彼氏の優先順位[本編完結]

セイ

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3.恋人の距離

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「…っん……ちゅっ……はっ…ん…」

今日は青衣くんの家で久々の二人きりのお家デート。
見たかった映画を借りて見てるところ。

ベッドを背に青衣くんの足の間に座って後ろから抱きしめられるのがいつもの体勢。
いつも恥ずかしくて心臓バクバクなんだけど恋人らしいスキンシップが久々すぎて今凄く幸せ。

慣れないキスにポワポワしていると青衣くんの手がシャツの中に入ってきて、ビクリとしてしまった。

「…青空……」

初めて見る青衣くんの熱っぽい視線に自分の顔が熱くなるのを感じた。求めてくれるうちはまだ恋人でいられる…。

「…あ…」

僕は青衣くんと別れるかもしれないと思っているのか…。
せっかくの恋人とのデートなのにそんな事考えてる自分に嫌気が差す。

そんな事を考えてた罰なのか…青衣くんのスマホが鳴った。

♪♪♪~

「…っごめん!音消すの忘れてた!」
「僕別に気にしないよ?大事な連絡じゃなかった?大丈夫?」
慣れないキスの余韻に浸りながら声をかける。
「いや、大事な青空との時間を邪魔されたくないからいつもは音消してるんだけど…。あ…茜だ。青空いるならご飯食べにおいでってさ。どう?茜んち夕飯食べに行かない?」

いつものご飯のお誘いか…。青衣くんは行く気満々だなぁ。茜くんも僕たちが一緒に居るのわかってるなら少し遠慮してくれないのかな…?

というか僕たちが付き合ってるの知ってるのかな?
青衣くんが話してるものとばかり思ってたけど……。
もしかして話してない?

ああ…こんな風に思いたくないのに…。
僕どんどん嫌な奴になってる気がする。

「青空行かない?」
「…あっ…えっと…僕は帰るよ…」
「えっ…何で?食べて行けばいいじゃんか。」

僕は…2人で過ごしたかったのに…。青衣くんもそう思ってたんじゃないの?そう思ってたのはやっぱり僕だけ?
せっかくの久々のデートなのに。僕と二人で居るの嫌なの?
二人の仲いい様子見ながら食事なんてモヤモヤしっぱなしで美味しくなんて食べられないよ…。

「僕はいいから青衣くんはいつも通りにすればいいんじゃない?」
「何でそんな素っ気ない言い方すんの?嫌なの?俺達と食べるのが嫌?」
「そんな言い方したつもりないけど…。僕はもう帰るよ。僕は二人だけの時間もう少し欲しかっただけなんだけどな…」

青衣くんの顔を見ると涙が出そうになるから後ろを向いて顔を俯かせてボソリと本音を漏らしてしまった。

「えっ…あ…青空…待って…」

青衣くんの言葉を待たずに部屋を出た。

ただ恋人との時間が欲しかっただけなんだけどな…。いつも一緒にいるんだからたまには僕との時間優先してくれてもいいんじゃない?僕結構我慢してるつもりだけど…。

これって我儘なのかな?

そしてそのままいつものファミレスに駆け込む。
今まで我慢してた分涙が止まらない。

「おい。泣くならこっちの席にしろ」

そう言って店の奥の目立たない席に連れてきてくれたのはやっぱり倉橋くんだ。その優しさが更に涙を誘う。冷えたお絞りを置いて席を離れた倉橋くんに心の中でありがとうと声をかけた。

「君そんなに泣いてどうしたの?」

優しく声をかけてきたのはメガネをかけた綺麗なお兄さんだった。その後ろからはドリンクを持ってきた倉橋くん。

「あ~…これ俺の恋人。すまん。お前が気になったみたいでな……」
「光輝の恋人の浅井優です。ごめんね急に声かけて」

そう言って僕の横に座る浅井さん。そして倉橋くんは僕たちの前に座る。

「あ…いえ…」
「また何かあったんだろ?誰かに相談するのに丁度いいかと思って連れてきた。お前色々溜め過ぎなんだよ。」

その優しさにまた涙が止まらない。

「…っ……ふぇぇぇ~っ…」
「!!おい!!何でまた泣く!?俺が泣かしたみたいになってんじゃねぇか!!」
「っ!!ごめっ……」
「光輝は不良みたいで怖いし、言葉がぶっきらぼうでキツイからねぇ……」
「仕方ねぇだろ。今更この性格なんぞ変えられるわけねぇだろうが」
「倉橋くんは優しい人だよ……。こんなウジウジしてる僕の事気にかけてくれるし……」
「ふふっ…そう僕の恋人は優しくてかっこいいでしょ?」

なんてドヤ顔で自慢する浅井さんが可愛かった。
倉橋くんもそんな浅井さんが可愛いのかいつもと違って凄い優しい顔して微笑んでる。

こういうのがホントの恋人なんだろうなぁって羨ましく思った。

「ねぇ、僕に相談してみない?相談じゃなくても辛い事吐き出すだけでもいいよ?それだけで心がスッキリする事だってあるしね?」

言ってしまっていいのだろうか…こんなの僕の我儘なんじゃないかと思ってた事も全て吐き出していいのだろうか?

「実は…恋人にいつも一緒にいる幼馴染さんがいるんですけど…その人はただの幼馴染で恋人は僕だってわかっているんですけど、二人の仲の良さにモヤモヤしちゃって…三人で居るのが嫌…というわけではないんですけどなんか居づらいというか…。」

「ふんふん…」
「今日だって久々のデートだったのに幼馴染からの食事の誘いの連絡で彼の家に行こうって言われたのがとっても悲しくなっちゃってさっさと帰ってきてしまいました…。二人でいたいって思うのは我儘なんでしょうか?」
「恋人に正直に言わないのはなぜ?」
「恋人と幼馴染は小さい頃から兄弟みたいに育ってきてるんです。今も恋人のご両親が海外出張で居ないから幼馴染の家で食事するくらいお互いの家に行き来してて、二人にとってはそれが普通なので…お家の都合もあるし、それに文句を言うのは違うのかなって…」
「でもその都合に二人の時間を作らないのは違うでしょう?付き合ってるなら多少我儘に言ってもいいのでは?君優しすぎるんじゃない?」
「そうでしょうか…?」
「恋愛ってどっちかが我慢してたら破綻しちゃうよ?たまには思った事ストレートに言わなきゃ…言葉にしなくちゃお互い思ってる事は何もわからないんだよ?」
「でも言って嫌われるのは嫌です……うぅ~っ……」
「お前だけが我慢したままでいいんかよ…?」
「……っ…」

僕は言葉に詰まってしまった。どうしたらいいかわからなくて涙が止まらなくなってしまった。

そんな僕の背中を優しくさすってくれる浅井さんとそんな僕を見て呆れているだろう倉橋くんから冷えたお絞りを受け取って更に泣きまくっていた時に青衣くんから膨大な着信があったことに全く気づかずにいた。

そしてそれを店の外から見られていたことにも。









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