異世界無宿

ゆきねる

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第二十五章 オブリビアダンジョン

第四百八十話 さらばナビゲーター

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イズミは汚れた魔石から距離を取りグレネードランチャーを撃って見たが、半壊止まりで一分も掛からずに修復されてしまった。

「グレネードでも駄目か」

一度マスタングの元まで戻ろうかと振り返ると、ベリア達の姿が見えない。

「ベリア?」

「イズミ、そっちは大丈夫か」

「大丈夫だ。魔物は出て来てない」

「コッチにはワラワラとグール化した魔物出て来たぞ、対応は出来てるからイズミはその魔石の破壊に集中してくれ!」

どうもイズミが魔石へ向けてマグナムを撃った辺りから、ベリア達の近くでグール化した魔物が出現し始めたらしい。

「マスタング、ベリア達の援護を頼む」

「かしこまりました」

イズミは改めて巨大な魔石へと対峙する。
グレネードランチャーを仕舞い、腕を組んで考え込む。
何か突破口を見出す必要があるのだ、それもベリア達がジリ貧になる前に。

「さて…アクション映画のヒーローだったら、どう解決するかね?」

こんな状況であっても、知識の引き出しから出て来るのはアクション映画である。

劇中で何かを破壊する時、対象が建物であれば内部に爆弾を仕掛ける。
岩石ならどうだっただろうか。
確か岩石に穴を開けて爆薬を詰め込み、内部から爆破させる事で爆発四散させていた筈だ。
地球に隕石が落ちてくるのを防ぐ為に、宇宙へと挑んだ男達の映画を思い出す。

「内部からの爆破が正解な気がするが、手持ちに爆発物は…」

ふとイズミの視線が腕時計に向かう。
マスタングが実体化してくれた金属ケースのナビゲーター、そして秘密の機能の存在を思い出したのだ。
回転ベゼルは1分のインデックスから数字の9まで点灯しており、呪い返しで吸収した分が分かるようになっている。

そっと左腕から外して回転ベゼルを操作し、ポインター部分を4時と5時の間へ持って行き竜頭のネジ込みを解除して1段階引っ張る。
すると黒かった表示が動きデイト表示で30と出て来た。
先程のマグナムやグレネードランチャーでの攻撃後の修復スピードを鑑みて、竜頭を回して表示20に設定してそのままポケットに突っ込むとショルダーバッグからフルオートショットガンを取り出した。

32発入りのドラムマガジンを挿し込んだショットガンであれば、ある程度の破壊をした後で腕時計を魔石の中核へと放り込める筈だ。

「異物として吐き出されなければ良いが…」

嫌な予感も若干はあるが、何もせずにショットガンを撃ち込み続けるよりはマシだと思う事にした。

僅かに痺れが残る右手で構えると、ショットガンの重量で腕が震えだしそうであるが、ここは気合いで耐えきるしか無い。
意を決したイズミはショットガンの引き金に指をかけた。

連続で吐き出される12ゲージの散弾が巨大な魔石を粉砕し、中枢であろうドス黒い魔石部分が露出し始める。
弾切れになったショットガンを地面に置くと、ポケットから腕時計を取り出し竜頭を引き抜く。

デイト表示のカウントダウンタイマーが作動を始めたので、自動修復が始まった魔石に向かって腕時計を投げ込み、ショットガンを回収しながら魔石との距離をとった。

魔石の自動修復が完了する直前に、腕時計の機能が正常に作動した。
内部で爆発が起きたので派手に魔石の破片が飛び散ると同時に、爆風によって土煙が起きて周囲が見えなくなる。

耳が遠くなっているのを感じつつ爆発地点が見えるようになる迄待つと、地面から姿を見せていた巨大な魔石は跡形も無く消えていた。

「…成功か?」

イズミはショットガンのマガジンを交換してからショルダーバッグに収納すると、念の為に周囲の確認を始める。
確認をせずに解決したと決め込み、後々面倒な事になる話しは枚挙にいとまがないのだ。

「ほう。破壊しきったか」

脳内に直接話しかけられるような感覚に驚きつつも、イズミはケルベロスの骨がある方向へ身体を向ける。
其処には帝国兵の拠点を燃やし尽くした時に遭遇した、あの漆黒の狼が佇んでいた。

「お主がこの結界に入れたのは、アヤツにとっても嬉しい誤算だったろう」

「トレイズなる男の事ですか?」

「左様。奴が死の直前に展開したこの結界にも、限界が来ておったからな」

イズミは狼の近くにある女性だろう白骨死体へと近付くと、左腕に巻き付けた腕時計を確認する。
インデックスは全て紫色に点灯し、王冠は短いスパンで点滅を繰り返している。

「呪い返しとは考えたな」

「私は魔法が使えないので、道具で対応するしか無いのですよ。使えるとは思ってませんでしたが、今回は幸運でした」

「難儀な男だな。さて、我はこの者達を喰らいたいのだが」

「少し待ってはくれませんか?」

ショルダーバッグから飲み物と酒を取り出すと、ケルベロスと女性の白骨死体の側に並べる。

「私なりに弔いをしたいのです」

「…よかろう」

狼は目を細め口から炎を溢しつつ、イズミが弔いを終えるのをジッと待っていてくれた。
弔いを終えて立ち上がると、狼は影を伸ばすとケルベロスの骨を喰らい始めた。

「その女の死体はな、帝国の手によってこのダンジョンのボスとのキメラにされたのだ」

「帝国が侵攻して来た時に?」

「そうだ。このダンジョンが変異を起こした原因でもある」

狼は布が被せられた死体へ顔を向けると、全身からオレンジ色の炎を迸らせながら話を続けた。
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