意である」
「禅譲もされずに剣で天下に立とうとする者を簒奪者というのだ」
「魔物を使って狼藉をはたらく者がなにを言おうと詭弁にしか聞こえぬ。おとなしく折伏されるがいい! 我が手に光在れ・我が胸に光在れ・我が足に光在れ」

 ジルギタの霊気が急速に高まる。あふれ出る霊気が物質化して粗末な服装が一変。白銀の兜、甲冑、手甲、脚絆といった戦装束に変わった。

「なんだそりゃおい!?」



 説明しよう!
 神聖魔術【神性聖衣ディバイン・クロス
 己の信仰する神に祈願することで神より与えられた霊力魔力によって生じた防具を装着すると同時に筋力や反射神経などの身体能力を強化する神聖魔術。聖衣装着のプロセスは0.05秒であり常人では視認が困難な早さで行われることから肉弾戦が不得意な僧侶や神官でも緊急防御用に習得・使用することが多い。もとより鍛えられた肉体を持つ武僧モンクがこれを使用すれば恐るべき驚異となる。



「きてはぁっ!」

 膂力も敏捷力も大幅に上昇したジルギタの攻撃は激しさを増し、ガードしても威力を殺しきれず受けた拳脚に痛みが残る。
 今のジルギタの攻撃はボクシングのジャブにストレートの威力が込められているにひとしい。
 霊力の込められた強烈な掌打が鬼一の頭蓋を打ち砕いた。
しおりを挟む
感想 107

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

処理中です...