異世界無宿

ゆきねる

文字の大きさ
570 / 624
第二十七章 サンダーブレード作戦

第五百五十七話 ささやかな仕返し

しおりを挟む
(注意:若干の性的描写が入ります)

イズミは高級なタオルで身体を拭き終えると、宿屋が用意している柔らかな肌触りの寝間着に着替えてから、ショルダーバッグに収納していた木箱を取り出し手中身を確認する。

ピアスを外す為のニッパーが入っていたが、他にも気になる物が入っている。
ピアスと小さなガラス瓶に入った軟膏だ。

軟膏は分からなくも無いが、何故ピアスも入っているのだろうか?
バーベルタイプにリング状のタイプ、そしてそれぞれに数種類のキャッチもある。
ここまで用意してある理由がイマイチ読めないが、これはマスタングがオリヴィア勧誘に使えと言っているのだろうか。
全く分からないが。

温泉上がりの1杯としてドワーフ酒を軽く飲むと、オリヴィアの準備が整うのを待つ。

「オリヴィアさん、ピアスは外そうとしたら呪いが発動する感じか?」

「そう。触るぶんには問題は無いね、外そうとした時だけ」

オリヴィアにも緊張を解してもらう目的でドワーフを飲むか聞くと、飲むとの事だったのでグラスに注いで渡した。

「成る程ね…じゃ、コレを握っててくれないか」

イズミはテーブルに置いていた腕時計…金属製のナビゲーター…をオリヴィアに渡すと、軽く握っておくように頼んだ。

「コレは、なんだい?」

「ちょっと特別な魔道具さ。幾つかの便利な機能付き」

寝間着を脱いだオリヴィアに近付くと、イズミはニッパーをピアスに近付ける。

「じゃ作業を始めるぞ」

ニッパーがピアスのシャフトに触れた瞬間、パチンと音を立ててピアスに付いている牙が紫色に光ったと思えば、直ぐに元に戻ってしまった。

「…痛かったか?」

「いや全然、身体には何も反応は来てないね」

イズミはオリヴィアに握られていた腕時計を確認すると、インデックスが紫色に点灯しているのが分かった。
呪い返しが発動し、ちゃんと吸収していたのだ。

問題無い事を確認出来たので、イズミはニッパーで肌を傷付け無いように注意しながら、悪趣味なピアスのシャフトを切断した。

「よし、切れた!けど…」

「けど?」

「バリで身体を痛めるとマズいから、少し削っておく」

ニッパーを片付けてヤスリに持ち替えたイズミは、シャフトを抜く際に身体に傷が付かないように鋭利な部分を丁寧に丸くしてゆく。

バリ取りを終えて無事に全ての悪趣味なピアスを取り外し終えると、イズミは一息つきながらドワーフ酒を一口飲む。

「取り敢えずこれで完了だ」

「なんだか、ようやく解放されたって気分だ!」

オリヴィアはイズミの事を特に気にする様子も無く、椅子から立ち上がり大きく背伸びをした。

「それは何より」

「まさか本当に外せる時が来るなんて、夢みたいだ…コレは?」

全裸のままドワーフ酒を飲んだオリヴィアはテーブルに腕時計を置くと、木箱に入っているピアスのパーツに興味を持ったのかイズミに質問をする。

「それか。それは俺が知ってる形のピアスだ」

「あの悪趣味なとは比較にならないくらい良いじゃねぇか!」

興奮気味なオリヴィアの本来の口調が出てしまったのか、ヤバいと言った感じで口元を手で隠す。
イズミとしては秘部を隠した方が良いと思うのだが、その辺に羞恥心はあまり無いのかもしれない。
これもまた一種の多様性だと思う事にする。

「折角外したってのに、また別のピアスを付けるのか?」

「あの悪趣味なピアスは外したいって話で、ピアス自体はもう長く付けてたから見慣れてるし。無いなら無いで少し物足りないと言うか、何と言うか」

「複雑な心境だな」

イズミは改めて木箱に入っているピアスを見るが、どれも素材が高級そうに見えるのは気の所為だろうか。
色合いがどう見てもステンレススチールの輝きではないし、物によっては金である。
キャッチにも種類があり、宝石が埋め込まれている物まであるのだ。

元いた世界にてイズミ自身はピアスに関して殆ど縁は無かったが、ピアスを空けている友人や知人が居たので一応知ってはいる。
自分がピアスを開ける事は無かったが。

イズミはピアッサーやニードル等の針が自分の身体に近付いてくる事が兎に角嫌だった、健康診断等で採血をする時ですら表情に出てしまう程に嫌で嫌いなのだ。
だが先端恐怖症とは自認してはいない。
まぁ、注射は嫌いである。

そんな訳でオリヴィアは嬉々として木箱に入っているピアスを眺めていたが、やがて付けてみたいと言い出した。
綺麗とか高そうとか言っていたが、興味が勝ったようである。

この豪華な部屋には全身の姿見があるので、ピアスを付けたら直ぐに確認出来ると言う利点もあるから便利と言われれば便利だ。

「どれを付けてみたいって?」

「コレと…コレだな」

1つはバーベルタイプで、もう1つはシャフトがリング状でボールのキャッチを付けるタイプだった。
色はピンクゴールドのような感じだが、まさか本物のピンクゴールドなのだろうか?
こればかりはマスタングに確認しないと分からない。

「因みにだけど、コレはどう付けるんだ?」

オリヴィアが手に取ったのは、バーベルタイプのキャッチを装着する前にセットする別のパーツだった。

「あのデカい牙を付けてたみたいに」

「あー、よく分かった。でも絶対コッチの方が洒落てるし、付けけて気分も上がりそう」

テーブルの上に新品のタオルを置いたオリヴィアは、タオルの上でピアスを置いて身に付けた時のイメージをしている。

「バラバラだと見た目が微妙かなぁ?全部一緒の方が良いけど…」

完全に自分の世界に入り込んでいるみたいである。
イズミはテーブルに置かれた腕時計を手に取ると、紫色に点滅しているインデックスを確認する。

点滅しているインデックスは6つ、このままキープしておくか今の内に手動で呪い返しを発動してしまうべきか悩みどころだ。

「そうだオリヴィアさん、悪趣味貴族に仕返しはしたいかい?」

「勿論したいけど…もうあの男の事は思い出したくも無いから、何処かで勝手に酷い目に遭ってればそれで良いと思ってる」

「そうか…酷い目にくらいは遭うかもな」

イズミは腕時計の竜頭を操作して手動での呪い返しを実行する。
出来れば女から死なない程度に様々な物を搾り取られたり、修羅場等に巻き込まれてしまえば良いとか考えながら呪い返しの操作を完了させた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...