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魔戦の始まり
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鬼一法眼が決戦の意をマカロン王ら諸侯に伝え、その準備を整えるよりも前にそれは起きた。
最初にそれに気付いたのは海中から辺りを探る鬼一の使役する式神、続いて哨戒用の舟に乗ったワッシャー海賊団の斥候たちだった。
水平線を埋め尽くす船、船、船――。
船上に櫓の造られた大型船が海上を埋め尽くす様はあたかも海上に山々が隆起して出現したかのようだ。
「……! まるで楼船じゃないか」
説明しよう!
楼船とは船の縁に板を立て並べて矢や投石を防ぐように作られた大型の軍船で、多層の船体で構成された、まさに水上の楼閣だ。
長さは20メートル前後で艪の数は左右の舷を合わせて40。
その起源は中国の周の後代、戦国時代にまでさかのぼり、秦や漢の時代になると次第に大型化し、三国時代には外洋へ出るための大型海洋船にまでなった。
呉の孫権が東南アジアに使者を使わせたときの楼船は大きな七枚の帆を張り、五百人以上の人を乗せていたという。
「ヨーロッパに楼船なんてあったのか……? て、ここは俺のいた世界のヨーロッパじゃない。異世界のナーロッパだったな」
ロッシーナ軍の圧倒的な物量をあらためて実感したワッシャー島の人々は戦慄を禁じえなかった。
驚愕の冷めやまぬうちにロッシーナ軍の一斉攻撃がはじまる。
楼船に積まれた大砲や投石器から大小無数の砲弾や石礫が投射された。大は牛ほどの、小はこぶし大の石が雨あられと降りそそぐ。
百束の雷が同時に落ちたかのような轟音が響き、空をおおう石の群れに太陽は陰り、夕闇のような暗さが広がる。
しかし――。
「ロッシーナのやつら、距離も読めないのか。ちっともとどかないぞ!」
目測を見誤ったのか、ロッシーナ軍の投石はワッシャー島の港のはるか前方に落ちるばかりで、高い位置にある居住区にとどくどころか港に泊めてある船にすらかすりもしない。
物見に立つマカロン連合軍の兵士たちは嘲笑したが、それが二時間、四時間、六時間――。日が落ちた後にも変わらず降りそそぐ岩の暴風雨を前にしてさすがに困惑してきた。
「ロッシーナの奴ら、いったいなにを考えているんだ……」
「海を埋め尽くして陸でも作るつもりか?」
「そんなまさか!」
そのまさかであった。
やがて数多の岩々が大海原を埋め尽くし、人工の岩礁地帯ができあがる。
さらに――。
「「「――裂けよ大海・生まれよ大山・大地よ踊れ・巍峨たる峻嶺・海を割り・天を衝け――」」」
ロッシーナ軍の陣営奥深くから魔術師たちの詠唱がとどろきわたり、魔力の波が押しよせてくると、海面にせり出した岩が泡立つようにうごめき、変容する。
岩のひとつひとつが接着し、融け合い、隆起し、広大な大地と化した。
魔術――いや、まさに魔法と呼ぶにふさわしいほどの力で海を大地に変えてしまったのだ。
三方を海にかこまれた天然の要害であるワッシャー島であったが、周辺部にわずかな水場が川のように広がり、残るのみ。
さえぎる物がほとんどない低平な土地に無防備に晒された状態になってしまった。
「〝地〟系統の極大魔法による地形変化! 土が水を濁す、水を吸ったり堰き止めたりするはたらきや状態を土剋水。水がさらに弱められ、土剋水の状態が極まれば水虚土乗と化す。はからずも五行の理にも則している……」
おなじ儀式魔法でも局所的な破壊力では〝火〟系統のものが上回る。
しかしこのような〝地〟系統の魔法のほうが戦略的な意味がある。
天地自然を自在に操る異世界の魔法に鬼一法眼も驚嘆を隠せない、いささか相手の力を見くびっていたようだ。
総勢10万を超えるロッシーナ軍が陸を埋め尽くし、ワッシャー島へと進軍をし始めた――。
最初にそれに気付いたのは海中から辺りを探る鬼一の使役する式神、続いて哨戒用の舟に乗ったワッシャー海賊団の斥候たちだった。
水平線を埋め尽くす船、船、船――。
船上に櫓の造られた大型船が海上を埋め尽くす様はあたかも海上に山々が隆起して出現したかのようだ。
「……! まるで楼船じゃないか」
説明しよう!
楼船とは船の縁に板を立て並べて矢や投石を防ぐように作られた大型の軍船で、多層の船体で構成された、まさに水上の楼閣だ。
長さは20メートル前後で艪の数は左右の舷を合わせて40。
その起源は中国の周の後代、戦国時代にまでさかのぼり、秦や漢の時代になると次第に大型化し、三国時代には外洋へ出るための大型海洋船にまでなった。
呉の孫権が東南アジアに使者を使わせたときの楼船は大きな七枚の帆を張り、五百人以上の人を乗せていたという。
「ヨーロッパに楼船なんてあったのか……? て、ここは俺のいた世界のヨーロッパじゃない。異世界のナーロッパだったな」
ロッシーナ軍の圧倒的な物量をあらためて実感したワッシャー島の人々は戦慄を禁じえなかった。
驚愕の冷めやまぬうちにロッシーナ軍の一斉攻撃がはじまる。
楼船に積まれた大砲や投石器から大小無数の砲弾や石礫が投射された。大は牛ほどの、小はこぶし大の石が雨あられと降りそそぐ。
百束の雷が同時に落ちたかのような轟音が響き、空をおおう石の群れに太陽は陰り、夕闇のような暗さが広がる。
しかし――。
「ロッシーナのやつら、距離も読めないのか。ちっともとどかないぞ!」
目測を見誤ったのか、ロッシーナ軍の投石はワッシャー島の港のはるか前方に落ちるばかりで、高い位置にある居住区にとどくどころか港に泊めてある船にすらかすりもしない。
物見に立つマカロン連合軍の兵士たちは嘲笑したが、それが二時間、四時間、六時間――。日が落ちた後にも変わらず降りそそぐ岩の暴風雨を前にしてさすがに困惑してきた。
「ロッシーナの奴ら、いったいなにを考えているんだ……」
「海を埋め尽くして陸でも作るつもりか?」
「そんなまさか!」
そのまさかであった。
やがて数多の岩々が大海原を埋め尽くし、人工の岩礁地帯ができあがる。
さらに――。
「「「――裂けよ大海・生まれよ大山・大地よ踊れ・巍峨たる峻嶺・海を割り・天を衝け――」」」
ロッシーナ軍の陣営奥深くから魔術師たちの詠唱がとどろきわたり、魔力の波が押しよせてくると、海面にせり出した岩が泡立つようにうごめき、変容する。
岩のひとつひとつが接着し、融け合い、隆起し、広大な大地と化した。
魔術――いや、まさに魔法と呼ぶにふさわしいほどの力で海を大地に変えてしまったのだ。
三方を海にかこまれた天然の要害であるワッシャー島であったが、周辺部にわずかな水場が川のように広がり、残るのみ。
さえぎる物がほとんどない低平な土地に無防備に晒された状態になってしまった。
「〝地〟系統の極大魔法による地形変化! 土が水を濁す、水を吸ったり堰き止めたりするはたらきや状態を土剋水。水がさらに弱められ、土剋水の状態が極まれば水虚土乗と化す。はからずも五行の理にも則している……」
おなじ儀式魔法でも局所的な破壊力では〝火〟系統のものが上回る。
しかしこのような〝地〟系統の魔法のほうが戦略的な意味がある。
天地自然を自在に操る異世界の魔法に鬼一法眼も驚嘆を隠せない、いささか相手の力を見くびっていたようだ。
総勢10万を超えるロッシーナ軍が陸を埋め尽くし、ワッシャー島へと進軍をし始めた――。
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