異世界無宿

ゆきねる

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第二十六章 梅雨の季節

第五百十二話 大詰め?

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女神様達向けの会食に向けた段取りも順調に進み、残すところ数日となった。
料理は野良猫さんの味見もあって完成度が日に日に良くなっている。

「南部に住むラミア族に頼んで取り寄せた昆布?でしたっけ、コレで出汁を取ると美味しいですね」

「ダメ元でも聞いてみるものですね、本当に直ぐ送られて来るとは」

野良猫に指摘された事の1つに、海の幸が少ない事があった。
ヒュミトールは火山地帯であり、そもそも海までは非常に遠いので当然の話ではある。
転移魔法を使える者が少ないので、物流はオブラートに包んで表現したって遅いのだ。
その点ではラミア族や他の魔族は恵まれていると言えるだろう。

「あのレシピは南国のラミア族にも共有しましたが好反応で、他にも無いのかと突っつかれてますよ」

「会食用のスープとしてどうなのかと思ったのだが、野良猫さんが良いと言うなら有りなんだろうな…他だと魚を使うのがメインになりますが、既に似たような料理はありそうな気が」

「そうかもしれませんが、我々とは違った考え方やアレンジを知ると言うのが、料理人としては良い経験になるのです」

料理人の意見もご尤もであるが、そんな気軽にレシピを提供し続けるのも負担な気がしたので、今回は昆布出汁で我慢してもらいたいと思う。

「イズミ様、トニックウォーターのご用意が出来ました」

「ありがとうございます。色々と無理を言ってしまい申し訳ありません」

「大丈夫ですよ、グラテミア様より優先的に回すように指示を頂いております。それとですね」

トニックウォーターを持ってきてくれた従者達から、別の瓶を手渡された。

「研究班が試作し終えたばかりの、炭酸水なる飲み物です」

「完成したのですね…10日前にお話したのに」

試飲会をした結果、イズミはお酒の割材として必要だと判断した飲み物がある。
トニックウォーター、ジュース、そして炭酸水だ。
トニックウォーターは少数ながらラミア族で製造している物を購入する事で確保し、ジュースは酒屋で購入が出来る事を確認済みだが、炭酸水だけは見つからなかったのだ。

そこで炭酸水を数本マスタングに頼んで実体化してもらい、フラウリアに渡して調査研究と少数ながら生産を依頼したのだ。
フラウリア自身は飲み物の研究は専門外らしく、別のラミア族に任せたようだったが、結果として生産に成功したのだ。

コレで当日会食の場でカクテルを作る迄に、事前練習が出来るようになった。
イズミはカクテル班と勝手に呼んでいる料理人の1人に声をかけると、炭酸水の瓶を手渡した。

「メーレルさん?この前話をしてた飲み物が出来たそうです」

「炭酸水でしたっけ?」

「そうです、シュワシュワするノド越しの良い水ってやつです」

瓶の蓋を開けるとプシュ!っと炭酸が瓶の外へ抜け出す音がする。
まずは静かにグラスへ注ぎ、炭酸水を味わってもらう。

「…確かに、味わいは普通の水ですがシュワシュワ感が良いですね。コレを飲めば少しは空腹感が減りそう」

「飲み過ぎるとゲップが出やすくなりますので、注意が必要ですがね」

イズミはカクテルでの使い方はトニックウォーターと殆ど変わりは無いと説明すると、開けた炭酸水を全て使い味の比較をさせる。

「…水で割るよりも飲みやすく感じますね。トニックウォーターで割ると独特の苦味が追加されて味に深みが増すように思いましたが、炭酸水だとお酒特有の強さが炭酸で和らいでいるような」

「それなら会食でも使えそうですね」

準備も殆ど終わり完成した料理の一部は、グラテミアが特別に貸し出してくれたアイテムボックスに仕舞っておく。
このアイテムボックスであれば時間経過が発生しないそうなので、温かい料理も冷たい料理も一緒に入れても大丈夫な優れものだ。

「イズミ様、お時間を頂けますか?」

「どうしました」

料理を作っていた1人がイズミを呼び出すと、野良猫の前に案内された。

「イズミよ、上質な白パンを作ったようだな」

「ええ、サンドイッチ用ですね。黒パンと白パンの二種類で食べ比べが出来るようにしました」

「その白パンを使った菓子の様な一品を作ってくれ」

「白パンを使った、菓子の様なパン…菓子パンですか」

元いた世界の菓子パンを思い起こすも、この世界で作れる自信が無い。
例えレシピがあっても、会食迄の日数から考えて現実的では無い。
作れそうなものとして浮かんだのは、シュガートーストやフレンチトーストだが、それで満足してくれるだろうか?

イズミは悩んだ末に、料理人と共にフレンチトーストを作り野良猫に試食させる。
フレンチトーストは作り方をザックリと説明した所、料理人達は似たような食べ方の料理を知っていたのか、イズミが思っていたよりも遥かにスムーズな手捌きで作ってくれた。

「うむ、コレは美味である。美味だがもう1つ欲しいな…」

「もう1つ?」

「蜂蜜だ。蜂蜜の甘さが加われば最高の料理になるだろう」

野良猫が何処でそんな知識を仕入れたのか皆目想像も出来ないが、言われてしまえば蜂蜜の有無を確認せざるを得ない。

「蜂蜜は流石に…」

「ですよね」

養蜂技術が未発展かつ、ヒュミトール近辺に蜂蜜を作るミツバチが居ないのだろうか。
調べてみないと分からないが、野良猫が所望する蜂蜜が現在手元に無い事は確かである。

確かと言えば、フラウリアが過去に美容クリームの為に蜂の巣を入手するように指示を出していたが、何かの拍子に蜂蜜の在庫はあったりしないだろうか?
確認しようとフラウリアを探すも、回答は【現在手持ちに蜂蜜は無い】だった。
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