異世界無宿

ゆきねる

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第二十七章 サンダーブレード作戦

第五百四十二話 酒盛り2回目を終えて

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あれこれと動いているうちに、2回目の酒盛りが終わった。
ドワーフの酒店チョイスの酒は思った以上に男神様や精霊達にも好評であり、賃貸に届いた時にはある程度は余るだろうと思ったが終わってみれば殆ど空になっていた。

…揃いも揃って酒豪らしい。
今回は魔王様もやって来ては男神達と酒を飲み交わし、超高級ドワーフ酒を開けると小一時間もかからずに飲み終えてしまい、イズミに異世界の酒を所望する程であった。
お礼として色々な品を受け取ってしまったが、怖くてまだ確認は出来ていない。

因みにだが、男神の一柱とベリアは不馬が合うようで、後半は一緒に酒を飲んでいた程である。
ベリア曰く、天命を全うした両親と酒を飲んだらこんな感じなのかもと思ったそうだ。

早朝から雨音の優しい音がイズミの耳に届いているが、今日も今日とて動かねばならない。
先ずは光の教会にてロレッタと共に料理の練習が待っている。
比較的清潔な衣服に着替えたイズミは、マスタングに乗って光の教会へと向かった。

「お待ちしておりました」

光の教会に到着したイズミが連れてこられた場所は、教会の厨房の一角である。
数日前に渡していた調理道具も置かれているし、料理に使う材料も準備されていた。
気になるのは…

「ロレッタさんだけでは無いのですね」

「はい、申し訳御座いません…皆さん気になって仕方が無いと言って話を聞いてくれなくてですね」

ロレッタの背後にはテレジアとセリーヌ、そして光の教会で保護している子供達の為に料理を作っている者が数名居たのだ。

聞くと熱心にレシピを読んでいたロレッタが厨房にある食材で照らし合わせをしていた所を料理人に見られてしまい、ロレッタはレシピの存在を隠しきれずに数ページだけ見せたそうだ。
そこに書かれていた料理と調理手順が独特だった為、料理人としての興味が勝って頼み込まれたと言うのが事の経緯らしい。
テレジアとセリーヌは実際には料理をしないが、出来た料理が気になるので顔を出しているそうだ。

「すみませんねぇ、レシピを見させて頂いたら『じゃがバター』とあって、作り方もそうですがバターの作り方まで丁寧に書いてあったので、どうしても気になってしまったんです」

少し申し訳なさそうに話す料理人だったが、その目は真剣そのものだった。
これは逃げられそうにない…そう悟ったイズミは覚悟を決めると、不慣れな料理作りを皆で始めるのだった。



解放されたのは午後になってからの事。
牛乳からバターを実際に作る事になり、腕が良い感じに疲れ筋肉痛が来る事を予見させている。
今日の練習で主に使った食材はジャガイモで、初手で蒸し料理に挑む事になったのだが想像以上に上手く出来ていた。
ここは料理人の直感と言うべきか経験なのかもしれないが、兎に角ホクホクのジャガイモが作れたのだ。

皆んなで作った関係上そこそこの数のジャガイモを蒸したので、塩を軽く振っただけのとバターを乗せたので比較しながらの試食となった。
料理に使える油があったら別の料理もやることになったかもしれないが、運が良い事に油までは用意が出来なかったようで、今日の所はとりあえずお開きになった。

「さて、少し余裕があるな」

フリータイムに入ったイズミは何処かで軽食でも食べようかと考えながらマスタングの元へ向かうと、助手席でベリアが眠っていた。

「どうしたベリア?」

「んあ、今日は早めにギルドでの仕事が終わったんだけどさ」

運転席に座ったイズミはマスタングのエンジンをかけながら、大きな欠伸をするベリアの話の続きを聞く。

「イズミが何かやらかしそうな気がするから、注意して見ていて欲しいってギルド長が言うんだよ」

「…それは、あれか?俺が北方面で帝国が何か企んでいる事を、冒険者ギルドが勘繰ってるって感じか?」

「ここ数日のイズミの動きは、正直かなり目立ってるからな。冒険者ギルドも商人ギルドもソワソワしてんだ…多分だけど、光の教会もな」

「俺は俺で大変なんだよ…神々の依頼にも対応するとなると、どうしても目立つ。まだ酒盛りを3回はしないといけないし」

「皆んな気になってるんだよ、イズミが何者なのか」

「只の旅人の筈なんだけどなぁ…」

「無理があるだろ」

そんなボヤきをしながらマスタングは走り出して賃貸へ向かっていると、ふとグラテミアの言葉を思い出した。

『冒険者ギルドに所属する人間が一国の軍隊に戦闘を仕掛けたとなれば、冒険者ギルドが報復対象になる可能性が非常に高い』

気になったイズミは、ベリアに確認を取ってみる。

「なぁベリア。俺は梅雨が明ける前に北の方で変な事をしてる帝国兵を叩きのめす予定があるんだけど、ベリアは加勢出来そうか?」

「その予定は決定事項みたいな言い方だけど」

「帝国の悪巧みは早めに潰すに限る」

「それをイズミがする理由が分からないけど」

「手遅れになると国家間の戦争だが、何処にも所属していない謎の勢力が帝国兵をメッタメタにしました、なら帝国とて下手な動きは出来ないだろう」

「だから、それをイズミが担う理由は何なんだ?イズミから仕掛けるとなると、大分危ない話になるぞ」

ベリアの言い分はごもっともである。
普通に考えれば帝国の計画を阻止したいのであれば、周辺国が調査を行い各々の国の王族や元老院等が対応する事案なのだ。
その工程を全て放り出して、イズミは単独戦力にて現地に展開する帝国兵と戦うと言っているのだ。
正気の沙汰とは思えない。

「ベリアよ、コレは神々からの勅命だと考えるのだ。そこらの王族や元老院に任せておくと、マズいことになる」

後部座席から声がしたのでベリアが振り向くと、あの野良猫が丸まっていた。

「帝国兵はちぃとばかり…いや、ある女神の逆鱗に触れかけておる。女神が直接手を出す前にイズミに対応してもらわねば、色々と後が大変なのだ」

「それは初耳なのですが?」

野良猫から出て来た最新情報に思わずマスタングを停車させてしまった。

「数日前から帝国兵が大規模魔法で地形を弄り始めていてな、土の女神や精霊達がかなり苛ついておる。下手をすると何処かの火山が噴火してもおかしくない」

「火山が噴火!?」

ベリアが大声を上げながら野良猫に顔を近づける。

「その情報を知っているのは?」

「女神や精霊達と会話が出来る実力者であれば、噴火までは聞かずとも荒ぶっている事位は把握出来ているだろう」

「その情報を証拠に兵を出せたりは」

「今は梅雨の時期、期待は出来んな。因みにだが…近くで梅雨明けを待っているブラックドラゴンも、精霊達の頼みを聞いて戦闘準備を始めておる」

またまたやって来た新情報を聞いた2人は同時にむせた。

「ブラックドラゴンって…ランクは?」

思わずベリアが確認をする。
野良猫は眠たげな欠伸をしてから、素っ気なく答えてくれた。

「最上位に近い上位種、とだけ言っておこう」

「「…ヤバくね?」」

イズミとベリアの反応は、ほとんど一緒であった。
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