異世界無宿

ゆきねる

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第二十六章 梅雨の季節

第五百七話 話したい事とは

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「お話したい内容は3点です」

グラテミアの部屋、執務室に入ったイズミは席に着くと早速話を切り出される。
部屋にはフラウリアにアヤにエレノアと何時ものメンバーと、自分とベリアだけの構成だった。
ラミア族には女性しか居ないとは言え、男が自分1人ってのは些かの不安がある。

「1つは…先程ガーネディアン公爵家より早馬が来まして、重要書類を受け取りました。内容はオブリビアの件と、イズミ様達が入手したアイテムに関してです」

「オブリビアがどうしました?」

「ダンジョンの正常化が確認され、ダンジョン都市として再開発計画が始動する事になったそうよ」

「元々あったダンジョンが消えた原因は?」

「これは光の教会からの考察らしいですが、帝国の計画を阻止する為に、当時オブリビアで司教をしていた男がダンジョンの扉を塞ぎ、見えないように隠していたと考えているそうよ。消えたのでは無く、巧妙に隠していたと言うの」

少し納得がいかない点はあるが、トレイズの実力ならば出来たのかもしれない。
つくづく、生前に一度会ってみたかった男だったと思う。

「2つ目は、ブレスレットと霊剣の事よ」

霊剣と聞いたフラウリアは目を輝かせながらイズミを見つめる。
一度周囲を確認したイズミは、グラテミアに遮音と盗聴防止の魔法を展開してもらってから、広いテーブルに綺麗な布を敷いてブレスレットと霊剣を並べた。

「…なんて魔力なの」

フラウリアの視線が霊剣に釘付けである。
イズミには分からないが、相当量の魔力でも籠もっているのだろうか。

「先ずブレスレットですが、ダンジョンボス討伐時のドロップアイテムなのですよね?」

「詳しく話すと微妙に違うかもしれませんが、順を追って説明します」

イズミはダンジョンに突入してからアイテムを入手する迄の流れを、とてもザックリと設定してゆく。

「ケルベロスが第2階層に出現して、自分達を転移魔法で最終階層へと強制転移させたんです。最終階層には結界魔法が張られて、私が何故か通過出来たので内部へ侵入し汚れた魔石の集合体を破壊、そしたらケルベロスの姿形を模したキメラが現れたので返り討ちにしました。その後撤収途中で恐らくダンジョンを隠していた光の教会の司教の霊体と遭遇し、アイテムの入った木箱を受け取ったのです」

「木箱の中身はブレスレットだけでは無かったでしょう?」

「はい。帝国の魔術師が所有していた書物と魔道具、そして既に光の教会の者に渡してしまいましたが、金色の刺繍がされている白装束が入っていました」

「公爵からの手紙にはブレスレットだけでしたが」

「帝国絡みなので、書物と魔道具の存在は隠しておきました。ヒュミトールに戻る前にアーリアに簡単な鑑定を依頼してまして、良くない代物なので書物は出さない方が良いと。魔道具は人工的に魔石を生成する物らしいので、私が金に困った時にでも売りに出そうと思ってはいました」

正直に話して書物と魔道具をテーブルに置くと、真面目な表情に戻ったフラウリアが書物を確認する。

「…禁術に関する研究資料をまとめたものです。魔術師協会では個人の所有は禁止されており、協会の指定する方法で封印処理を施すか焼却処分するかの2択になります」

「内容は?」

「生命を使った魔石や魔道具の生成、生命の複数合成で不老不死は達成出来るのか、人工的に魔剣を作り出す手順…他にも色々と」

内容を確認したグラテミアは、イズミに書物の管理を委ねて欲しいと告げた。

「危険な書物なので手元から離れるのは有り難いですが」

「恐らく帝国が絡んでおりますので、光の教会と各国の魔術師協会の重鎮達を交えて会議を開かせます。その後は恐らく封印処理を施して厳重保管になるでしょう」

「焼却処分にはしないのですね」

「禁術とて魔法、後世の者達に何故禁術として封印されるに至ったのかを知ってもらうのには、良い教材ですから」

「分かりました、では宜しくお願いします」

書物をグラテミアに預けると、魔道具の方はフラウリアが空石と魔力を吸って育った薬草を取り出し、動作確認として魔道具を起動する。

「壊れてはいないようですね…この魔道具は空石に使用者の魔力を効率的に流し込んだり、今みたいに魔力を吸った薬草等から空石へ流し込む事が出来ます。詳しく調べないと魔道具の全機能を確認は出来ませんが、帝国が活用していた事を考えると…何かしらのリミッターは解除あるいは破壊されているかもしれません」

一度本格的に調べたいとの事だったので、これはフラウリアに一時預かりと調査を頼んだ。
今後売る事になった際に不慮の事故が起きたとなれば、此方としても夢見が悪くなってしまう。
美容クリームの件もあるので、くれぐれも過労で倒れないでほしい。

「話が逸れてしまいましたね。ブレスレットと霊剣はどうなさるおつもりで?」

「ブレスレットは暫く保留ですね。霊剣は私が仮の管理者になってますので、生きているうちに霊剣の主に相応しい者を探して、譲渡しようかと。使えもしない人間が宮殿に飾ったりとか、宝物庫で厳重に管理とかされるよりはマシでしょう…グラテミアさんは、霊剣の主になれそうな方をご存知ですか?」

「魔族でも扱えるかどうか、何とも言えないわね…ハイエルフ族を探すのが良いかと」

「ハイエルフ族ですか。何処に住んでいるのかが分かれば、旅の目的地にするのですが」

「難しいわね。ハイエルフ族は他種族との関わるのを嫌っていて、ここ300年程は姿を見せていないのよ」

部屋に沈黙に包まれると、フラウリアが遠慮がちに右手を上げた。
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