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第二十七章 サンダーブレード作戦
第五百三十八話 調整は大変
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光の教会に向かう途中で、新しいズボンを仕立ててくれているお店に顔を出す。
「どうも」
「いらっしゃい…アンタか。物は出来てるぞ」
調整済みのズボン2着を受け取ると、改めてズボンに使われている素材の簡単な説明を聞く。
「最初は生地が兎に角硬いから、ちゃんと本格的な旅や仕事をする前に慣らしをするんだぞ」
「メンテナンスは?」
「水洗いして風通しの良い場所に干せば大丈夫さ、石鹸を使って洗う事もあるとか聞いたことがある」
「石鹸ねぇ」
「膝当ての部分は魔物の革だから、定期的にオイルを塗ってやると長持ちする。オイルは持ってるかい?」
「いや、もう手持ちはほとんど無いかもしれない」
「ならウチに取り揃えがあるから、買っておくかい」
イズミは自前のメンテナンス装備にレザー系のオイルが無かった事を思い出し、此処で購入しておく事にした。
アサルトライフルの弾倉を携帯する為に作ったライフルベストがあるが、オイル塗りはまだしていなかったはずなので、この際しっかりメンテナンスしておくべきだろう。
「このズボンの他にも魔物の革素材を使った服や装備はあるかい?」
「ある。確かブラウンバッファローだったかの革を使ったやつだ」
「ブラウンバッファローか…ならオイルも上等なヤツが良いな」
店主は200mlサイズに近い瓶を取り出すと、会計用のテーブルに置いて使い方を教えてくれた。
「使い方は単純だ。最初に革部分の汚れをおとして、綺麗な布にオイルを馴染ませたら、革の部分を優しく撫でるようなイメージでオイル塗り込んでゆく、薄く塗り伸ばす感じだな。乾いたら乾いた布で余分なオイルを拭き取れば大丈夫だ」
「分かった、後でやってみるよ。念の為にオイルは3本買っておきたい」
「3本ね、まいど!このオイルはまあまあ上等な方だから、他の魔物の革にも使えるぞ。注意しないといけないのは、柔らかな魔物の革との相性は微妙って事くらいだ」
「柔らかな魔物の革」
「貴族様が好んで買うような高級な革素材に使うには、使用者の技量が試される事になる。シミになっちまう事があるんだ」
「高級な革にシミ、それは辛いな」
「色々と買ってくれたお客さんには、オイルを塗り拡げるのに便利な布をサービスだ」
店主は触り心地の良い布を数枚用意すると、オイルの瓶と一緒に受け取る。
ショルダーバッグに収納し服屋を後にしたイズミは、今度こそ光の教会へと移動を始めた。
光の教会の裏手近くにある馬車置き場にてマスタングを駐車すると、馬車置き場の見張りをしている子供に使用料の他に銀貨を1枚握らせ、教会へと歩き出す。
敷地内に入って少し歩いた所で、剣の訓練をしている子供達の姿が見えた。
剣を教えていたのは、オブリビア以来会っていなかったヴィラードだった。
「あれ、イズミさんではありませんか」
「テレジアさん、オブリビア以来ですね」
「ヴィラードは子供達に剣の基本を教えている所でして…何か御用があったのでは?」
「そうでした」
イズミはロレッタに話があると告げると、教会の建物内へ案内をしてくれた。
「オルドリン様とセリーヌさんも、昨日戻られた所なんですよ」
「そうなんですね」
「セリーヌさんは10日後には東方の教会へ遠征で、オルドリン様は梅雨明け迄は子供達に手習いを教える事になってます」
広めの部屋へ通されたイズミは椅子に座ると、ロレッタが来るのを腕時計の竜頭を巻きながら待つ。
「お待たせしました」
竜頭を巻き終え左手へ戻してから数分、ロレッタが部屋にやって来た。
オルドリンとセリーヌ、そしてリーベルトまで同席である。
理由がどうであれ、4対1はあまり良い気分ではないのだが。
「スマンなイズミよ、本部で話された事も伝えておきたいと思ったので、同席させてもらう事にしたのだ」
オルドリンはそう言うと、懐から資料を取り出した。
「帝国絡みは厄介な事になってきている。大規模な徴兵が始まったとの情報を入手していて、現在裏取りの最中だ。確定しているのはジェヴェドール王国への侵攻計画の存在と、ハルハンディア共和国領土よりも北部方面への派兵です」
「その話を私にする意味は?」
「派兵されている兵士の姿が異型揃いであるとの一報があった、恐らくあの薬を常飲している兵士の部隊だと光の教会としては考えておる。あの薬はジェヴェドール王国にて廃棄処分すると言う事でよろしかったか?」
「異型の姿を隠さなくなったのか、隠せなくなったのか不明ですね…廃棄処分については、それでお願いします。相棒のベリアがSランク冒険者になるので、授与式の日程前後の数日で処分するスケジュールで考えて頂ければ、此方としても助かります」
どうも精霊達から聞いた話にもリンクする内容のようである。
イズミはマスタングにて厳重保管をしている薬の事を考えつつ、目の前にいる4人の顔色を確認する。
リーベルトとオルドリンは険しい表情のままで、ロレッタはこの前仕事を頼んだ時と変わりは無いように見える。
セリーヌは少し疲れているように見えた。
「セリーヌさん、何処か表情が暗く見えるのですが。お疲れなのでは?」
「本部での報告をしてから、ずっと大変でして」
セリーヌはオブリビアで起きた事を本部に報告した際に、自分が戦力増強の為にセリーヌへ渡していたワンドを証拠の1つとして見せた結果、奪われるようにして本部のお上の者達に取り上げられてしまったそうだ。
比較研究用と銘打たれたが返却予定は明言されず、代替えのワンドを渡されて終わりだったとボヤく。
「報告だけでも大変なのに、災難でしたね」
「大きな組織ですから、文句を言っても仕方の無い話ですね…スミマセン愚痴になってしまって」
「負の感情を溜め込むのは、心にも身体にも良くありませんからね。時には発散する場も必要でしょう…そんなセリーヌさんには、コレを渡しておきましょう」
イズミはロレッタとの打ち合わせの前に、くたびれ気味のセリーヌにマスタングで実体化していたお菓子の余りである、チョコレートを数個渡した。
「口の中でトロける甘さが癖になる、現状では入手が難しいお菓子ですよ」
「ありがとうございます、後で頂きますね」
チョコレートを受け取ったセリーヌは、誰にも渡すまいと言った感じでチョコレートをしまった。
「ではロレッタさん、料理の件ですが…まず実際に料理を始める前に此方を読んでおいて欲しいのです」
イズミはショルダーバッグからレシピ本と調理道具の説明本を取り出してロレッタに渡すと、調理道具をテーブルにポンポンと置いてゆく。
「私が3日に一度くらいの頻度で一緒に料理をしますので、それで感覚を掴んで頂けると…私も下手な方ですがね」
「分かりました、では3日後に最初の料理実習と言う事でよろしいでしょうか?場所は光の教会でも?」
「そうしましょう」
イズミはスケジュール調整を終えると、部屋から出ようとして動きを止める。
男神様から頂いたワンドの存在を思い出したのだ。
急に動きが止まったイズミを不審に思ったセリーヌが、思わず声をかけた。
「イズミ様、どうなさいました?」
「…いえ、何でも。セリーヌさん、唐突な質問で恐縮ですが、個人装備に余裕はあります?」
「個人装備…少しはありますけど」
急に個人装備の話を聞かれたセリーヌは、記憶を辿りながら回答する。
「もし良ければ…このワンドを差し上げますので、ご自由にお使い下さい」
男神様から頂いた小振りなワンドを取り出してセリーヌに渡した瞬間、オルドリンとリーベルトが勢い良く椅子から転げ落ちた。
「どうも」
「いらっしゃい…アンタか。物は出来てるぞ」
調整済みのズボン2着を受け取ると、改めてズボンに使われている素材の簡単な説明を聞く。
「最初は生地が兎に角硬いから、ちゃんと本格的な旅や仕事をする前に慣らしをするんだぞ」
「メンテナンスは?」
「水洗いして風通しの良い場所に干せば大丈夫さ、石鹸を使って洗う事もあるとか聞いたことがある」
「石鹸ねぇ」
「膝当ての部分は魔物の革だから、定期的にオイルを塗ってやると長持ちする。オイルは持ってるかい?」
「いや、もう手持ちはほとんど無いかもしれない」
「ならウチに取り揃えがあるから、買っておくかい」
イズミは自前のメンテナンス装備にレザー系のオイルが無かった事を思い出し、此処で購入しておく事にした。
アサルトライフルの弾倉を携帯する為に作ったライフルベストがあるが、オイル塗りはまだしていなかったはずなので、この際しっかりメンテナンスしておくべきだろう。
「このズボンの他にも魔物の革素材を使った服や装備はあるかい?」
「ある。確かブラウンバッファローだったかの革を使ったやつだ」
「ブラウンバッファローか…ならオイルも上等なヤツが良いな」
店主は200mlサイズに近い瓶を取り出すと、会計用のテーブルに置いて使い方を教えてくれた。
「使い方は単純だ。最初に革部分の汚れをおとして、綺麗な布にオイルを馴染ませたら、革の部分を優しく撫でるようなイメージでオイル塗り込んでゆく、薄く塗り伸ばす感じだな。乾いたら乾いた布で余分なオイルを拭き取れば大丈夫だ」
「分かった、後でやってみるよ。念の為にオイルは3本買っておきたい」
「3本ね、まいど!このオイルはまあまあ上等な方だから、他の魔物の革にも使えるぞ。注意しないといけないのは、柔らかな魔物の革との相性は微妙って事くらいだ」
「柔らかな魔物の革」
「貴族様が好んで買うような高級な革素材に使うには、使用者の技量が試される事になる。シミになっちまう事があるんだ」
「高級な革にシミ、それは辛いな」
「色々と買ってくれたお客さんには、オイルを塗り拡げるのに便利な布をサービスだ」
店主は触り心地の良い布を数枚用意すると、オイルの瓶と一緒に受け取る。
ショルダーバッグに収納し服屋を後にしたイズミは、今度こそ光の教会へと移動を始めた。
光の教会の裏手近くにある馬車置き場にてマスタングを駐車すると、馬車置き場の見張りをしている子供に使用料の他に銀貨を1枚握らせ、教会へと歩き出す。
敷地内に入って少し歩いた所で、剣の訓練をしている子供達の姿が見えた。
剣を教えていたのは、オブリビア以来会っていなかったヴィラードだった。
「あれ、イズミさんではありませんか」
「テレジアさん、オブリビア以来ですね」
「ヴィラードは子供達に剣の基本を教えている所でして…何か御用があったのでは?」
「そうでした」
イズミはロレッタに話があると告げると、教会の建物内へ案内をしてくれた。
「オルドリン様とセリーヌさんも、昨日戻られた所なんですよ」
「そうなんですね」
「セリーヌさんは10日後には東方の教会へ遠征で、オルドリン様は梅雨明け迄は子供達に手習いを教える事になってます」
広めの部屋へ通されたイズミは椅子に座ると、ロレッタが来るのを腕時計の竜頭を巻きながら待つ。
「お待たせしました」
竜頭を巻き終え左手へ戻してから数分、ロレッタが部屋にやって来た。
オルドリンとセリーヌ、そしてリーベルトまで同席である。
理由がどうであれ、4対1はあまり良い気分ではないのだが。
「スマンなイズミよ、本部で話された事も伝えておきたいと思ったので、同席させてもらう事にしたのだ」
オルドリンはそう言うと、懐から資料を取り出した。
「帝国絡みは厄介な事になってきている。大規模な徴兵が始まったとの情報を入手していて、現在裏取りの最中だ。確定しているのはジェヴェドール王国への侵攻計画の存在と、ハルハンディア共和国領土よりも北部方面への派兵です」
「その話を私にする意味は?」
「派兵されている兵士の姿が異型揃いであるとの一報があった、恐らくあの薬を常飲している兵士の部隊だと光の教会としては考えておる。あの薬はジェヴェドール王国にて廃棄処分すると言う事でよろしかったか?」
「異型の姿を隠さなくなったのか、隠せなくなったのか不明ですね…廃棄処分については、それでお願いします。相棒のベリアがSランク冒険者になるので、授与式の日程前後の数日で処分するスケジュールで考えて頂ければ、此方としても助かります」
どうも精霊達から聞いた話にもリンクする内容のようである。
イズミはマスタングにて厳重保管をしている薬の事を考えつつ、目の前にいる4人の顔色を確認する。
リーベルトとオルドリンは険しい表情のままで、ロレッタはこの前仕事を頼んだ時と変わりは無いように見える。
セリーヌは少し疲れているように見えた。
「セリーヌさん、何処か表情が暗く見えるのですが。お疲れなのでは?」
「本部での報告をしてから、ずっと大変でして」
セリーヌはオブリビアで起きた事を本部に報告した際に、自分が戦力増強の為にセリーヌへ渡していたワンドを証拠の1つとして見せた結果、奪われるようにして本部のお上の者達に取り上げられてしまったそうだ。
比較研究用と銘打たれたが返却予定は明言されず、代替えのワンドを渡されて終わりだったとボヤく。
「報告だけでも大変なのに、災難でしたね」
「大きな組織ですから、文句を言っても仕方の無い話ですね…スミマセン愚痴になってしまって」
「負の感情を溜め込むのは、心にも身体にも良くありませんからね。時には発散する場も必要でしょう…そんなセリーヌさんには、コレを渡しておきましょう」
イズミはロレッタとの打ち合わせの前に、くたびれ気味のセリーヌにマスタングで実体化していたお菓子の余りである、チョコレートを数個渡した。
「口の中でトロける甘さが癖になる、現状では入手が難しいお菓子ですよ」
「ありがとうございます、後で頂きますね」
チョコレートを受け取ったセリーヌは、誰にも渡すまいと言った感じでチョコレートをしまった。
「ではロレッタさん、料理の件ですが…まず実際に料理を始める前に此方を読んでおいて欲しいのです」
イズミはショルダーバッグからレシピ本と調理道具の説明本を取り出してロレッタに渡すと、調理道具をテーブルにポンポンと置いてゆく。
「私が3日に一度くらいの頻度で一緒に料理をしますので、それで感覚を掴んで頂けると…私も下手な方ですがね」
「分かりました、では3日後に最初の料理実習と言う事でよろしいでしょうか?場所は光の教会でも?」
「そうしましょう」
イズミはスケジュール調整を終えると、部屋から出ようとして動きを止める。
男神様から頂いたワンドの存在を思い出したのだ。
急に動きが止まったイズミを不審に思ったセリーヌが、思わず声をかけた。
「イズミ様、どうなさいました?」
「…いえ、何でも。セリーヌさん、唐突な質問で恐縮ですが、個人装備に余裕はあります?」
「個人装備…少しはありますけど」
急に個人装備の話を聞かれたセリーヌは、記憶を辿りながら回答する。
「もし良ければ…このワンドを差し上げますので、ご自由にお使い下さい」
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※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
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