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第二十七章 サンダーブレード作戦
第五百五十三話 後悔先に立たず
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ヒュミトールの温泉街は小雨が降っていても繁盛しているのか、多くの人で賑わっているのがよく分かる。
上等な服を来た男が綺麗な女性と共に温泉宿に入ってゆく姿もチラホラ見えるが、まだ午前中である事から奥さんの可能性もあるのかもしれない。
この辺はイズミの価値観との違いが出ているような気もしているが。
温泉街にも食料品店や服屋もあり、食料品店を覗くと大通りの店とは違って果物系が多いように見える。
先ずは飯でもと思い飯屋のあるエリアに向かうと、まだギリギリ昼飯前の時間帯にも関わらずどの店も客でひしめき合っていた。
「今朝シメたばかりの一角兎のランチが出来たよ!」
「これを食べないと活力が湧かないんだよな」
「一角兎なんて狩っても狩っても増えちまうから大変だが、ちゃんと処理をしてくれれば美味いってんだから色々と困っちまうぜ」
一角兎のランチと聞いた道行く男の会話から察するに、ヒュミトール近辺ではよく見る魔物の類らしい。
この前も食べたが普通に美味かったので、また食べても良い気がして来た。
明日は大仕事をするのだから、気合を入れるつもりで一角兎のランチも有りだろう。
そうは言ったものの、どの店でも一角兎のランチは提供されているようだ。
その店ごとに独自の味付けをされているなら、前回入った店とは別の店で食べるのも一興と考えて店の入口から店内を確認してみる。
ある店ではステーキのように焼き、別の店では骨付き肉のような提供をしているのが分かる。
イズミの腹的には、そこまで脂っぽいのは避けたい所だったので揚げ料理は今回パスとした。
「あら、お客さんかい?」
イズミが店の前に置かれた看板を見ていると、店内にいた店員の女性から声をかけられた。
「どんな料理なのか気になりましてね」
「今日のランチは一角兎のステーキと温野菜のセットだよ、口直しの果物付きで銀貨3枚だけどボリューム満点だから満足感はガッツリあるよ!因みに黒パンは3個までセット料金に入ってる」
「それはお得そうだ」
「だろう!お客さんは1人かい」
「ええ」
「この店は1人客も大歓迎さ、ちょっと気の強い娘達が居る事だけは事前に言っておくよ」
そう言って笑う女店員へ目を向ける。
身長はイズミより少し低く、スタイルは良い方だろう。
セミロングの茶髪は整えているようだが一部は癖っ毛なのか跳ねている。
「気の強いねぇ」
「ま、その辺は相手を見て動くだろうけどね。食べてくかい?」
「そうしよう」
イズミは元気な女店員に促されるようにして、飯屋に入店する。
店内に居る客層の殆どは冒険者系の人間(亜人や獣人も居る)であり、皆見た目から判断すると若い方だと思われる。
案内された丸テーブル席に座りランチセットを注文すると、椅子にもたれ掛かりながら周囲を見渡した。
テーブル席とカウンター席があり、壁寄りの席に店員が言っていた気の強い娘達であろう方々の姿がある。
食事前に目が合うのも微妙なので、イズミは周囲の話し声に耳を傾けた。
「いやぁ、梅雨前に多少無茶してでもひと稼ぎしたのは正解だったな!」
「梅雨の時期用の装備を準備出来てるんだ、他の冒険者パーティーの動きが鈍い今が俺達のチャンスってやつだ」
「次の魔物討伐依頼を達成したら、Bランク昇格は間違い無いだろう!皆油断するなよ」
そんな会話が聞こえてくるが、その中にはこんなのもある。
「やっぱりSランクってのは格が違うよな。Aランクに昇格したばかりとは言え、もう少し頑張れると思ったんだが」
「水魔法の攻撃を火魔法で全部かき消すなんて、普通無理でしょ。規格外じゃない?」
「だけど攻撃パターンが単調になりかけてるって指摘は痛かったな…対人向けの戦闘依頼は避けてたもんな」
「だね。Aランクにもなれば対人戦闘をせざるを得ない依頼も増えるだろうし、練習が必要だね」
「ヒュミトールを拠点にしてる俺達からすると、対人戦闘が発生する依頼の方が少ないけどな」
「そう言うなよ、出来て損は無いんだから。それに俺達が得意とする3連続魔法攻撃からの剣撃は高評価だったんだ、もっと自信を持って良いだろ」
どうやらベリアとの訓練戦闘を経験した冒険者パーティーも居るようだ。
「おまちどうさん、一角兎のランチセットだよ!」
「どうもありがとう」
周囲の会話に耳を傾けていたら思ったよりも時間が経っていたのか、自分の注文が届いたので意識を目の前の食事に向ける。
この店の一角兎は食べやすいようにカットされており、一口食べたら温野菜を食べるみたいな事も出来る。
他の客は黒パンを切って一角兎のステーキを挟んで食べたりもしているので、割と食べ方の自由度が高い店で助かる。
ペロリと食べ終えたイズミが小休止に入った所で、壁寄りに居た女性が動いたのが視界の端から確認出来た。
「冒険者さん、今日は仕事かい?」
「いや、今日明日はフリーさ。宿に泊まって身体を休めるつもりだ」
「身体を休めるなら此処は最適だからね、温泉に身体を浸からせて、全身の力を抜けば疲れが取れるよ…ところで、温泉と一緒にすればもっと身体を解せる事があるんだけど、試してみない?」
女からの勧誘である。
この温泉街には風俗的な要素がある事は前回確認済みなので何とも思わない…思わないようにしている…が、純粋な温泉目的の客は少数派なのだろうか。
疑問である。
「ねぇお客さん…見た限り冒険者じゃ無さそうだけど、商人さんとかだったり?」
会計を済ませてさっさと退店しようかと考えていた所で、別の女がイズミに声を掛けて来た。
「旅人ですよ」
「へぇ旅人!何処から?」
「結構遠くからです、説明は難しいですがね」
「かなり遠くから来てるんだ、1人で旅を?」
「今は2人だが、今は自由行動中でね」
イズミはベリアの事は口に出さず、開いていた椅子に座った目の前の女を観察する。
真っ赤なショートヘアに翠色の瞳、身長は座ってしまったので何とも言えないがスタイルは世の男好みかもしれないボンキュッボンだ。
胸が大きいと日常生活が大変そうだなと言う感想が第一に出て来るイズミとしては、程良いボンキュッボンなら大歓迎のつもりなのだが、何故かそんな感情はあまり湧いてこなかった。
「何処かに宿屋を借りてるの?」
「梅雨明け迄の短期契約で賃貸を。今日は純粋に温泉なるものを体験したいと思ってね」
「良い温泉は宿屋が一番だよ!予約はしてたり?」
「いやしてない。今日の今日で予約も出来ないだろうし、大衆浴場とやらに言ってみようと思ってる」
そこまで話した所で女の自分に対する興味が薄れると思ったのだが、そんな単純な話にはなってくれなかった。
「大衆浴場も悪くは無いけど、初めての温泉なら絶対に宿屋が良いね!顔も名前も知らない人と一緒に入る風呂ってのは、心が落ち着きにくいんだよ」
「そんなものですか」
「断言出来るね…もし良ければ、私が宿屋を手配しようか?ツテがあるから1部屋くらいなら取れるけど」
女はイズミを吟味するような視線で見ると、一歩ずつ踏み込んで来たのだ。
「申し出は大変有り難いですが、どうしてそこまで?」
「貴方に興味があるから」
イズミは少し険しい表情で女の目を見ると、女はテーブルに両手を見せるように置いて話を続ける。
「貴方、店員さんがランチを持って来たときに『どうもありがとう』と言ったでしょ。そんな言葉遣いをする客は稀だからね、どんな人なのか興味が湧いてきたって感じ」
「そんな所から」
「勿論この提案には条件があるよ。宿代は全額貴方負担で、宿屋の紹介料を私に支払う」
「良心的な価格だと助かるのですが」
「その辺は要相談、あと私を1日買う事。これが条件」
イズミは少しだけ考える素振りを見せてから、支払う金額の試算を頼んでみる。
「ちょっと宿屋に話をしてくるよ、待ってて!」
女はそう言うと勢い良く店から飛び出して行った。
面倒な事になったかもしれないと若干の後悔をしつつ、イズミは店員に水の注文をして女も到着を待ってみる事にした。
上等な服を来た男が綺麗な女性と共に温泉宿に入ってゆく姿もチラホラ見えるが、まだ午前中である事から奥さんの可能性もあるのかもしれない。
この辺はイズミの価値観との違いが出ているような気もしているが。
温泉街にも食料品店や服屋もあり、食料品店を覗くと大通りの店とは違って果物系が多いように見える。
先ずは飯でもと思い飯屋のあるエリアに向かうと、まだギリギリ昼飯前の時間帯にも関わらずどの店も客でひしめき合っていた。
「今朝シメたばかりの一角兎のランチが出来たよ!」
「これを食べないと活力が湧かないんだよな」
「一角兎なんて狩っても狩っても増えちまうから大変だが、ちゃんと処理をしてくれれば美味いってんだから色々と困っちまうぜ」
一角兎のランチと聞いた道行く男の会話から察するに、ヒュミトール近辺ではよく見る魔物の類らしい。
この前も食べたが普通に美味かったので、また食べても良い気がして来た。
明日は大仕事をするのだから、気合を入れるつもりで一角兎のランチも有りだろう。
そうは言ったものの、どの店でも一角兎のランチは提供されているようだ。
その店ごとに独自の味付けをされているなら、前回入った店とは別の店で食べるのも一興と考えて店の入口から店内を確認してみる。
ある店ではステーキのように焼き、別の店では骨付き肉のような提供をしているのが分かる。
イズミの腹的には、そこまで脂っぽいのは避けたい所だったので揚げ料理は今回パスとした。
「あら、お客さんかい?」
イズミが店の前に置かれた看板を見ていると、店内にいた店員の女性から声をかけられた。
「どんな料理なのか気になりましてね」
「今日のランチは一角兎のステーキと温野菜のセットだよ、口直しの果物付きで銀貨3枚だけどボリューム満点だから満足感はガッツリあるよ!因みに黒パンは3個までセット料金に入ってる」
「それはお得そうだ」
「だろう!お客さんは1人かい」
「ええ」
「この店は1人客も大歓迎さ、ちょっと気の強い娘達が居る事だけは事前に言っておくよ」
そう言って笑う女店員へ目を向ける。
身長はイズミより少し低く、スタイルは良い方だろう。
セミロングの茶髪は整えているようだが一部は癖っ毛なのか跳ねている。
「気の強いねぇ」
「ま、その辺は相手を見て動くだろうけどね。食べてくかい?」
「そうしよう」
イズミは元気な女店員に促されるようにして、飯屋に入店する。
店内に居る客層の殆どは冒険者系の人間(亜人や獣人も居る)であり、皆見た目から判断すると若い方だと思われる。
案内された丸テーブル席に座りランチセットを注文すると、椅子にもたれ掛かりながら周囲を見渡した。
テーブル席とカウンター席があり、壁寄りの席に店員が言っていた気の強い娘達であろう方々の姿がある。
食事前に目が合うのも微妙なので、イズミは周囲の話し声に耳を傾けた。
「いやぁ、梅雨前に多少無茶してでもひと稼ぎしたのは正解だったな!」
「梅雨の時期用の装備を準備出来てるんだ、他の冒険者パーティーの動きが鈍い今が俺達のチャンスってやつだ」
「次の魔物討伐依頼を達成したら、Bランク昇格は間違い無いだろう!皆油断するなよ」
そんな会話が聞こえてくるが、その中にはこんなのもある。
「やっぱりSランクってのは格が違うよな。Aランクに昇格したばかりとは言え、もう少し頑張れると思ったんだが」
「水魔法の攻撃を火魔法で全部かき消すなんて、普通無理でしょ。規格外じゃない?」
「だけど攻撃パターンが単調になりかけてるって指摘は痛かったな…対人向けの戦闘依頼は避けてたもんな」
「だね。Aランクにもなれば対人戦闘をせざるを得ない依頼も増えるだろうし、練習が必要だね」
「ヒュミトールを拠点にしてる俺達からすると、対人戦闘が発生する依頼の方が少ないけどな」
「そう言うなよ、出来て損は無いんだから。それに俺達が得意とする3連続魔法攻撃からの剣撃は高評価だったんだ、もっと自信を持って良いだろ」
どうやらベリアとの訓練戦闘を経験した冒険者パーティーも居るようだ。
「おまちどうさん、一角兎のランチセットだよ!」
「どうもありがとう」
周囲の会話に耳を傾けていたら思ったよりも時間が経っていたのか、自分の注文が届いたので意識を目の前の食事に向ける。
この店の一角兎は食べやすいようにカットされており、一口食べたら温野菜を食べるみたいな事も出来る。
他の客は黒パンを切って一角兎のステーキを挟んで食べたりもしているので、割と食べ方の自由度が高い店で助かる。
ペロリと食べ終えたイズミが小休止に入った所で、壁寄りに居た女性が動いたのが視界の端から確認出来た。
「冒険者さん、今日は仕事かい?」
「いや、今日明日はフリーさ。宿に泊まって身体を休めるつもりだ」
「身体を休めるなら此処は最適だからね、温泉に身体を浸からせて、全身の力を抜けば疲れが取れるよ…ところで、温泉と一緒にすればもっと身体を解せる事があるんだけど、試してみない?」
女からの勧誘である。
この温泉街には風俗的な要素がある事は前回確認済みなので何とも思わない…思わないようにしている…が、純粋な温泉目的の客は少数派なのだろうか。
疑問である。
「ねぇお客さん…見た限り冒険者じゃ無さそうだけど、商人さんとかだったり?」
会計を済ませてさっさと退店しようかと考えていた所で、別の女がイズミに声を掛けて来た。
「旅人ですよ」
「へぇ旅人!何処から?」
「結構遠くからです、説明は難しいですがね」
「かなり遠くから来てるんだ、1人で旅を?」
「今は2人だが、今は自由行動中でね」
イズミはベリアの事は口に出さず、開いていた椅子に座った目の前の女を観察する。
真っ赤なショートヘアに翠色の瞳、身長は座ってしまったので何とも言えないがスタイルは世の男好みかもしれないボンキュッボンだ。
胸が大きいと日常生活が大変そうだなと言う感想が第一に出て来るイズミとしては、程良いボンキュッボンなら大歓迎のつもりなのだが、何故かそんな感情はあまり湧いてこなかった。
「何処かに宿屋を借りてるの?」
「梅雨明け迄の短期契約で賃貸を。今日は純粋に温泉なるものを体験したいと思ってね」
「良い温泉は宿屋が一番だよ!予約はしてたり?」
「いやしてない。今日の今日で予約も出来ないだろうし、大衆浴場とやらに言ってみようと思ってる」
そこまで話した所で女の自分に対する興味が薄れると思ったのだが、そんな単純な話にはなってくれなかった。
「大衆浴場も悪くは無いけど、初めての温泉なら絶対に宿屋が良いね!顔も名前も知らない人と一緒に入る風呂ってのは、心が落ち着きにくいんだよ」
「そんなものですか」
「断言出来るね…もし良ければ、私が宿屋を手配しようか?ツテがあるから1部屋くらいなら取れるけど」
女はイズミを吟味するような視線で見ると、一歩ずつ踏み込んで来たのだ。
「申し出は大変有り難いですが、どうしてそこまで?」
「貴方に興味があるから」
イズミは少し険しい表情で女の目を見ると、女はテーブルに両手を見せるように置いて話を続ける。
「貴方、店員さんがランチを持って来たときに『どうもありがとう』と言ったでしょ。そんな言葉遣いをする客は稀だからね、どんな人なのか興味が湧いてきたって感じ」
「そんな所から」
「勿論この提案には条件があるよ。宿代は全額貴方負担で、宿屋の紹介料を私に支払う」
「良心的な価格だと助かるのですが」
「その辺は要相談、あと私を1日買う事。これが条件」
イズミは少しだけ考える素振りを見せてから、支払う金額の試算を頼んでみる。
「ちょっと宿屋に話をしてくるよ、待ってて!」
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※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
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