異世界無宿

ゆきねる

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第二十六章 梅雨の季節

第五百二十一話 謎の真相

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お昼過ぎになると、部屋は女神達や精霊達そして妖精達で大賑わいを見せており、特に軽食コーナーではアヤと料理長とデュークが3人がかりで対応している。

軽食として用意したのはメインにサンドイッチ、じゃがバター、山菜や海産物の揚げ物、じゃがいもを蒸すのに使った蒸籠を有効活用して作った温野菜、その他ラミア族のお手製料理が数種類。
なるべく手が汚れない料理を選んだつもりだが、カトラリーセットの用意もしてある。
パッと見る限り温野菜とじゃがバターが多く食べられているようである。

「イズミ、オブリビアはどうだった?」

急に声をかけられたイズミが振り向くと、其処には風の女神がグラスを片手に立っていた。

「まぁ、楽しみましたよ。野良猫さんから聞きましたよ、ある人間の魂を静養させているとか」

「そうね、あの子の魂はとても弱っていたから、暫くは天界に送れないのよ」

グラス内の酒を少し飲んでから、ウィンニルは話しを続ける。

「本当、酷い事をするわね。たった1人の少女に数千人単位の魂の澱みや歪みを無理矢理背負わせるなんて」

「…オブリビアで動いていた悪事は、これでご破産になったと考えても?」

「そうね。貴方方が派手に燃やし尽くしてくれたでしょ、あれで一旦は手を引くでしょう」

どうやら女神にはお見通しのようだ。
あの日マスタングで帝国兵をまるっと燃やし尽くした事を。

「まだ色々な所で活動しているわね。貴方には旅の途中で何度か仕事をしてもらう事になるかも」

「仕事ですか…出来ればオブリビアみたいに、不特定多数の人と行動を共にするのは避けたいのですが。私の装備と戦闘スタイルは秘密にしておきたくて」

「それは貴方の頑張り方次第よ。貴方とアーティファクトが本気を出せば、大体の仕事はこなせるはず」

「報酬はあります?」

「それは都度相談しましょう…」

ウィンニルはそう言って微笑むと、ベリア達の居るお菓子コーナーへと歩いて行った。

「イズミも女神達に目を付けられたな」

足元から声がしたので確認すると、野良猫が前足で器用にお菓子を持ちながら、後ろ足だけで移動して座り込んだ。

「旅のついでにって条件を受け入れてなら、引き受けるつもりではいますがね」

「お主は何処にも所属しておらんから、我々も頼みやすいのだ。相棒の獣人を含め冒険者ギルドや光の教会の加護持ちに頼むと、大きな組織が動く事になり厄介だからの」

「人間に大義名分を与えると、直ぐにつけ上がって争いを始めるからな…俺に頼めば仕事として割り切って粛々とやってくれると考えた訳か」

「主に帝国絡みだろうがな」

野良猫はお菓子…小さくカットされたチーズケーキ…を平らげると、欠伸を一つしてからテーブル席の下で丸くなった。


「ベリア、オブリビアではご苦労だったな」

ウィンニルはベリアに声をかけると、妖精達に料理を分け終えたベリアが振り向いた。

「ウィンニル様」

「どうも帝国が悪事が絡む土地は、我々とて容易に見えなくなる事があるようでな」

「いえいえ、今回は色々な人の力を借りた結果として、何とかなったみたいなもので」

「変異が解けて色々と確認が出来るようになったお陰で1つは調べがついた、これで我等も動く必要が出て来たが…その時は少し先になる」

女神達にも制約があるのか、そう簡単にはこの世界で生きる者達に強い干渉行為は出来ないようだ。
少なくとも、女神達なりの手順を踏む必要がある。

「ところで、ダンジョン内でドロップしたアイテムと新たな魔法適性はどう?」

「そう!アレは何だったのか凄ぇ気になってたんだ」

ベリアの声を聞いたイズミが近づいてゆくと、ウィンニルは2人の脳に直接語りかけるように話をする。

「アレは報酬として受け取ってくれれば良いし、魔法適性の追加は特別サービスよ。ブレスレットと剣は後のこの世に必要になるから、今のうちにこの世に置いておこうと考えたのよ…まぁ、数百年後の話にはなるでしょうけど」

「それにしては巨大な魔物でしたが」

イズミはあのティラノサウルスみたいな魔物を思い出し、つい言葉を挟み込んでしまった。

「あの程度の魔物はザラよ?海の魔物や魔界の魔物達を見れば、あのキマイラも小型だと思うようになるわね」

「アレで小型って…」

ベリアは驚きに満ちた表情をすると、ウィンニルは付け加えた。

「この世界ではそれ程お目にかかる事は無いでしょうけど、向こうで談笑中の魔王が兵を引き連れて現れたら、嫌という程相手をする事になるわよ」

「風の女神よ、儂は魔王職を息子に継がせたのだ。儂が直接戦場に赴く事は無い、こうして妻と共に世界を見て回る位で良いのだ。旧友達と昔話でもしながらな」

聞いていれば女神達と魔王夫妻は大分昔からの付き合いのようである。
年齢を聞くのはマナー違反なので聞きはしないが、この世界が作られた時には存在していたのかもしれない。
何せ創造主や上位種のような存在なのだから。

そんな事を考えていたら、お菓子コーナーに移動していたアヤがイズミの元へやって来た。

「イズミさん、あちらの女神様が聞きたいことがあると」

アヤの案内で話があると言う女神様の元へ向かう。

「何か御座いましたか?」

「…バウムクーヘンが無いのだが」

イズミも会った事が無い女神が、イズミの顔をジッと見てからポツリと言った。
バウムクーヘンの存在は極一部の存在しか知らない筈であり、イズミはオブリビアの一件以来誰にも話をしていない。
こうなると、あの少女に持たせたお菓子や料理は、全て女神達にバレているのかもしれない。

「アレは…特別製でして」

「…食べたかった」

女神の表情が目に見えてションボリとしてしまったので、イズミは少しだけ考えた末にマスタングに魔法通信を繋いだ。

「マスタング、頼みがあるのだが」

「話は聞いていました。直ぐに実体化致しますので、速やかに回収願います」

マスタングにも話を付けた所でイズミは女神に話を付けて、ベリア達に一声かけてから部屋から出る。
大急ぎでマスタングの元へ向かうと、マスタングはトランクを開いて回収しやすくしてくれていた。

「マスタング、急ぎで頼んでしまってすまない」

「問題ございません、追加のお酒も御用意しました」

「ありがとう、助かるよ」

トランク内にはバウムクーヘン以外にも多数の菓子、底を付きかけていた異世界の酒も実体化されている。
ショルダーバッグに詰め込むと、女神達を待たせすぎてはマズいと会食をしている部屋に戻ってゆく。
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