異世界無宿

ゆきねる

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第二十六章 梅雨の季節

第五百十一話 酒の調達

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イズミは酒屋へ入店すると、店員を呼んで女性向けと男性向けのでドワーフ酒を大量にピックアップしてもらう。
それも特級品も1級品も問わずである。
その中で瓶の形が気に入ったとか、香りが良いとか何故か気になるとか、店員から味とオススメの飲み方を聞いた上で厳選してゆく。

最終的な選定基準は、自身の直感に従うだけと言う、全く根拠の無いシンプルなものだが。

「お客様、これ程に買い込むのはどういった御用向けなのでしょうか?」

「会食用です。来賓者にはお好みな酒を飲んで頂きたいと考えてまして、種類とそれなりの本数は持っておきたいのです」

「それは、御貴族様向けとか?」

「…貴族や王族相手の方が、私にとってはまだ気が楽かもしれません」

いきなり大量に酒を購入するとなると、流石に酒屋としても気になるようだ。
転売されると様々な人に影響が出るわけだし、当然と言えば当然ではある。

イズミは会食相手を具体的に告げるのは気が引けたのでやんわりと答えると、店員から酒ごとの特徴を書いてもらった羊皮紙を受け取った。

「他にお探しの商品はありますか?」

「果物を使った飲み物、ジュースがあれば」

「では此方へ」

別の棚へと案内されると、割と豊富な品揃えのジュースが並べられている棚へと案内される。

「此方のジュースは日持ちしませんので、お早めに飲んで頂くか保存能力のあるアイテムボックスに収納して頂く事を推奨しております」

この世界ではまだ鮮度を保つ事や殺菌消毒技術の進歩は、元いた世界と比較すると遅めのようである。

ジュースは近々再入荷の予定があるとの事だったので、今回は味見用として合計7本のジュースを購入する。
相手の好みが分からない以上、それなりの数を揃えて迎え撃つ…もとい、おもてなしするしか対応策が浮かばなかったのだ。

ベリアには女神様達に聞いてみたらと言われたが、会食はいわばサプライズであり出されるメニューが分かっていたらつまらない、そうイズミは考え手持ちの予算を注ぎ込んで準備をしているのだ。
当然ながら、ベリアの持ち金には銅貨1枚手を付けてはいない。

「会食用ならお出しする酒の味は知ってないとマズい、試飲用の小瓶を用意しなさい」

会計の直前に店長が姿を見せると店員に指示を出し、購入するドワーフ酒の入った試飲用のミニボトルを追加してくれた。

「小瓶は100mlです。複数の試飲をする際は、その都度お水を飲んで口内をリフレッシュして下さい」

「分かりました、ありがとうございます」

会計を済ませ買い込んだ飲み物をショルダーバッグに収納すると、そそくさとグラテミアの屋敷へと帰ってゆく。
これから購入した飲み物を味見し、どう提供すべきか検討しなければならないのだ。

「ありがとうございました~!」

イズミを見送った店員が店内に戻ると、ドワーフ族の店長が神妙な顔付きで1枚の羊皮紙を睨みつけている。

「店長、何か間違ってましたか?」

「いや…あの客さんはドワーフ酒に詳しかったか?」

「お酒に関する知識はあるようでしたが、酒蔵に関しては知らない感じでしたよ」

「そうか」

店長は暫く黙り込むと、店員に購入されたドワーフ酒を奥のテーブルに並べるように指示を出す。

「店長、何なんです?」

ドワーフの店長は無言で地図を広げる。
その地図にはドワーフ族の酒蔵がある土地に印が入っており、店員は酒を作った酒蔵の印の側に瓶を移動させる。

「これで分かったか?」

「…特級品は男性向け女性向け共に、国内外で特に有名な酒蔵からしか選んで無いようですが…あれ?」

店員はそこまで言っておいて気が付いた。

「残りの特級品は各々の酒蔵が初めて売りに出した特級のドワーフ酒ですよね?」

「そうだ。有名どころが3割、残りは新進気鋭の酒蔵だ。ドワーフ族の所が多いが、人間族が始めた酒蔵のもある。説明したか?」

「いえ、説明したのはお酒の味と香り、それとオススメの飲み方で何処の酒蔵かは言って無いです」

店長は店員からの回答を聞いた上で、自らの考えを口に出した。

「今後はどの辺りの酒蔵で作られたのかも分かるように、棚に地図を貼った上で品を並べた方が良さそうだな。これは俺の勘だが…今年の梅雨が明ける頃には、土地と酒蔵の名前で酒を探しに来る客が増える」

「分かりました。宴が終わり次第、商品の並べ方の変更をするっす!」

酒屋はイズミがどんな会食をするのか想像出来てはいなかったが、何かしらかの予感のようなモノを感じ取っていた。


グラテミアの屋敷に到着したイズミは、屋敷に居る料理人の中でもカクテル作りを任された者達を招集して貰うと、酒屋で書いてもらったメモとミニボトルをテーブルに並べる。

「えー、近々私が開かなければならない会食の為に購入しました、お酒の試飲及びカクテル作りに関して考えたいと思います」

集まった料理人達は特級品のドワーフ酒と聞いてトキメイていたが、その後に待ち受けるカクテル作りを思うと表情が険しくなった。
それもその筈。この試飲の場を設けているテーブルの周囲から、酒好きの従者達の強い視線が注がれているのだ。

「では、試していきましょう」

イズミは試飲をしながら、そのドワーフ酒に合うカクテルを考えてゆく。
その結果、今後カクテルを作る料理人達の負担量が増加してゆくのだが、それが表面化するのは梅雨明けになってからである。
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