異世界無宿

ゆきねる

文字の大きさ
553 / 624
第二十七章 サンダーブレード作戦

第五百四十話 温泉地の下見

しおりを挟む
「忘れてた、温泉」

イズミは賃貸へ帰る途中でヒュミトールに来た目的の1つを思い出し、マスタングのモニターにて場所を確認する。

「場所的には離れてるのか、今日は下見だけするとしよう」

目的地を変更したイズミは、温泉のある宿屋街のようなエリアに移動を開始する。

温泉のあるエリアは賑やかではあるが、ヒュミトールの大通り程ではなかった。
馬車置き場にマスタングを駐車し、どんな雰囲気なのかを確かめるかのように散策をしていると、立て看板に地図が書かれているのを見つけて立ち止まる。

「…温泉と言っても、大衆浴場は少ないのか」

見てみると大きな宿屋には温泉があるが、小さな宿屋には浴槽があるだけのようだ。
大衆浴場は男女それぞれ1カ所のみで、肩までつかるような浴槽では無い。
そんなイラストもあった。

「そうなると大きな宿屋の方が良いが…何時予約が出来るのやら」

地図にある大きな宿屋の側まで歩いて見ると、見るからに金持ちのような奴等の姿がチラホラと見受けられる。
他には装備を外している冒険者らしい奴等も居る。
イズミはこの辺りで活動する人達の会話から、どんな場所なのかを確かめるべく近くにあった飯屋に入ってみる事にした。

「いらっしゃい!お一人かい?」

「ええ」

「じゃあこの席どうぞ」

案内されたのは2人用のテーブル席だった。
他のテーブル席も2人用はあるが、半分以上は4人用とかである。

「ご注文は?」

「オススメがあれば」

「昼営業でオススメなら、一角兎の肉を使ったランチだね。この店じゃ皆んな気合を入れるのにこぞって食べるんだ」

「気合いね…それをランチセットでお願いします」

「はいよ!」

銅貨2枚を支払い水を貰うと、椅子に背中を預けながら店内の会話に耳を傾ける。

「ミゼッタちゃん!俺さハーフバウンド亭で1泊するんだけど、今夜はどうだい?」

「あらシャーズさん、久し振りね。今夜ねぇ…金貨5枚でどうかしら」

「5枚かぁ。よし、決まりだ!」

そんな会話だったり。

「なぁ、あのショートの子ってどうだ?」

「あの子?尻と太ともが魅力的だな!一度声を掛けてみろよ。折角良い宿も取ったんだし、当たってみないと事は進まないぞ」

どうやらこの温泉地は、風俗的な要素も内包しているようだ。
となると、一角兎の料理は精が付く料理みたいな扱いなのかもしれない。

「おまちどう!お客さんは何処から来たんだい?」

「どうも…遠いところですかね。ここに来たのはつい最近でして、温泉なる物があると聞いたので興味本位で見に来たんです」

ぼんやりとした説明になってしまったが、こちらの言いたいことは言えているだろう。

「商人さんか冒険者さんかい?温泉は良いもんだよ!身体はポカポカに温まるし、何より疲れが取れるんだよ。お金があれば毎日でも入りたいね」

「大衆浴場はどうなんです?」

「そっちも悪くはないけど、あまり身体を伸ばせないね。どんなものかを知るってのなら、大衆浴場も悪くない選択だね…でも」

店員の女はランチセットをテーブルに置いてから、店内の様子を確認して話を続ける。

「温泉付きの宿を取った方が絶対に良いね。他人の目を気にせずに温泉に入れるし、手荷物の心配も殆ど無い。何より、買った女の連れ込みも出来るんだ」

やはり風俗的な物もセットで存在しているみたいだ。

「女を買う方法なら2種類あるよ。1つは紹介屋を通じて、もう1つはさっき見てただろう?直接交渉さ」

「そうですか」

「宿の予約が取れたら、試してみると良いよ!」

店員はイズミの肩を軽く叩くと、他の客のオーダーを取りに行ってしまった。

「…普通に温泉を楽しめれば良いんだけどなぁ」

そう小さくボヤいたイズミは、一角兎のランチセットを食べ始めるのだった。

食事を済ませて会計をしていると、さっきの女店員から声をかけられた。

「お客さん!普通に温泉を楽しむんだったら、ピーコラージュ辺りがオススメだよ。その宿辺りだと宿代もお手頃で、落ち着いて温泉ってのを満喫できると思うよ、勿論女も連れ込めるけど」

「日帰り温泉はあるかい?」

「それだと大衆浴場しか無いね、どの宿も1泊する想定でしか営業してないんだよ」

「そうですか…有益な情報をどうも」

「こんなに!羽振りが良い客はどの店でも好かれるよ、またどうぞ!」

会計を済ませたイズミは女店員にチップがてらの金貨を1枚握らせて店を出ると、ピーコラージュ亭なる宿屋の場所を確認してからマスタングの元へ向かった。

「宿屋に宿泊するなら、酒盛りを全部こなしてからの方が良さそうだ」

「それが良いかと」

「にしても、温泉地に風俗要素込みか。違いがあるな」

「元いた世界でも、歴史を辿れば似た環境はあったかと」

「かもな。俺にとっては別物って認識なだけさ」

家に戻ったイズミは馬車置き場にてマスタングに魔力補給を済ませると、簡単な掃除をしてから身体を伸ばす。
購入したズボンを試しに履いてみたが、生地が尋常では無いほどに硬く感じたので軽く水洗いをして部屋干しをする。
梅雨の時期なのでやむを得ない判断である。

「ふぃー、今日も疲れたぞ」

「お疲れ。今日はどうだった?」

「大変も大変、Sランク冒険者との実戦的訓練が出来るのは今だけ!とか言ってさ、ガンガンに予定を組み込むんだぜ?」

「小遣い稼ぎにはなるだろ」

「その後でグラテミアの特訓があると思うと、程々にしたくなるのさ」

帰って来たベリアが椅子に座ると、自前のドワーフ酒をグラスに注いで1杯飲む。

「今日はグラテミアさんの特訓は無しなのか?」

「今日は大切な打ち合わせがあるとかで、昨日の内に特訓は休みだって言われてたから」

「そうか…なら俺も少し飲むかな」

イズミは手元に残っている酒瓶を取り出すと、ベリアと共にまったりと酒を飲むのであった。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...