異世界無宿

ゆきねる

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第二十五章 オブリビアダンジョン

第四百八十五話 キメラの最期

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キメラの放った灼熱のレーザー光線がイズミ達に直撃する瞬間、ベリアと死体の左手にある腕時計の魔法返しが発動した。

魔法返しは自分達とマスタングの居る場所までが吸収対応範囲に収まっているのか、レーザー光線がマスタングの防御魔法とベリアの魔法壁に触れずに腕時計へと吸収されてゆく。

空間が歪むようにしてレーザー光線を吸収し終えた腕時計が、溜め込んだ魔力量をインデックスの点滅で知らせている。
それでも吸収しきれなかった攻撃分は、ベリアの魔法壁を破壊しマスタングの防御魔法の所で止まった。

「…危なかった」

攻撃を防ぎきった事に安堵したのか、ベリアが腕時計を見ながら呟く。

「次の攻撃を仕掛けられる前に動くぞ」

イズミが死体の左腕を戻そうと顔を向けると、ある違和感に気付いた。
白骨死体だったはずだが、薄っすらと肉体があるように見えるのだ。
顔の細かな所は分からず、肉体の輪郭のみと言うような、とても朧げでぼんやりとしたものであったが。

「どうもありがとう…後でお礼をしないとな」

そう言うとイズミは左腕を胸元へと戻し、立ち上がってマスタングに状況確認を行う。

「マスタング、被害状況は?」

「損傷軽微、行動に問題はありません」

「一気に畳み掛けよう。ミサイルを撃ち込んでから、ベリアの魔法返しをお見舞いするんだ」

「かしこまりました」

イズミはマスタングに上半身を入れてミサイル発射準備を済ませると、ベリアに魔法通信を繋いだ。

「ベリア!マスタングで攻撃を仕掛けるから、その後で魔法返しを発動してくれ」

「分かった!」

マスタングのモニターに発射ボタンが表示させる。
前方からの2発と後方からの6発、合計8発のミサイル攻撃だ。
イズミは躊躇うこと無く発射ボタンを押した。

発射されたミサイルは一度弧を描いて上昇すると、キメラ目掛けて飛んでゆき爆発する。
キメラもミサイルに対して迎撃でもしようとしたみたいだが、高速で飛んでいるミサイルを防ぐ事は出来なかった。

ミサイルは全弾命中した。
キメラの頭部2つを完全に破壊し、胴体や手足は千切れ飛び、キメラのコアであろう魔石が丸見えである。

「アレを壊せれば…」

ベリアは自身に身体強化を掛けると、イズミの目では追えない速度でキメラへ接近する。
キメラも悲鳴を上げながらベリアの接近を阻止しようと、エイリアンもどきを出して来たが最早ベリアの敵では無かった。

「お返しするぜ!」

ナイフに込めた風魔法と火魔法でエイリアンもどき達を瞬殺すると、キメラの胴体から覗かせるコアに向けて左手の人差し指を伸ばし、魔法返しを発動した。

指先から火球が出現しレーザー光線が飛び出すと、キメラのコアに命中し無数の悲鳴と共に爆発が起きた。

「…派手にやったな」

「アタイが思った以上の威力だ」

30mはあろうかと言う火柱を上げてキメラはその身を焼かれてゆくが、これで死滅するとは思えない。

炎が収まってくると、キメラはまた別の姿へと変わっていた。
人型だったのが、今度は3つ頭のムカデだ。

「ヴェェ!?キモ!!」

ベリアは本能的な拒否反応なのか、全身の毛を逆立ててマスタングを盾にするように身体を隠す。

「ケルベロス、人型、最期はムカデか?」

ムカデの足が全て人間の脚部で構成され、長い胴体部分には憎悪に歪んだ人間の顔が所狭しと並び、イズミ達へその目を動かしている。

このキメラの特徴でもある3つ頭の1つは、顔面がブヨブヨとした何かになっており、目は潰れだらしなく開いた口から黒い煙を吐き出していた。

まだ動き出す気配は無いので、攻撃の手を緩めずに仕掛け続ける。

4連装ロケットランチャーを再準備すると、キメラの頭部を目掛けて撃ち込む。
1発目は命中したが、残る3発はムカデが胴体を弾除けにして頭部への攻撃は防がれてしまった。

「流石に防がれたか…ベリア、ちょうどデカい的があるから、俺が渡したバックアップで撃ってみろよ」

「それは構わないけど…うわぁキモ」

見たくも無いと言わんばかりの嫌悪感丸出しの表情をしたベリアは、アイテムボックスからデカいマグナムを取り出した。

「ええと、ハンマーだったか?これを動かして。魔力を込めたら、しっかり狙って引き金に指をかける」

ナイフを鞘に収めたベリアがマグナムを1発撃ち込んだ。
マグナムの銃口から想像も出来ないマズルフラッシュがあり、その弾丸は命中したキメラの胴体を粉砕し中央の頭へと吸い込まれてゆく。

「だぁ!なんて反動だよ…痛えぞ!!」

ベリアは右手を押さえながらマスタングの後ろで身悶えしている。
反動で2発目を撃つようなミスはしていないので、それだけでも初心者としては上出来ではあるのだが。

「ベリア様、少し移動します」

「ん?マスタングさんや、何かあったか?」

身悶えしているベリアの隣に停まっていたマスタングが、ゆっくりと前方へ移動する。

「どうぞ」

マスタングがそう言うとイズミの近くをレーザー光線が通過し、キメラを再度燃やし尽くしてゆく。
いきなりの事に振り向いたイズミだったが、ベリアの顔を見ると自分じゃないと言っているようだった。

「イズミ、言っておくが今のはアタイじゃないからな」

ベリアの所まで移動して来たイズミに告げると、イズミはロケットランチャーを片付けながらマスタングに確認する。

「マスタング、さっきの攻撃は誰のだ?」

「不明です」

「不明?」

「誰かは不明です、情報がありません」

マスタングの回答に引っかかりはあるが、この場にはいる筈だ。
そっと狼の方へ顔を向けると、狼は大笑いを始めた。

「これは愉快だ!面白い土産話が出来たな」

狼は前足を死体の左腕へポンと乗せる。
よく見ると付けていた筈の腕時計が無くなっている。

「死して尚、あのキメラを許せなかったのだろうな…傑作とまではいかぬが、佳作ではある」

狼は死体の上から動き出すとスタスタとイズミ達の前を通り過ぎ、燃えているキメラの前で座った。

キメラはまた姿を変えつつあり、3つの頭部を胴体代わりにして何本もの腕を生やし、イズミ達へその手を伸ばし始める。

「なんじゃ、もう足りぬのか?」

狼の足元が影が蠢き出し、イズミ達を捕まえようとしたキメラの手を押さえ込む。

「なら、終いだ」

狼はキメラへそう告げると、蠢いていた影がキメラを喰らい尽くしてしまった。
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