異世界無宿

ゆきねる

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第二十七章 サンダーブレード作戦

第五百六十一話 作戦発動!

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「…マスター、目的地に接近しました。高速移動モードをオフにし、地上へ降下します」

「やっとか」

マスタングは敵拠点の10km程手前で高速移動モードを切ると、徐々に地上まで降下してイズミの戦闘準備の時間を作る。
イズミはマスタングから降りて小雨の降る中で用を足してから、戦闘用の装備一式をトランクに並べ順番に装着してゆく。

念の為に全ての武装に初弾が装填されている事を確かめ、セイフティをかけられる武器は全部かけておく。
流石に自分の指がセイフティと言える様なプロフェッショナルではないのだ。
更に4連装ロケットランチャーも事前に組み立てておき、そのままショルダーバッグに収納しておいた。
戦場のど真ん中で説明書を読みながら組み立てる、なんて事はしたくないし恐らく出来ないからだ。

「マスター。バックサイドに収納しているリボルバーですが、6発全て炸裂弾になっております」

「非常用のシングルアクション式リボルバー…だったな。威力は?」

「貫通力は44マグナム弾と同等、炸裂力は人間の頭部を完全に粉砕させ頭蓋骨すら粉々にします」

「正に一撃必殺の近距離武器だな。狙いは胸部でも良いよな?」

「当然です。人間の頭部が入る程の風穴程度でしたら、余裕で開けられます」

「それは…頼りになりそうだ」

そんな攻撃を食らったらどうなるか、考えるだけでも恐ろしいが自分が食らう訳では無いので思考の隅っこへと追いやった。

「ベリア、聞こえるか?」

「…あぁ、聞こえてるぞ。もう近くに着いたのか」

イズミはベリアに魔法通信を繋げると、左手に付けている腕時計で現在時刻を確認する。
10時40分を過ぎる所だった。

「敵拠点から10km程手前で武装の準備と最終確認を済ませた所だ」

「じゃあソッチに転移させて貰うから、ちょっと待っててくれ」

ベリアとの魔法通信が切れると程なくして、フラウリアと一緒に転移魔法でマスタングの後部座席に姿を見せた。

「フラウリアさん、ありがとうございます」

「我々が協力出来るのは原則としては、ここまでとなります…緊急時の連絡や相談は例外ですので、何か有りましたら遠慮なく魔法通信を繋げて下さいね」

「分かりました。恩に着ます」

フラウリアはイズミの格好を見て本気だと思ったのが、下手な長居は不要と判断して直ぐに転移魔法で帰って行った。

「にしてもイズミ…随分な装備じゃないか?」

「魔法が使えない俺としては、コレでも不安なのだが」

「そんなに不安なら今度アーリアさんに頼んで、小物類に小型のアイテムボックス機能を付与してもらうのも有りだと思うけど」

「そんなに数があっても管理が面倒だ」

「備えは多いに越したことは無いし、それが旅の荷物や重荷にならない範囲なら、寧ろもっと便利になるだろ」

「それはそうだけれども。取り敢えず今日の戦闘が終わってから、改めて考えてみるとしよう」

帝国兵の拠点のある方へ顔を向けると灰色を通り越して黒い雲が空を覆い尽くしており、雷鳴も聞こえてくる程に荒れた天気になっているようである。

「…いた、イズミだ」

イズミとベリアがマスタングに乗り込もうとした時、マスタングのボンネット上に雨の精霊であるアルハが姿を見せた。
お供にケルピーを2匹連れてきており、ベリアの足元にて軽くじゃれついている。

「アルハさん、ご無沙汰しております」

「大雨と雷は仕掛けといた。後は頑張って」

「ありがとうございます」

「うんと派手に暴れた方が良いと思う。女神様はとてもご機嫌斜め、さっきからずっとブラックドラゴンと話し込んでる」

「それは…下手をすると、ブラックドラゴンの行動予定が前倒しになる可能性も?」

「有り得る」

早めに作戦を決行する事にしておいて正解だったのかは現時点で判断は出来ないが、ブラックドラゴンが暴れた場合の二次被害が自分達の戦闘のそれとは比較にならないレベルなので、今日の戦闘でブラックドラゴン側も牙を研ぐのを止めてくれれば御の字だ。

「…撫で心地がヤベェ」

戦闘前だがケルピーにじゃれつかれていたベリアが軽く身体を撫でてあげていると、その撫で心地の良さに思わず声が出ていた。

「毛艶も良くなって、魔力の流れも良くなった。最近はグリフォンも食べに来てるよ」

「そんなに来ていると、リンゴも無くなってしまうのでは?」

「問題無い、ちゃんと計画的に生産してる。そもそもリンゴはグリフォンの主食ではないから、そんなに量もいらない」

精霊の領域では人間みたいに無計画な生産はしていないようなので、無駄な心配なのだろう。

「じゃ、私は帰るね…頑張って」

「ありがとうございました」

アルハがケルピーを連れて姿を消すのを見送った2人は、マスタングに乗り込むと少しだけ移動を開始する。
具体的には此方の初動であるミサイル攻撃後に、スムーズに突入が出来る絶妙な距離をマスタングに算出してもらった地点だ。

大雨がマスタングのルーフにぶつかる音も大きく心地良いとは言えない程であり、雷の音も響き渡り正しく絵に描いた様な悪天候である。

「マスタング、ミサイル攻撃の準備を頼む」

「かしこまりました…準備完了です」

「最終確認だが、帝国兵の拠点近辺に第三者は居るか?」

「…確認完了しました。第三者の反応はありません」

「それを聞けて安心したよ」

モニターで確認するとマスタングのトランク側が大きく姿を変えており、4連装ミサイルが2門実体化されているようだ。
リアガラス部分から少しだけ確認出来るが、もう後方を目視確認は出来ないまでにミサイル発射機が陣取っているのが分かった。
車外から見たらこのミサイル発射機の大きさは、マスタングの車体自体よりも大きいのではないかと思えてしまうが、実際に見てはいないので不明である。

「攻撃開始します」

マスタングがそう宣言すると同時にミサイル発射機から連続で何発も発射され、帝国兵の拠点目掛けて飛んでゆく。

「第一波として20発撃ち込みました、弾着のタイミングは雷鳴とほぼ同時になります。3分後に第二波として20発撃ち込みましたら、突入しましょう」

モニターに表示された敵拠点のマップ上にあった無数の魔法反応が、ミサイルの弾着アナウンスと共に一斉に消えた。
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