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第二十七章 サンダーブレード作戦
第五百四十一話 偵察結果の共有
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翌日。
朝イチでフラウリアから連絡が入ったのでグラテミアの屋敷へ向かうと、エルフ族のジーンとヨルヌークが案内された部屋に居た。
「どうも」
「早速ですが、我々がルンカルテ川上流からゼーレラント王国方面の調査を行いましたので、結果を共有したく」
帝国絡みの話である。
光の教会でも帝国兵が移動してるとか言っていたのを思い出したイズミは、椅子に座り話を聞く体勢になる。
「まず確認出来た兵の数は昨日の時点で凡そ2000人、問題は帝国兵は主に人間族の筈なのですが…」
「ごちゃ混ぜですか」
「よくご存知で」
「少し前に戦いましてね」
ヨルヌークはイズミの返答に戸惑いつつも、もう少し詳しく教えてくれた。
「帝国兵の装備はマチマチですね。急拵えなのか分かりませんが、一貫性が無いんです。まるで傭兵上がりみたいな格好だったり、酷い奴は戦場で遺体から装備を剥ぎ取ったのかみたいな格好でした」
「それ程に装備が違うのなら、帝国兵では無い可能性もあるのでは?」
「それに関しては何とも言えませんが、帝国兵の配下に居る事は確かです。そして、帝国兵の特徴でもある赤黒い目をしているのをジーンが確認しています」
「赤黒い目?」
「帝国の魔術兵による支配の印です」
説明をヨルヌークからジーンが引き継ぐようにして、話を進める。
「帝国の侵攻速度は異常です。その異常さを促進しているのが支配魔法なんです。これは邪法に分類される禁忌魔法の1つで、支配魔法を受けると自我の殆どを奪われ強制的に術者の配下になってしまうのです」
「その魔法を解除したらどうなります?」
「支配魔法の侵食具合にもよりますが…1ヶ月も続けば手遅れ、術者の思い通りに動く奴隷兵士の完成ですね」
「それは恐ろしい」
「ただ、それだけでは肉体的な変異の説明が出来ません。これに関しては調査を続けようと思います」
「その必要は無いですね」
イズミはジーンの話を途中で止めると、自分の手元にある情報を伝える。
「過去に帝国兵とやり合った時に入手した物がありまして、彼等は強制変異薬を飲んでいます。これは光の教会に調査を依頼してまして、鑑定も済んでいます」
「強制変異薬ですか…これはまた愚かな代物を」
イズミの話を聞いたグラテミアは苛立ちを隠すように姿勢を変えて窓の外を見つめる。
「他にも薬を併用していて、無理矢理だろうと意地で変異をさせるようです。完成度が低いのか、人間に個体差があるように変異にも差異があるのが現状のようです」
「その薬はイズミさんの手元に?」
「ありますが…厳重保管を教会から依頼されてます。ジェヴェドール王国にて光の教会の担当者と合流し、確実な処分をする予定で動いています」
「廃棄処分の方向で動くのは良いですが、イズミ様が所持を?」
「いえ、アーティファクトであるマスタングにて保管しています。マスタングであれば私以外の人間の指示で薬を取り出す事は不可能ですので」
保管状態を聞いたグラテミアは安心したようだが、フラウリアは少し気になるようだ。
「私達でも薬の成分や効果を調べた方が良いのでは?」
「…この薬の件については、余りラミア族として触れない方が良いわね」
「有らぬ誤解を招く可能性があると?」
「光の教会が調査をしているなら、魔術師協会も協力している筈。我々の労力を使う必要性は少ない、頼まれたら対応するで大丈夫だと思うわ」
「分かりました、今の所はノータッチにしておきます」
グラテミア達の話も纏まった所で、イズミにとっての本題に入る。
「その帝国兵の拠点を攻め入るとして、大まかな地図を作って欲しいのですが」
「え…攻めるのですか?」
ヨルヌークは驚きの声を上げながら、イズミの顔を見つめる。
「下手に帝国兵と戦闘をすれば、後でどんな報復を受けるか」
「ヨルヌークさん達は情報提供だけで大丈夫です、組織的な戦闘行動に見せるつもりは無いので」
「単独行動は自殺行為ですよ」
イズミの言い方が気になったのか、グラテミアが会話に割って入って来た。
「イズミさん、帝国軍の拠点を攻撃するとなると、ベリアさんの協力を得るのは難しいですよ。冒険者ギルドに所属する人間が一国の軍隊に戦闘を仕掛けたとなれば、冒険者ギルドが報復対象になる可能性が非常に高い」
「そうなると、グラテミアさん達の協力も得られないと」
「情報提供は出来ますが、戦闘には参加出来ないと考えて頂ければ…ラミア族が1人戦闘に加勢したと知られれば、無関係なラミア族の同胞が無差別に襲われる可能性があるのです」
「それはマズいですね。とは言っても、帝国兵は葬り去りたいですね」
少し考えながら、イズミはグラテミアが持っている地図を眺める。
帝国兵の拠点までは直線距離で凡そ800km、マスタングの飛行モードなら3時間程度で到着出来る距離だ。
「マスタング、ベリアやグラテミアさん達の協力無しで帝国兵の拠点の完全破壊と、帝国兵の無力化は可能だと思うか?」
「可能です。初手でミサイルを撃ち込み戦力をある程度削ぎ落とし、その後虱潰しに処理をすれば半日で完了します」
「2000人を半日でか?」
「50000人でも半日で可能です」
マスタングからの回答を聞いたイズミは、再度地図を確認する。
「だとすると、より敵拠点の詳細なレイアウトが欲しいか」
「本当に攻撃するのですか」
「そうですね…悪天候時か寝込みを襲います。戦闘を始める前に連絡します、帝国兵の拠点からある程度は距離を取って欲しいので」
「分かりました。既に避難準備はしてますので、何か攻撃に関する決定がありましたら教えて下さい。敵拠点のレイアウトについては、少しお時間を下さると助かります」
打ち合わせを終えたエルフ族の2人が転移魔法で帰ると、早速フラウリアから別件の質問が飛んできた。
「イズミさん話は変わるのですが、水虫ってどんな事象なよでしょうか?」
「水虫…治療クリームのレシピでも見つけたのですか」
「そうです!クリーム系のレシピに新たな1ページが追加されたので確認してみたら、水虫の治療に適したクリームと記載されてましたので」
「水虫ってのは厄介な代物でしてね、兎に角痒いんですよ」
水虫に関する説明をしていると、フラウリアの興味が段々と薄れていっているのが分かる。
「…このクリーム、売れるんですか?」
「確実に売れますね。特に冒険者や兵士には必需品にまでなるかもしれません」
「水虫治療クリームが?」
「長時間靴を履いていると菌が繁殖しやすい環境になるので、水虫になりやすくなるんですよ。痒いと仕事も手につかないし、夜も眠れなくなったりと厄介なんです」
「人間族って大変なんですね」
ラミア族には縁のない病なのか、そこまで熱が入らないようだ。
「試しにある程度の個数を作って、ヒュミトールの衛兵とかに売ってみるのが良いかと。悩んでいる人は必ず居ると思うので」
「…分かりました」
少しつまらなそうなフラウリアだったが、渋々クリームを作りに研究室へ戻ってゆく。
イズミはその後グラテミアとまったりとお茶を楽しみながら、男神様達との酒盛りの話をするのであった。
時は少し流れて。
フラウリアはイズミに言われた通りに水虫治療クリームを生産し、ヒュミトールの衛兵隊に軽く売り込みをかけた。
その結果、クリームは飛ぶように売れた。
売れ過ぎて緊急で増産していると、噂を聞き付けた冒険者ギルドや商人ギルドまで水虫治療クリームを求めて来たのだ。
美容クリームは女性の間では話題沸騰で必需品の1つとまで呼ばれるようになったが、水虫治療クリームはヒュミトール発祥の旅の必需品として末永く衛兵や騎士、そして冒険者達の足を守ってゆく事になるのであった。
あくる日、フラウリアは水虫治療クリームを入手して泣くほどに喜ぶ冒険者に尋ねた。
「このクリーム、そんなに喜ぶ程なのでしょうか?」
「勿論です!終わりの見えない痒みで眠れぬ日々からの脱出、苦悩からの解放ですよ!安眠出来る幸せたるやもう!」
「…はぁ。そんな大変なんですね、水虫って」
最後まで水虫治療クリームの有用性を理解しきれていない、そんなフラウリアなのであった。
朝イチでフラウリアから連絡が入ったのでグラテミアの屋敷へ向かうと、エルフ族のジーンとヨルヌークが案内された部屋に居た。
「どうも」
「早速ですが、我々がルンカルテ川上流からゼーレラント王国方面の調査を行いましたので、結果を共有したく」
帝国絡みの話である。
光の教会でも帝国兵が移動してるとか言っていたのを思い出したイズミは、椅子に座り話を聞く体勢になる。
「まず確認出来た兵の数は昨日の時点で凡そ2000人、問題は帝国兵は主に人間族の筈なのですが…」
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「よくご存知で」
「少し前に戦いましてね」
ヨルヌークはイズミの返答に戸惑いつつも、もう少し詳しく教えてくれた。
「帝国兵の装備はマチマチですね。急拵えなのか分かりませんが、一貫性が無いんです。まるで傭兵上がりみたいな格好だったり、酷い奴は戦場で遺体から装備を剥ぎ取ったのかみたいな格好でした」
「それ程に装備が違うのなら、帝国兵では無い可能性もあるのでは?」
「それに関しては何とも言えませんが、帝国兵の配下に居る事は確かです。そして、帝国兵の特徴でもある赤黒い目をしているのをジーンが確認しています」
「赤黒い目?」
「帝国の魔術兵による支配の印です」
説明をヨルヌークからジーンが引き継ぐようにして、話を進める。
「帝国の侵攻速度は異常です。その異常さを促進しているのが支配魔法なんです。これは邪法に分類される禁忌魔法の1つで、支配魔法を受けると自我の殆どを奪われ強制的に術者の配下になってしまうのです」
「その魔法を解除したらどうなります?」
「支配魔法の侵食具合にもよりますが…1ヶ月も続けば手遅れ、術者の思い通りに動く奴隷兵士の完成ですね」
「それは恐ろしい」
「ただ、それだけでは肉体的な変異の説明が出来ません。これに関しては調査を続けようと思います」
「その必要は無いですね」
イズミはジーンの話を途中で止めると、自分の手元にある情報を伝える。
「過去に帝国兵とやり合った時に入手した物がありまして、彼等は強制変異薬を飲んでいます。これは光の教会に調査を依頼してまして、鑑定も済んでいます」
「強制変異薬ですか…これはまた愚かな代物を」
イズミの話を聞いたグラテミアは苛立ちを隠すように姿勢を変えて窓の外を見つめる。
「他にも薬を併用していて、無理矢理だろうと意地で変異をさせるようです。完成度が低いのか、人間に個体差があるように変異にも差異があるのが現状のようです」
「その薬はイズミさんの手元に?」
「ありますが…厳重保管を教会から依頼されてます。ジェヴェドール王国にて光の教会の担当者と合流し、確実な処分をする予定で動いています」
「廃棄処分の方向で動くのは良いですが、イズミ様が所持を?」
「いえ、アーティファクトであるマスタングにて保管しています。マスタングであれば私以外の人間の指示で薬を取り出す事は不可能ですので」
保管状態を聞いたグラテミアは安心したようだが、フラウリアは少し気になるようだ。
「私達でも薬の成分や効果を調べた方が良いのでは?」
「…この薬の件については、余りラミア族として触れない方が良いわね」
「有らぬ誤解を招く可能性があると?」
「光の教会が調査をしているなら、魔術師協会も協力している筈。我々の労力を使う必要性は少ない、頼まれたら対応するで大丈夫だと思うわ」
「分かりました、今の所はノータッチにしておきます」
グラテミア達の話も纏まった所で、イズミにとっての本題に入る。
「その帝国兵の拠点を攻め入るとして、大まかな地図を作って欲しいのですが」
「え…攻めるのですか?」
ヨルヌークは驚きの声を上げながら、イズミの顔を見つめる。
「下手に帝国兵と戦闘をすれば、後でどんな報復を受けるか」
「ヨルヌークさん達は情報提供だけで大丈夫です、組織的な戦闘行動に見せるつもりは無いので」
「単独行動は自殺行為ですよ」
イズミの言い方が気になったのか、グラテミアが会話に割って入って来た。
「イズミさん、帝国軍の拠点を攻撃するとなると、ベリアさんの協力を得るのは難しいですよ。冒険者ギルドに所属する人間が一国の軍隊に戦闘を仕掛けたとなれば、冒険者ギルドが報復対象になる可能性が非常に高い」
「そうなると、グラテミアさん達の協力も得られないと」
「情報提供は出来ますが、戦闘には参加出来ないと考えて頂ければ…ラミア族が1人戦闘に加勢したと知られれば、無関係なラミア族の同胞が無差別に襲われる可能性があるのです」
「それはマズいですね。とは言っても、帝国兵は葬り去りたいですね」
少し考えながら、イズミはグラテミアが持っている地図を眺める。
帝国兵の拠点までは直線距離で凡そ800km、マスタングの飛行モードなら3時間程度で到着出来る距離だ。
「マスタング、ベリアやグラテミアさん達の協力無しで帝国兵の拠点の完全破壊と、帝国兵の無力化は可能だと思うか?」
「可能です。初手でミサイルを撃ち込み戦力をある程度削ぎ落とし、その後虱潰しに処理をすれば半日で完了します」
「2000人を半日でか?」
「50000人でも半日で可能です」
マスタングからの回答を聞いたイズミは、再度地図を確認する。
「だとすると、より敵拠点の詳細なレイアウトが欲しいか」
「本当に攻撃するのですか」
「そうですね…悪天候時か寝込みを襲います。戦闘を始める前に連絡します、帝国兵の拠点からある程度は距離を取って欲しいので」
「分かりました。既に避難準備はしてますので、何か攻撃に関する決定がありましたら教えて下さい。敵拠点のレイアウトについては、少しお時間を下さると助かります」
打ち合わせを終えたエルフ族の2人が転移魔法で帰ると、早速フラウリアから別件の質問が飛んできた。
「イズミさん話は変わるのですが、水虫ってどんな事象なよでしょうか?」
「水虫…治療クリームのレシピでも見つけたのですか」
「そうです!クリーム系のレシピに新たな1ページが追加されたので確認してみたら、水虫の治療に適したクリームと記載されてましたので」
「水虫ってのは厄介な代物でしてね、兎に角痒いんですよ」
水虫に関する説明をしていると、フラウリアの興味が段々と薄れていっているのが分かる。
「…このクリーム、売れるんですか?」
「確実に売れますね。特に冒険者や兵士には必需品にまでなるかもしれません」
「水虫治療クリームが?」
「長時間靴を履いていると菌が繁殖しやすい環境になるので、水虫になりやすくなるんですよ。痒いと仕事も手につかないし、夜も眠れなくなったりと厄介なんです」
「人間族って大変なんですね」
ラミア族には縁のない病なのか、そこまで熱が入らないようだ。
「試しにある程度の個数を作って、ヒュミトールの衛兵とかに売ってみるのが良いかと。悩んでいる人は必ず居ると思うので」
「…分かりました」
少しつまらなそうなフラウリアだったが、渋々クリームを作りに研究室へ戻ってゆく。
イズミはその後グラテミアとまったりとお茶を楽しみながら、男神様達との酒盛りの話をするのであった。
時は少し流れて。
フラウリアはイズミに言われた通りに水虫治療クリームを生産し、ヒュミトールの衛兵隊に軽く売り込みをかけた。
その結果、クリームは飛ぶように売れた。
売れ過ぎて緊急で増産していると、噂を聞き付けた冒険者ギルドや商人ギルドまで水虫治療クリームを求めて来たのだ。
美容クリームは女性の間では話題沸騰で必需品の1つとまで呼ばれるようになったが、水虫治療クリームはヒュミトール発祥の旅の必需品として末永く衛兵や騎士、そして冒険者達の足を守ってゆく事になるのであった。
あくる日、フラウリアは水虫治療クリームを入手して泣くほどに喜ぶ冒険者に尋ねた。
「このクリーム、そんなに喜ぶ程なのでしょうか?」
「勿論です!終わりの見えない痒みで眠れぬ日々からの脱出、苦悩からの解放ですよ!安眠出来る幸せたるやもう!」
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