異世界無宿

ゆきねる

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第二十七章 サンダーブレード作戦

第五百三十三話 準備は進む

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翌日。
雨の降るヒュミトールにてイズミはグラテミアの屋敷にてフラウリアと調整を済ませると、金貨の支払いをしてからメーレルと打ち合わせをする。

「初回は2日後で、酒盛りをする建物への集合時間は?」

「グラテミアさんの屋敷を出発するのが、ヒュミトールのお昼を知らせる鐘の音が鳴ったらで大丈夫です」

「出発がですか」

「はい。酒盛りを始めるのは夕方に入る少し前位からですので」

「イズミさんの依頼された果物の加工と飲料水と氷、トニックウォーターとジンジャーウォーターもラミア族の手配で良かったのですね」

「それでお願いします。この時期にドライフルーツを作れるのは、フラウリアさん達くらいですから。それにとても美味しいので個人的にも欲しい位ですよ」

「私の仕事はカクテル作りがメインと考えていて、よろしいのでしょうか?」

「そうです、メインはカクテル作りになるでしょう…問題があるとすれば」

イズミは少し考え込むと、不安げに言葉を続ける。

「私も初回なので相手方とは初対面なので、どんな複雑なオーダーが入るかが分からないって所ですかね」

「それは…不安ですね。屋敷で少し練習しておきます」

「でしたら、簡単なお酒の飲み方をまとめた資料を用意しますよ」

イズミはマスタングに頼み、お酒の基本的な飲み方やアレンジの資料を実体化してもらう。
10枚ほどの羊皮紙にこの異世界の文字で説明文が書かれ、分かりやすいイラストまで入っている丁寧ぶりである。

「どうぞ」

「ありがとうございます…ストレートに水割りにお湯割り、ロックにジュース割り。これはカクテルにも通じる飲み方ですよね?」

「…そうですかね」

「練習しておきます」

メーレルはかなりやる気満々なようなので、資料はそのままメーレルに持っていてもらい屋敷を後にした。

次に向かったのは商人ギルドで、グラス類のレンタルあるいは購入をすべく直営店に入る。
店内には梅雨の時期でも人が多く賑わい、色付きガラスのジョッキとかも置かれている。

「おやイズミ様、何かお探しですかな?」

建物の賃貸契約を結んだ時の男が声を掛けて来たので、簡潔に用件を伝える。

「ええ。グラスやちょっとした食器類のレンタルあるいは購入を考えてまして」

「個数はどの位で?」

「グラスは約50個…このサイズが良いです。次にジョッキが20個、ガラス製と木製をそれぞれ20個で頼みたい。小皿は取り敢えず60枚でカトラリーも同数」

「やはりお店を開くのですか」

「それがですね、純粋に趣味なんです。私個人に金銭的な利益は無いですね、使うだけ使っておしまいって話です」

笑いながら説明するイズミに対して、イマイチ信じられないと言った顔をしているが、ある意味では事実なのだから仕方の無い状況である。

「そうしますとですね…此方のグラスでしたら50個の用意は出来ます。木製のジョッキは数がありますのでレンタル出来るのですが、ガラス製はご購入して頂いた方が良いかもしれませんね」

「それはどうしてです?」

「ガラス製のジョッキは職人のこだわりが強く出ておりまして、お気に召したジョッキがレンタル品に無い事が多いからです」

「そういう事ですか」

「小皿とカトラリーも豊富に取りそろえがありますので、レンタルで問題は無いと思いたいですが…ご趣味での用意でしたら、職人ギルドに腕によりをかけ製作された品々がございますので、是非ご覧になって頂きたく」

商人ギルドの男…名前は忘れた…は趣味ならば何かしらのこだわりがあると判断したのか、店の奥に並べられている商品コーナーにイズミを案内する。

「此方のカトラリーは純銀製でして、熟練のドワーフが一つ一つ丹念に作り上げた品で御座います。隣のカトラリーは純銀に少しだけ銅を加え加工を容易にして作られたカトラリーです」

「純銀製…良い響きですね」

「そうでしょう!輝き具合も違いますし、何より使う度に愛着が湧きますし、何より長く使えます」

「では加工が容易な方のカトラリーをレンタルで、純銀製は個人的に購入します。4セットにしておきましょう」

「かしこまりました」

商人ギルドの男は従業員だろう女性を呼ぶと、イズミが選んだカトラリーを回収してくれた。

「次はジョッキですが、シンプルな物から芸術的な物まで様々な商品がございます」

並べられているジョッキはサイズとしては500mLサイズと1Lサイズの2種類に見えるが、デザインが多種多様だった。
シンプルだが厚みがあり冷えたビールを温くさせにくそうなジョッキ、厚みがあり重量がかさんだ分を丸い窪みを複数箇所に設けて軽量化していたり、美しい模様を彫っていたりと見ていて飽きない。
更には店に入った時にもあった色付きガラスのジョッキもある。

「これは凄いですね」

「ここまで多種多様な商品がありますので、ガラス製のジョッキに関してはレンタルよりも購入する場合が多かったりするのです。ガラス製のジョッキ1つで飲食店のこだわりが見えると仰る方もおりますよ」

イズミは男に一声かけた後で、数多く並ぶジョッキから1つを手に取ってみる。
そこまで重さは感じない。
店内にある魔石ランタンの近くに移動し、ジョッキを近付けて光の反射具合は色の見え方を確認する。
シンプルなジョッキも悪くないが、これならレンタルでも良いだろう。
凝ったジョッキも嫌ではないが、今回はパスさせてもらう。

その旨を伝えて会計と納品予定の調整をすると、イズミは賃貸の家に移動し手持ちの酒を棚に並べてゆく。

「…少し寂しいか?」

酒瓶を並べ終えたイズミが少し離れた場所から棚を眺めると、少ないと言うか寂しいような感覚に陥った。
ドワーフ酒をガブガブと飲む事は少ないと思っているが、この数では心許ないような気がしてくる。

「買ってくるか」

自分の手持ちの金がどれだけあるかを確認したイズミは、酒瓶をショルダーバッグに収納してからマスタングの元へ向かい、酒屋へと走り出すのであった。
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