魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行

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死闘 4 魔犬ガルム

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 アヤネル&ナミの戦いは魔犬の先制攻撃から幕を開けた。

「GAFOLAAAッ」

 赤き魔犬の口から炎の息が吹き出す。

「水ば、集まりんしゃい!」

 ナミの声に応じ、虚空から生じた大量の水が灼熱の息吹をせき止める。
 さらに牙と爪の攻撃を軽やかに避けつつ両手に持った短剣で攻撃し、わずかながら手傷を負わせている。
 驚くべき俊敏さだ。

「清流に住まう乙女・冷たきその身をもって・死の抱擁を与えよ!」

 先程の水霊術とは異なる、魔術言語ルーンによって唱えられたナミの声に応じて現れた水乙女ウンディーネが魔犬の体を縛る。
 成功だ。

「うおりゃあぁぁぁ!」

 反撃の心配はない。二本の短剣を風車のように振るい、守りを捨てた全力攻撃。
 何度も何度も刺し。
 渾身の力で切り裂く。

「GUGAGAAAッ!」

 効いている。
 確実にダメージを与えている。
 だが。

「GUGAGAAAッ!」

 炎の魔犬は水乙女ウンディーネの呪縛を力任せに引きちぎり、突進。

「うひゃあっ」

 吹き飛ばされるように後退し、相手と距離を取るナミ。
 とんっ。
 ふと背中になにかがあたり、そこから温かい気を感じる。
 鬼一法眼だ。
 鬼一の背中だ。
 ふう。
 怖じ気が消え、自然に安堵の息が漏れる。

「おい鬼一、おまえひょっとしてあっばいか?」
「少しだけな、あいつ変身しやがった」

 たしかに尋常ではない邪気が向こうからひしひしと伝わってくる。それにくらべればあの赤い魔犬などかわいいものだろう。

「この犬っころやっつけて助けてやるからそれまで死ぬなよな~」 
「その犬っころはガルムといってヘルハウンドの上位種だ。たおせばいい素材になるだろうな」
「マジか!? よっしゃ殺ったるぜ!」
 
 ほんのわずかな背中合わせの会話。
 たったそれだけのことでナミは体力も魔力も全快したような気分になった。
 この男と一緒に戦っている。負けるわけがない。
 この男の背中を守っている。負けるわけにはいかない。
 勝つ。
 絶対に、勝つ。

「ヌルヌル・ヌルヌル・ヌルヌル!」

【潤粘滑体】を発動させてナミが突っ込む。

「GUUUU……」

 魔犬ガルムの口が大きく開く。
 そこには熾火ように赤々と燃える炎が見えた。
 ごうっ。
 一直線に伸びる炎に対し、ナミは回避行動はせずにひたすら突進。

「清冽なる光気よ・悪しき熱気を退けよ・炎熱は害をおよぼすことなし!」

 アヤネルの【炎熱保護ヒートプロテクト】による防壁が展開。
 火はせき止められたが火傷するほどの熱気がナミの鼻孔に伝わってくる。
 熱い。
 髪の毛の焼けるような、いやな臭いがただよう。
 それでも、なんとか防ぎきった。

「どりゃあああぁぁぁっ! チェストォッ!」

 渾身の一撃がガルムの両目をえぐり、貫き、脳を破壊した。

【潤粘滑体】と【炎熱保護ヒートプロテクト】による二重の防御がなければ命を落としていたのはナミのほうであっただろう。
 アヤネルもナミも日々の訓練、研鑚を絶やしたことはなかった。
 鍛錬を怠らない者同士だからこそいざという時に息を合わすことができた。
 日々の欠かさぬ努力があってからこそ強くなり、勝つことができるのだ。
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