異世界無宿

ゆきねる

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第二十七章 サンダーブレード作戦

第五百四十九話 戦闘前の確認

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帝国兵襲撃作戦、通称『サンダーブレード作戦』の為に本格的な調整を始めたイズミだったが、4回目の酒盛りの日には全身に筋肉痛が訪れていた。

「イズミよ、あの武器の調子はどうだ?」

「重いですが、反動は思っていたよりは制御出来てます。まだ速射や連射の精度が微妙ですが」

「そうか?我としては同時に複数の相手に撃ち込む練習が足りぬと思うが」

「え…」

魔王は姿を現さずとも、イズミのトレーニングを確認していたらしい。

「武器を2つ構えておるのに、敵1人に撃つ想定では効率が悪かろう」

4回目の酒盛りの席にて、魔王様より直接の指摘をされてしまった。
耳の痛い指摘である。

「我の中にある異世界人の記憶にあるぞ、複数の敵に囲まれていようとも両手に持った武器で華麗に敵を撃ち倒す男の姿が。それも無傷でだ」

「…きっと映画のワンシーン、フィクションですよ」

「成せば成るものぞ」

「厳しいですって」

「うーむ…仕方あるまい、我が少しだけ手助けをしてやろう」

魔王は右手に持っていたグラスをテーブルに置くと、おもむろにその右手をイズミの頭へ向ける。
するとほんの一瞬だけ、青紫色の光がイズミの視界が奪った。

「!?…なんです?」

「ちぃとばかしお主の目を良くしてやっただけだ」

「目を?」

イズミは周囲を確認してみたが、視力的な変化は無いように思える。

「右目と左目の動きの自由度を高め、脳での処理能力を僅かに高めただけだ。それで右手に構えた武器の照準と、左手に構えた武器の照準を各々の目で出来るようになる素養を持たせたのだ」

「器用に戦える下地を用意して頂いた訳ですね…私にそんな干渉をしても良かったのですか?」

「この程度なら干渉にも入らんな!酒盛りの礼とでも思えば良い」

「ありがとうございます。これで言い訳が出来ない状況になった訳か…」

イズミは明日最終調整をする事に決めると、ショルダーバッグに収納している2丁拳銃の今後の扱いを考えた。
正直に言うと、派手な戦闘以外では2丁拳銃の活躍の場は少ないように思えるからである。
そして何より、44マグナムとの長い付き合いもあるのだ。

「全ての戦場に適した装備など基本的には存在せぬ、状況に応じて理想的な武器選択をするのだ。選択肢は多ければ多い程生存確率は高まり、選択肢の少ない者は苦戦を強いられる事になる…それだけだ」

魔王は異世界のバーボンウイスキーをストレートで飲むと、上機嫌に次の酒を選び始めるのだった。

「そうだ。最後の酒盛りの時に、我の息子を連れてこよう」

「息子さんって、現職の魔王様を?」

「左様、息子は魔王職を引き継いでからまだ一度も、この世界に来た事が無くてな。初回くらいは気楽に来ても良いだろう」

「分かりました。お酒の用意は殆ど変わりませんが、異世界の物が飲みたい場合は私にお声掛け下さい」

「よろしく頼むぞ」

酒盛りに新たなイベントが追加されてしまったので、サンダーブレード作戦は円滑に進める必要が出てきてしまった。
まだ自身の体力面に不安があるのだが。

無事に4回目の酒盛りも終わりメーレル達とも別れたイズミは、男神様や精霊達の置いていったお礼の品をマスタングに収納した。
そろそろショルダーバッグの容量限界に近くなったからだが、パッと見ただけで世に出しても良いものか分からない代物がチラホラありそうなのが恐ろしくもある。
疲れた身体をベッドに預けると、イズミは直ぐに眠ってしまった。

翌朝。
イズミはグラテミアの屋敷にて最終確認をしていた。
エルフ族の偵察が無事に完了し避難も殆ど完了したとの報告があったので、現場の最新情報が書かれた地図を凝視している。

「どれも突貫工事な拠点ですね」

「木造と土造が混在しているのは、両方とも現地調達した材料のみだからです。不思議なのはテントが無くなった所でしょうか」

土造の拠点は魔法で作られたようで、兵士達はその中で生活をしているそうだ。

「では木造の拠点は?」

「最初は見張り塔や司令部のような使い方をしていましたが、現在は減少傾向にあります。何処かに持って行っている可能性もありますね」

「木材は輸送して、拠点の殆どは土造に置き換えか。地形の変化はどうです」

「少しづつ大きな穴みたいになっています。最後に見た時は魔法で土を固めている作業をしていました」

「土を固める…読めないな」

イズミはショルダーバッグからメガネを取り出して掛けると、マスタングにも情報の共有を行なう。

「どう見る?」

「取り急ぎ貯水池にするように見えます」

「上流でか?」

「梅雨が明けたらより下方でも複数作る予定でいると思われます」

「そうか…では今日と明日で武装の最終確認と身体の調整をして、明後日に攻撃を仕掛けます」

イズミが最終スケジュールを大まかに組み上げると、グラテミア達との最終確認は終了となった。

「イズミ様、ベリアさんの転移に対する対価なのですが」

エルフ族の2人が去ってから、グラテミアが対価に関する話を切り出した。

「そうでしたね、何か決まりましたか?」

「はい。状態異常の対策が出来る道具が欲しいです」

「状態異常の対策ですか、防御魔法では出来ない領域の話ですよね」

「そうです。魔法由来の麻痺や毒や強制睡眠や催眠状態などの対策になる道具が良いです」

「マスタングに相談してみますが、グラテミアさんでも防ぎきれない何かがあったりするのですか?」

答えられる範囲であれば聞いておきたいと思い確認した。

「私は大丈夫なのですが、念の為ですね」

「…分かりました、確認してみます」

魔法通信でマスタングに相談すると、アッサリと実体化可能だと回答が来た。
イズミはマスタングの元へ向かい実体化をしてもらうと、大量のパーツが実体化されていた。

ブレスレットに使えそうな加工がされているアメジストのような石が大量にあり、革紐や9ピンに丸カンにペンチとニッパー。
間違い無い、自作させるつもり満々である。

「…マスタング?」

「5回目の酒盛りが終わってからも梅雨明け迄には時間がありますので、暇つぶしも兼ねて自作するのが良いかと。グラテミア様への確認用で1つは完成品を実体化していますので、一度ご確認下さい」

「アメジストみたいな石に、状態異常対策の効果付与が?」

「そうです。ブレスレットやネックレスは手軽に作れますので」

「じゃあ、この数はなんだ」

「梅雨明けまでの暇が潰せるように、量だけは用意致しました。昼は筋トレ、夜はブレスレット作り、良い梅雨の過ごし方になりそうですね」

今後の予定が自動的に決まった所で、イズミは大きなため息をつきながら荷物をショルダーバッグに収納してグラテミアの元へ向かった。
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