異世界無宿

ゆきねる

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第二十五章 オブリビアダンジョン

第四百七十五話 狙われる者

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夕暮れ時、通り抜ける風が森林を揺らす。
その揺らめきは何処か不気味さがあり、イズミは小さくため息をつくとメガネをかけてショットガンを取り出した。

魔物の解体と調査を手伝っていたベリアが戻って来ると、白湯を飲んで一息つくと森林へと視線を向ける。

「流れが変わったな…イズミ」

「どうした?」

「魔物の臭いが強くなってる。備えておいた方が良い」

ベリアはそう言うと急ぎ足で装備の点検を行い、何時でもナイフを抜けるように紐を解く。

「魔物は夜行性か?」

「どうだろう…汚れた魔石の影響を受けているなら、例外かもしれない」

「生態は不明か」

イズミはマスタングに乗り込むと、気になる方向の森林へ向けてヘッドライトを照射出来る様にして、日が沈みゆく空を眺めた。

「マスター、魔物の反応があります」

車内のモニターで確認をすると、魔物の反応は自分達の正面方向に複数体居るようだ。
冒険者や光の教会のテントを狙う魔物は、今の段階では居ないのも気になる。

マスタングから降りたイズミは、近くにある焚き火の側に座るとショットガンと探索用ライトを並べ、何時でも動けるように準備だけ済ませた。

薄く切った黒パンにベーコンと葉野菜を挟み、無言で口へ運びしっかりと咀嚼する。
食べ終えるとスープで口直しをしてから、暗くなった夜のダンジョンに適応すべく集中する為、焚き火から僅かに離れ夜目に慣れさせていると遠くから魔物のだろう咆哮が轟く。

「イズミ」

「威圧感のある咆哮、もしかしたら大型の魔物のかもな」

「縄張り争いでもしてるみたいだ」

イズミがショットガンにライトを括り付けようか悩んでいると、ベリアの視線が先の見えない森の奥へと向けられる。

「来るか…」

「ベリア、冒険者や光の教会に警戒を強化するように伝えてくれ」

「イズミは?」

「俺は大丈夫だ。ベリアが戻って来る迄くらいなら、何とか出来るさ」

「分かった、無茶するなよ」

ベリアが冒険者のテントへと移動をしたのを見ていたかのように、森から昼前に倒した恐竜の様な魔物が姿を見せた。
今度は連携でも取っているのか、3体がジリジリと接近をして来たのだ。

「シューティングマッチは苦手なのだが」

イズミを囲うような陣形で魔物が動き出すと、ショットガンのセイフティを解除して射撃姿勢を取る。
どの魔物が最初に仕掛けて来るかが分からない以上、行動が後手に回ると厳しいものがあるので先に仕掛ける事に決めた。

サイトを覗かずに左側の魔物に向けて1発撃ち、次は右側の魔物へ1発撃った所でマスタングがヘッドライトを照射し、攻撃姿勢に入っていた中央の魔物の視界を奪い動きを鈍らせてくれた。
その間に中央の魔物の頭部を狙って3発撃つと、魔物は地面へ倒れ込んだ。

左側の魔物が飛び掛かって来る直前に再度1発を撃ち込み、体勢を崩しながらも距離を取ると左手をショルダーバッグへ突っ込み、ソードオフショットガンを取り出して2発お見舞いした。

残る魔物は逃げる素振りも見せず凶悪な牙で噛み付こうとして来たので、ソードオフショットガンを投げつけてから右手で保持していたショットガンを撃った。

魔物は倒れはしたがまだ暴れているので、もう1発撃とうと引き金に指をかけたが弾切れだった為、左手でショットガンを保持したまま44マグナムを抜いて3発撃ち、動きが大人しくなったのを見計らってショットガンに弾を込めてトドメを刺した。

「…装弾数の読み違えは痛いな」

「マスターはフルオートショットガンを多用してましたので、良い経験になるかと」

「コイツに噛まれたらひとたまりもないぞ」

イズミは魔物へ投げつけたソードオフショットガンを回収して弾込めをすると、ショルダーバッグに戻してから倒した魔物の獰猛な牙をライトで照らす。

「正に肉食獣の牙だ、人間の腕くらいなら1発で噛み千切るだろうよ」

そう呟くと映画で登場人物が恐竜に食われるシーンが脳裏に浮かび、思わず身を震わせてしまった。

10秒程度の戦闘だったがイズミは少し息が上がっていたので、マスタングの隣へと移動してから深呼吸をして身体を落ち着ける。

「このショットガンを活用するなら、シェルホルダーが必要だな」

しゃがんでショットガンを肩にかけたイズミはマグナムの弾込めを済ませると、飾りっ気の無いショットガンを見つめる。

「ベルトに装着するか、ベストに装着するかになりますが」

「ベストはライフル用があるから、ベルトに付けるスタイルが良い」

「マグナム用のローダーとの兼ね合いはどうでしょうか」

「ショルダーホルスターの時は微妙か…」

現状の装備位置では、全部が身体の左側に寄っているのだ。
ショルダーホルスター、スピードローダー、ショルダーバッグも左側にある。

「要検討だな」

メガネに魔物の位置情報を出してもらうと、森の奥にはまだ魔物が待ち構えているのが分かった。

「イズミ、話はして来たぞ」

「ありがとう」

「でもな、向こう側からは魔物の気配も臭いも感じなかった」

「俺達の居る方からがメインか…手薄に見えるのかね?」

「もしかしてだけど、ケルベロスに付けられた跡のせいかも」

ベリアの言葉を聞いたイズミは、特に何の違和感も無い右腕へ視線を移す。

「魔物に狙われやすくなるとか言ってたな」

「魔物達の獲物として、優先度は高くなってるかも」

「痺れるねぇ」

イズミはため息をついてから立ち上がると、ベリアと共に魔物の接近に備えた。
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