異世界無宿

ゆきねる

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第二十七章 サンダーブレード作戦

第五百三十九話 また今度

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渡されたワンドを握ったセリーヌが魔力を込めてみると、ワンドの柄の部分が少し伸び魔法陣のようなものが浮かび上がる。

「これ程の御品を、私に下さるのですか?」

「私が持っていても使えませんからね。宝の持ち腐れってやつにするのは、あまりにも惜しいでしょう」

「…そんな簡単に渡すような次元の代物ではありません!」

床に転げ落ちていたリーベルトが起き上がると、大声を張り上げた。

「オルドリン司教、このワンドは何か尋常ではない力を感じます」

「うむ…儂が見てきたどの神具よりも、強力な魔力を感じる。どう生み出されたのかは皆目見当もつかないが、本部が見たら確実に失神するだろうな」

男神様から頂いたワンドなだけはあり、分かる者にはしっかりと分かる何かがあるようだ。
イズミには制作者のこだわりが詰まったワンド位にしか見えないが。

オルドリンとリーベルトは驚愕の表情を浮かべているが、ロレッタは特に大きな表情の変化は無かった。

「イズミさんの事ですからね。何があっても驚きませんよ」

どうやらロレッタは悟りでも開いたようである。
ワンドを仕舞おうとするセリーヌに対してオルドリンが一度詳しく見させて欲しいと頼み込むが、セリーヌはもう何も奪われまいと渡そうとはしなかった。

「いくら教会であっても、個人装備に手を出すのはいけませんわよ」

「そこを何とか!この年寄りの願いを聞き入れてくれんか?」

「水浴びの場を覗く元気があるのですから、まだまだお若いでしょう?」

「それとこれとは話が違うのじゃよ」

そんなやり取りが行われているが、イズミの要件は済んだので帰る事にする。

「では、今日の所はこの辺で。3日後もこの位の時間帯にお伺いします」

「分かりました、準備しておきますね…イズミさん、あのワンドは何方から頂いたのです?」

オルドリンとリーベルトはセリーヌのワンドをシッカリと拝みたいのか、イズミとの挨拶はそこそこにセリーヌにガン詰めしているようだ。
見送りに出て来たロレッタの質問に、イズミは一度周囲を確認して人気が無いことを確かめてから、遠くで監視でもしている輩に読唇術でも悟られないようにロレッタへ近付く。

「あれはな…ある男神様からの手土産だ」

「男神様の?」

「そう。光の教会の人間に渡せば、今後の旅路でも贔屓にしてくれるだろうって言ってたな」

「…でしょうね」

ロレッタとも別れたイズミはマスタングの元へ向かうと、その足で酒屋へと向かう。
殆どの酒が飲まれてしまったので、大量に買い付ける必要があるのだ。
後4回分もである。


「いらっしゃいませ!おや?今回はお一人ですか」

「そうなんです。少し大口の頼みがありまして」

「分かりました、店長を呼びますね!」

酒屋に入ると直ぐに店員がやって来たので、簡単に事情を説明して店長であるドワーフを呼んでもらう。

「らっしゃい!今回はどんな酒を御所望で?」

「この前買った酒もそうなのですが、殆ど消費してしまいまして」

「ほう!あの量をこの短期間で。居酒屋とか酒盛りでもしたのか?」

「酒盛りみたいな物はしましたかね」

「空き瓶の処理も面倒だろう、酒を買うなら空き瓶はウチで引き取るぞ」

「それは助かります」

店の奥に案内されたイズミは、大量の空き瓶をショルダーバッグから取り出して並べてから、酒を購入すべく商品棚へと歩き出す。

「どんなドワーフ酒が良かったんだ?」

「そうですね…やはり香りの良いドワーフ酒が高評価でした。他には雑味の無いスッキリとした飲み口の酒も」

「そうなると1級品以上になるな」

「出来ればですが、購入する酒は全て2本から3本づつ購入をしたいのですが」

「…大口の意味が少し分かったぞ。そんなに沢山の酒を消費するなんて只事じゃない…念の為に聞くが、予算はどの位だ?」

「金貨で凡そ8000枚、それを今回の購入を含めて4回。1回目は明後日、残る3回はそれぞれ3日おきに。金貨8000枚は合計金額ではなく、1回分の上限額と考えてくれ」

「なんだと!?」

ドワーフの店長は素っ頓狂な声を出すと、腕を組みながらブツブツと独り言を言い始めた。

「少し待ってくれ。店内在庫と酒蔵の在庫状況を再確認する」

店長はそう言うと、のそのそと店内を歩きながら状況を整理しだした。
およそ10分後。

店内ではドワーフの店長がドワーフの酒蔵との連絡が出来る魔法具で、鬼のように連絡を取り始めている。

「大丈夫だ金は出す!兎に角大急ぎで酒をかき集めてくれ。転移魔法を使える奴を雇って、このヒュミトールまで確実に届けてくれれば良いんだ…」

約1時間後。
ドワーフの店長はやりきった満足感に満ちた表情でイズミの元へやって来た。

「ふっふっふ…儂はやったぞ!」

聞くとハルハンディア共和国内の酒蔵や酒屋と連携を取り、突然の品薄状態を回避しつつ数を揃えきる事に成功したらしい。

「助かります。支払いは前払いでも?」

「そうだな…流石に大金を動かすからな。大急ぎで計算するから、少し待ってくれ」

店長は店員と協力して伝票のような物を書いてゆく。

「ええ!?店長、このドワーフ酒もですか?」

「そうだ!何とか8本も揃えたぞ」

「コレだけでも1本金額1000枚…アワアワ」

とんでもない代物を計算に入れられているようだが、男神様から頂いた金貨のようなものなので気にせずに会計を待つ。

「計算終わりました!合計で金貨2万9千枚です」

「特急料金や手数料は」

「それも頂いて良いのですか?」

店員が店長の顔色を伺うと、店長から話があった。

「こんな大金を払うんだ、手数料まで払ったら大変だぞ?」

「適正価格での支払いをしたい」

「…そうか。そう言う事になると、当店では合計金額の1割を頂く事にしている」

「では金貨で3万1千と9百枚か。それだと最初に提示した予算内とほぼピッタリだな」

イズミはショルダーバッグから金貨の入った布袋を取り出すと、間違いが無いかの確認を頼んだ。

確認作業には時間がかかったが、問題無く揃っている事を確認してくれたので、酒を受け取ろうとしたが店長から待ったがかかった。

「お客さん、これ程の数なら当店が責任を持ってお届けしますよ」

「そうは言いますが、大通りからは少し離れた賃貸ですよ?」

「通りから離れた賃貸?そんな所で酒盛りをするのか」

「静かな場所で飲みたいらしくて」

「それなら納得だ。貴族の飲みであったり町の飲み屋じゃ、静かに落ち着いては飲めないからな」

気にはなるが考えないようにしたのか、結局ドワーフの店長が酒を届けてくれる事になった。
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