異世界無宿

ゆきねる

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第二十七章 サンダーブレード作戦

第五百六十三話 完成したキメラ兵士

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ベリアから魔法通信が来て馬車の確保が成功したとの報告あった。

「どうだった?」

「乗ってた3人は片付けた。だけどさ、大した荷物も積んでないんだよ」

「少しはあったのか」

「ほとんど空だ。怪しかったからマスタングにスキャンしてもらってたら自爆したよ」

「自爆?」

目に見える形で逃走させておいて、捕まったら自爆する。
これはダミー、ブラフの可能性がある。

「ベリア、マスタング、直ぐに戻って来てくれ!何か裏がありそう…だ…」

イズミは急いで戻ってくるように頼んでいると、イズミに向けて放たれた魔法攻撃の影響でイヤリングが外れてしまい、強制的に魔法通信が切断されてしまった。

咄嗟にアサルトライフルで反撃をしてみたが、命中はせず物陰に隠れられてしまう。

「…ちょいとマズい展開か?」

素早くアサルトライフルの弾倉を…残り2個になる…交換すると、メガネに表示される魔法反応から敵の位置を特定してゆく。

敵が先手を打って攻撃を仕掛けて来たが、アサルトライフルの連射を喰らい地面に倒れ込む。
まだ魔法反応が消えないので確実に始末をすべく銃を構えて接近すると、敵は急に起き上がってイズミの方へ顔を向けた。

「…マジかよ」

目の前に立つ敵は甲冑も着ておらず剣や盾も装備していない、見る限り徒手空拳である。
イズミは反射的にアサルトライフルを胸部目掛けて3発撃ち込んだが、敵は倒れても直ぐに損傷箇所が治癒するのか再び立ち上がったのだ。

そんな敵がゆっくりとイズミに近付いて来た時、その姿がハッキリと分かった。
この敵は今までに相手をして来たような歪な変化では無い、完全に適合したかのような姿だった。

イズミはこの敵から距離を取るべく、後退りしながらアサルトライフルを弾切れになるまで撃ち込んだが、今回は片膝をつく程度であり直ぐに損傷箇所は治癒してしまった。

敵兵は少し頭を回すと突進を仕掛け来たので、イズミはどうにか避けて体勢を整える。
アサルトライフルは仕舞いフルオートショットガンに切り替えると、敵兵の足を集中的に撃ってミンチにしてやった。

敵兵は地面に倒れ込んだが、10秒と経たずに足が再生されてゆく。
再生と言う表現より、新たな足が生えてきたと言った方がより近い表現かもしれない。

「どうなってやがる?」

イズミはショットガンで立ち上がったばかりの敵兵の頭を吹き飛ばすと、駆け足で距離を取ってマスタングが戻ってくるのを待つ。

「魔法反応が消えない…マスタング、そっちはどうだ?」

「マスター。此方にもマスターが現在戦闘中の敵兵と同等の兵士が現れまして、ベリア様と共闘しております。到着には少し時間がかかる可能性があります」

近接戦闘になるとマスタングからの支援攻撃は頼めない、ミサイル攻撃を至近距離で食らったら自分の身も危険だからだ。
そしてあの敵兵は武器を持っていない事から察するに、近接戦闘…特に至近距離での格闘タイプの可能性が高い。

そんな事を考えていると敵兵は頭部が無い状態のまま立ち上がり、紫色の光を発すると共に頭部が再生していった。

「…そりゃ無いだろ、バケモンが過ぎるぜ」

再生が終わった敵兵は獣人並みの跳躍力でイズミに接近し、地面に拳を叩き込むと小さなクレーターの様な跡が出来ている。
次に来た飛び蹴りをイズミが避けると、蹴りが衝突したバリケードが一撃で粉砕した。
凄まじいエネルギーである。

イズミはフルオートショットガンを収納すると、グレネードランチャーを取り出し敵兵の胴体へ狙いを付けて撃ち込んだが、弾を右手で防ぐように構えられたのと同時に爆発した。

爆煙の中から現れた敵兵は、まるで自分に見せつけるかのように右手を再生させた。

「…良い気分だ。全身に力が漲って来るのが分かる」

敵兵はイズミに向けて言葉を発した。

「バケモノになってそれか?冗談キツイぜ」

「これこそ選ばれし者の姿だ…見ろ、この出来損ないや失敗作共を」

敵兵は近くに転がっていた兵士の骸を掴み上げると、ちぐはぐな変化をした身体をイズミに見せつけてから遠くへ投げ捨てた。

「選ばれなかった者達の末路は、常に醜いものだ。これは世の理でもある、お前もそう思うだろう?」

「知らんな。俺が知ってる世の理で近いのは、美人とイケメン以外には世知辛い世の中って事くらいだ」

「…イケメン?」

「美男子とか美青年とかの事さ…何を説明してるんだ俺は」

全く話がかみ合っているように思えないが、この状況下でも敵と言葉を投げ交わす事をする余裕が何とか残っているようだ。

「この力は素晴らしい…人間族の新たな可能性、いや神々が帝国にお与えになられた奇跡だ。脆弱な肉体からの解放!魔族と引けを取らない再生能力!獣人など目でもない身体能力!正しく新たなる人間族へと至る道標である」

「考え過ぎだ。禁忌の薬を飲んで強制的に変化したってだけの、出鱈目キメラ人間だ。せめて頭が吹き飛んだら死んでおこうぜ」

イズミの言葉を聞いた敵兵は左手から紫色の火球を出すと、ノーモーションでイズミに投げつけた。
そのスピードはプロ野球選手の豪速球よりも遥かに速く、イズミが身構えるよりも先に腕時計の魔法返しで吸収されていた程だ。

「流石に避ける術ありか…大口を叩くだけの事はある」

「…新たな人間族の姿ってより、人間族を卒業したキメラ族だな」

イズミは敵兵の姿を見ていて思ったのは、特撮作品に出て来そうな見た目をしていると言う事だった。
改造人間とか怪人とか未確認生命体みたいな、その手の存在として描かれるような見た目をしているのだ。

少しだけスッキリしたが、今はそれどころではない。
自分の武器が通用しない敵が、目の前にいるのだから。
ベリアの事も心配だが、イヤリングが外れているので魔法通信も繋げない。
マスタングが一緒なので大丈夫だと思いたい。

「ぬかせ。あの薬の存在を知っているとなると、残念だが生かしてはおけぬ」

「キメラ兵士相手に一対一か、分が悪いな」

敵兵改めキメラ兵士が戦闘態勢に入ると、大振りな攻撃を連続で仕掛けて来る。
イズミは2丁拳銃で応戦しつつ何とか避けはするものの、中々に効果的な攻撃が仕掛けられず防戦気味になる。
何とかこの場を耐え凌ぎ、マスタングとベリアが戻って来るまで戦闘を続ける他あるまい。
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