異世界無宿

ゆきねる

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第二十七章 サンダーブレード作戦

第五百五十五話 念願の入浴

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(注意:若干の性的描写が入ります)

買い出しに出かけたイズミが購入したのは、気になっていた果物がメインである。
何か面白い商品があればと思ったが、めぼしい物は今日の所は見当たらなかった。

数種類の果物を購入した際に小ぶりの柚子みたいな果物が目についたので、温泉に浮かべて風情を楽しもうと思い合わせて購入した。

聞くところによると小振りな果物の売れ筋は余り良くないらしく、この柚子は売れ残る事が多いそうだ。
その理由は単純で、大きい果物の方が沢山入荷するし需要も大きい果物の方があるからだ。
事実として小振りな果物の単価は大きい果物と比較しても半額程度になっていた。

買い出しを済ませたイズミはオリヴィアと共に宿屋に戻る頃には、日が傾き始めていた。
一度マスタングの元へ立ち寄ると購入した果物の半分を仕舞い込む。
ショルダーバッグには必要最低限の荷物しか収納しないようにしているからだ。
特に明日はド派手な戦闘をする予定なので、重量が嵩む訳では無いが武装と弾薬以外はなるべく収納しておきたく無いのが心情としては大きい。

「マスター、此方をお持ち下さい」

マスタングがトランクに実体化した物を取り出すと、戦闘用の腕時計である金属製のナビゲーターと貴金属でも仕舞っていそうな小振りな木箱だった。

「ありがとう、実体化は終わってたんだな」

「スピードマスターは一度私に預けて頂きたく」

「?分かった」

イズミはマスタングの頼みを聞き入れ左手からスピードマスターを外しトランクにそっと置くと、代わりにナビゲーターを左手に巻き付ける。

「何か微調整でもするのか?」

「ドロップ品のブレスレットの付与効果を解析しましたので、腕時計に組み込み可能かどうか試そうかと」

「あのブレスレットは確か…お手柔らかに頼むな」

オブリビアダンジョンでのケルベロス討伐の際に入手したブレスレットを、マスタングは時間をかけて解析していたらしい。
事前に解析の話は聞いていないので、もしかするとマスタングなりの魔法研究あるいは時間潰しに活用されているのかもしれない。

「何かあったのかい?」

「いや、何でもないさ…部屋に戻ろう」

イズミは木箱の中身を確認せずにショルダーバッグへ一旦収納すると、あの貴族の住まいみたいな豪華な部屋へと戻る。

ショルダーバッグをテーブルに置いたイズミは念の為にメガネで部屋内の異常の有無を確認してから、遂に温泉との対面を果たすべく部屋の奥にある扉を開けた。

「なんてこった、源泉かけ流しってヤツか?」

扉を開けた先の足元には簀子が用意されており、その先からは濡れた足が滑らないように丁寧に加工された石材が敷き詰められている。
浴槽も小振りなものではなく、女好きの金持ちがハーレムを率いて入浴しても余裕のある広さである。
広くて1人や2人での入浴では微妙かもしれない気もしてくる程だ。

「やっぱり良い景色だねぇ!」

オリヴィアがイズミの後ろから声を上げたので景色にも目をやると、ヒュミトールを囲うような山々が視界一杯に広がっていた。
梅雨の時期故に山に生えている木々の色までは鮮やかとは言えないものの、季節が季節であれば美しい景色なのは間違い無い。

「夕食前に入るかい、それとも後で?」

「暗くなったら温泉に入りにくくないか」

「魔石ランタンがあるから、夜でも安心して入浴出来るよ」

「それなら、夕食後にまったり入ろうかな」

オリヴィアが部屋に備え付けられている魔道具で夕食を頼むと、数分程で従業員が夕食を運びにやって来た。

「本日はランドリザードの肉を使ったステーキとなっております。味付けは敢えて薄めにしておりますので、お好みで調味料やソースをかけてお召し上がり下さいませ」

「ランドリザードって、確かAランクの魔物だったような」

「ヒュミトール近辺の山奥に生息している強力な魔物ですが定期的に討伐されておりまして、数日前に討伐されたランドリザードの肉を買い取ったのです。勿論アイテムボックスにて保存しておりますので、鮮度は最高です」

夕食のメニューの説明を受け終えたイズミはその従業員にチップとして金貨を2枚握らせると、従業員は笑顔で部屋を後にした。

食事を始めたイズミがまず驚いたのは、ランドリザードの肉の柔らかさだ。
口の中で蕩けてゆくような食感であり、脂もサッパリとしており胃もたれの心配や食が進まなくなるような不安は一切無い。
小皿に入っていたソースをかけると、和風ソースに近い味わいに代わりこれもまた美味だった。
パンは当然の如くフワフワの白パンであり、少し行儀は悪いがソースを白パンで絡め取って食べても美味なのだ。

「成る程ね…これなら味付けが薄めなのも分かるな」

「う~ん!いつ来てもここの料理は絶品だねぇ」

食事を終えて従業員が片付けにやって来てから、イズミは遂に温泉に入る時が来た。
温泉経験のあるオリヴィアに身体を洗う石鹸と髪を洗う石鹸の違いを聞く所から始める事になったが、無事に入浴準備を済ませて温泉へと繰り出した。

「雨が止んで良かった。流石に月明かりは無いのが残念だが、雰囲気は良好じゃないか」

身体を洗い終えたイズミは備え付けの高級タオルで髪を拭くと、念願の風呂に身体を沈めた。
先ずは肩まで浸かり一息つき、その後で温泉内にある石の座り場みたいな場所に腰掛けて半身浴みたいなスタイルで寛ぐ。

「お客さん、本当に温泉は初めてなのかい?入り慣れてるような感じに見えるけど」

「そうか?気の所為じゃないかな」

オリヴィアの声がする方へと顔を向けると、オリヴィアも身体を洗う所だったのか一糸纏わぬ姿だった。
当の本人に恥じらいは特に無いのか、隠すような素振りすらしていない。
そんなイズミの様子を察したのか、オリヴィアは振り向くとあっけらかんと言い放った。

「生娘でも何でも無いから、恥じらいとかは特に無いよ。特に温泉街で売りをしてる女は、かなりオープンなのさ」

「そうですかい」

ここはイズミの持つ価値観と異世界の人間、特にオリヴィアのような生活スタイルの人間との性に関する価値観の差であろう。

「広い部屋に1人ってのは寂しいものがあるからね、一緒に入らせて貰うよ」

「どうぞご自由に」

「…アンタ、本当に私を抱かないつもりかい?」

イズミの対応の素っ気なさが気になったのか、オリヴィアはイズミの対面にやってくると自慢げに自らの裸体を見せつけて来た。

「初めての温泉を満喫出来れば、今日の所は満足なのだが」

「元は私の押し売りだけど女を買っておいて、抱かないってのは私に失礼だとは思わないかい?」

「据え膳食わぬは男の恥、ってヤツか」

若干の気恥ずかしさに顔を背けていたが会話の為にオリヴィアを見ると、幾つかある古傷の他に不思議なアクセサリーを付いている事に気が付いた。

「…それは?」

「これかい?昔悪趣味な貴族に飼われてた時期があってね、その時に無理矢理付けられたのさ」

それはボディピアスだった。
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