異世界無宿

ゆきねる

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第二十七章 サンダーブレード作戦

第五百五十話 射撃練習

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マスタングが先行で作った完成品のブレスレットを見たグラテミアは、その付与効果に満足したものの一度実際に使ってから受け取る事になった。

「ではイズミ様、私はこれから予定がありますので」

「分かりました。ブレスレットの効果でご納得頂けましたら、なるべく早めにご連絡を頂きたく」

「何か微調整があったりするのですか?」

「いえ…マスタングが大量にパーツを実体化しましたので、問題が無ければ少数ながら手組みをしようかと」

イズミはそう言ってショルダーバッグからブレスレット作成用のパーツを取り出すと、グラテミアの表情が少しだけ固くなったのが分かる。

「梅雨明けまでにはまだ日数がありますので、丁度良い時間潰しにもなるだろうと」

「マスタング様は、なにかご説明を?」

「特には何も。暇つぶしの内職みたいな感覚なのでしょう」

そう答えたイズミをジッと見つめていたグラテミアだったが、次の予定があるので今日の所はお開きとなった。
イズミはグラテミアの屋敷から出ると、ドワーフ工房へナイフの受け取りに向かう。

「どうも」

「いらっしゃい!アンタか、準備は出来とるぞ」

ドワーフの武器屋に入ると、早速頼んでいた装備の最終確認に移る。
ライフルベストを着込みナイフをスムーズに抜き差し出来るか試してみて、微妙な調整をしてもらうと15分程で確認が終わった。

「肩がけのナイフは初動が大きくなるのが欠点だ、馴れるまでは直前に抜かず事前に抜く事だな」

「覚えておきます」

ライフルベストを脱いでからナイフを別で頼んでいたシースに収納すると、片付けをしてから武器屋を出ようとしたら店員のドワーフから声をかけられた。

「お客さんよぉ、変な連中に目を付けられとるぞ」

「変な連中?」

「そう!冒険者ギルドや商人ギルド、此処ドワーフ工房周りにも彷徨いとる。何を嗅ぎ回っとるのかは知らんが、注意しておく事に越したことは無いな」

「…ご忠告どうも。気を付けます」

ドワーフの話から何処かの監視者が動き出したのかとも考えたが、まだ実害は出ていないので下手に動くのも悪手になりかねない。
まだ注意や警戒するだけに留めておいて、今はサンダーブレード作戦に注力したいのだ。

イズミは武器屋から出るとマスタングの元へ向かい、装備の練習場へ移動を開始する。
ヒュミトールの門に居る衛兵はイズミを確認し声を掛けてきたので、窓を下ろして挨拶をする。

「今日も外出で?」

「そうです、夕方前には戻りますよ。運動不足解消の為に、身体を動かしたくて」

「梅雨の時期ですから気を付けた方が良いですよ、急に天気が崩れるんです」

「分かりました。その時は戻って来ますよ」

イズミが何時ものルーティンになっている金貨を衛兵に握らせると、にこやかな表情にて通してくれた。

「…そう言えば、昨日衛兵隊周りでアンタについて聞き込みをしてる男を見たって報告があったな。身のこなしが並大抵の人間のソレじゃなかったって副隊長が言ってたから、気を付けなよ」

「そうします。身に覚えは無いのですがね」

「そうですかい?我々から見るとかなり目立ってるので、知らぬ間にありもしない尾鰭が付いてたりするもんですよ」

門を通り抜けたイズミはマスタングのアクセルを少し強く踏み込むと、練習場所へと移動をする。

「マスタング、周囲の索敵を頼む」

「かしこまりました…現在は特に反応はありません」

「そうか。何かしらの反応が現れたら共有を頼む」

近くに転がっている丸太や誰かが作った土壁の残骸へと近付くと、軽く整えてから射撃練習を始める。

弾倉をフルで積んだライフルベストを着込み、2丁拳銃をキャリーするホルスターとベルトを装着し、スムーズに弾倉交換や武装の切替をすべく動作確認をする。
アサルトライフルをぶら下げるスリングと新調したナイフとの干渉に気を付けつつ、武器の持ち替えを何度か試してから本格的な撃ち込みに移った。

「…アクション映画の難しい所は、ライフル系のマグチェンジ描写が少ない所だな」

イズミはライフルから素早くハンドガンへと持ち替えをしてみたり、マグチェンジをしたりしながらボヤいた。
ミリタリー系の映画や本物を意識した本格的な映画であれば、素早いマグチェンジや武器の持ち替えの描写もあるが、イズミが好き好んで見ていたアクション映画ではそこまで緻密な描写は少なかった。
なので様々な映画で培った知識をベースに、自分の中で知識と技術の混ぜ込み織り込みをしているのである。

大好きなアクション映画での主役に至っては、アサルトライフルが弾切れになったら放り捨てて2丁拳銃に切り替えをしていた程であり、今のイズミにはあまり参考にならないのだ。
ついでに、やたらゴツい幸運の指輪も持ち合わせてはいないし、デカくて標準的な日本人の腕にはオーバーサイズ過ぎる高級な腕時計も持ち合わせてはいない。

「ライフルからハンドガンに切り替える時は、ショルダーバッグに収納した方が移動しやすいが…手間だな」

第一段階の練習を終えたイズミはライフルを収納すると、2丁拳銃の本格的な練習に移る。
重量が2kgオーバーになった45口径オートマチックのカスタムはコンペンセイターから勢い良く噴き出すマズルファイアもあってか、44マグナムを撃つ時よりかは2発目の照準を合わせやすく感じるようにまでなっていた。
そうは言えども、片手で扱うには気合いも体力も必要ではあるが。

「マスタング、このカスタムなら敵に対して何発撃ち込めば無力化が出来そうだ?」

「オブリビアで戦闘をしたようなキメラ兵士基準であれば、胸部へ1発ないし2発で十分です」

「概ね44マグナム弾と同じ威力、流石だな」

「必要であれば弾頭を炸裂弾に仕様変更も出来ますので、その際はお申し付け下さい」

「水銀弾とかか?まぁ大丈夫だろう」

イズミがロマンを感じた映画にて殺し屋が使ったカスタム銃の弾が、確か水銀弾だった事を思い出した。

「爆裂魔法を付与するだけですので、直ぐに完了します」

「…そうか」

拳銃弾ですら爆裂するとなると流石に殺意マシマシ過ぎる気がするが、戦闘において効率的に敵を無力化する為ならば非常に有効である。
どうせならアサルトライフルの弾にも付与して欲しいものだが。

弾込めをしていた分を使い切ったイズミはマスタングのトランクを開けて補給をしながら、今にも雨が降り出しそうな空へと目をやった。

「…明後日か」

そう呟いたイズミの表情は何処か暗く、弾込めを終えたハンドガンのスライドが動く音が響いた。
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