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第二十八章 梅雨が明けるまで
第五百七十六話 買い物と疑惑の目
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小雨の降るヒュミトールの大通りは人々の行き交いは控えめになっており、近くの馬車置き場にマスタングを駐車出来た。
オリヴィア向けのベッド等は商人ギルドに行ったら数分で話がまとまってしまい、今は旅路用の服を見てもらっているところだ。
オリヴィアは冒険者登録をしていないので装備関係はそこまで重装にはならないのだが、中々に良いスタイルなのでどれを着ても様になっているのが羨ましい。
「冒険者じゃないなら、身体の重要な部分を守るプロテクターだけでも良いと思うよ」
「普段着の上から付けるのがあれば」
「あるけど、サイズは要調整だね」
店員とオリヴィアが相談をしている隣で、イズミは気になる服を見つけた。
黒い魔物の革を使った、レインコートのような服だった。
話もまとまってきた頃合いで、軽く聞いてみる。
「オリー、あの服なんてどうだ?」
「え…悪くは無いけど、いつ着るのか分からないよ」
「普段着のみでは肌寒い時とか、雨に降られてる時とかかな」
「革服は雨に弱いんじゃ」
そんな話を聞いていた店員が、レインコートを手に取って2人の前に持って来た。
「この服に使われてる革でしたから雨にも強いですよ、乾かす時には日陰干し推奨ですが。他にもあるのですが…ご覧になります?」
店員は何故か語気が控えめになっているが、気にはなるので一応持って来てもらう事にした。
「これは店長が遠方から来た商人から話を聞いた、ある部族の衣装を言葉だけの情報で作った…一体服です」
それは平たく言えばツナギ、魔物の革を使ったレザースーツみないな服だった。
この世界にはジッパーはまだ存在しておらず、魔物の角や牙を加工したボタンで締めるタイプのレザースーツだ。
「店員さん。コレは売れてるのかい?」
「いいえ全く。兎に角、着るのも脱ぐのも大変で。身体のラインがくっきり見えてしまいますし、とても時間がかかります。試作品を最初に着込んだ際は1人で10分は必要でした」
「それは、厳しいね」
「かなり改良したのですが、それでも手足をスムーズに着脱するにはオイルが必須でして…そのオイルも安いのでは革を痛めるので妥協も出来ず」
「お花摘みは?」
「…一度全て脱ぐ必要があります、その際も10分は脱ぐのにかかると思って頂ければ。慣れれば5分程度で脱げます」
「それでも実用的な服装じゃないね。この服の下には何か履く想定なのかい?」
「そうしますと、濡れた下着がとても不快なまま生活する事になりますね」
店員もオリヴィアもレザースーツの使い勝手の悪さと扱いの難しさに閉口しているが、イズミとしては似合いそうだとは思っていた。
そのままでは日常生活に支障しか無いが、マスタングにカスタムを頼めば多少はマシになりそうな気がする。
「…もしかしてアンタ、この服が好みなのかい?」
「オリーに似合うとは思ってる」
「身体のラインが丸わかりの服だけど…まさか、そう言う趣味があるとか?」
「趣味…趣味?なんか違うような」
オリヴィアから疑うような視線を向けられたイズミだったが、自分の趣味なのかを自問自答するが答えは出て来ない。
「分割した試作品もあります」
店員が他に持って来たのは、ジャケットとパンツが別々になっている服だった。
まだこの上下セットの方が楽そうではある。
水着だったりノースリーブな服は無いようだ。
「これはこれで、良い感じに見えるけど」
「アンタは革の服が好きなんだね」
「…かもしれん。だが、オリーが着てるならって条件付きだ。着るなら買うぞ?」
「ははぁ…そう言う事ね」
オリヴィアは何かに納得したような表情をすると、店員に採寸を依頼して革服の調整を始める。
「魔物の革は数種類選べますが」
「理想を贅沢に言うなら…雨風に強くて、蒸れすぎず、メンテナンス性の良いのがあれば」
「魔物革ならどれも雨風とメンテナンスは楽ですよ。蒸れすぎないとなりますと…高級にはなりますが、ライラタウロスの革が一番です」
店員の説明では兎に角気性の荒い牛型の魔物であり、一度暴れだしたら1週間は手に負えない狂暴な魔物でAランク冒険者でも討伐が困難らしい。
その為、討伐が出来ても革製品に使える部位が少なくなりがちで、衣服に使えるような程度の良い革は非常に希少なのだという。
革を指定すると価格は跳ね上がるが、ブラッドバッファロー位の革であれば上下一体型でも銀貨で70枚程だそうだ。
ライラタウロスの革だと。
「一体型は一着で金貨30枚になります」
「え、高!?」
店員から聞いた価格に驚くオリヴィアだったが、イズミは特に気にする素振りもせずに話を進める。
「では一体型を2着、上下別々のタイプをそれぞれ2着でお願いしよう」
「ライラタウロスの革にもお色があります。黒と赤味がかった茶色の2色で、価格は同じとなります」
店員が持って来た革の切れ端を確認するが、赤味がかったとは言え茶色の方が強い色合いだった。
「そうだな…上下一体型は2着とも黒が良い、別々のタイプは黒と茶色をそれぞれ1着ずつにしよう。それとメンテナンス用のオイルと、着る時に必要なオイルも用意して欲しい」
「かしこまりました。そうなりますと、衣服の合計が金貨120枚、メンテナンス用のオイルが一瓶で銀貨10枚、着る時用のオイルが一瓶で銀貨30枚です」
「オイルに使用期限は?」
「そうですね…メンテナンス用は約2年、着る時用のオイルは約1年です。身体に塗る関係で、着る頻度にもよりますが毎日着るようでしたら1本辺り約半月で使い切るかと」
店員が持って来たオイルは500mlは入らなさそうな瓶に入っている。
「此方のオイルには革の保護も考慮した商品でして、身体に塗る際は勿体無いと渋らずにしっかりと使って頂くのが良いです」
「内側は着る度にメンテナンスもするようなイメージなんですね。外側のメンテナンスは」
「脱いだ際に汚れを落とすのは勿論ですが、オイルを使うのは月に一度を推奨しております。塗ったら1日は寝かせて置くのが理想です」
「かなり細かいですね」
「長持ちさせるには、必要な手間というものです。魔物の革は基本的に頑丈ですから、丁寧にメンテナンスをすれば10年後でもちゃんと使えます」
説明を聞き終えたイズミは、革の服と旅用の衣服を込み込みで支払いを済ませた。
早速店の奥で作業をすれば明後日の昼間には仕上がると言う事で、明後日の昼過ぎに受け取りをすべく記憶に留めておく。
明日は光の協会にて料理の実習、明後日は服の受け取りと夜に酒盛りだ。
まだ身体を休めるのは難しいようだと、イズミは小さくため息をつくのだった。
オリヴィア向けのベッド等は商人ギルドに行ったら数分で話がまとまってしまい、今は旅路用の服を見てもらっているところだ。
オリヴィアは冒険者登録をしていないので装備関係はそこまで重装にはならないのだが、中々に良いスタイルなのでどれを着ても様になっているのが羨ましい。
「冒険者じゃないなら、身体の重要な部分を守るプロテクターだけでも良いと思うよ」
「普段着の上から付けるのがあれば」
「あるけど、サイズは要調整だね」
店員とオリヴィアが相談をしている隣で、イズミは気になる服を見つけた。
黒い魔物の革を使った、レインコートのような服だった。
話もまとまってきた頃合いで、軽く聞いてみる。
「オリー、あの服なんてどうだ?」
「え…悪くは無いけど、いつ着るのか分からないよ」
「普段着のみでは肌寒い時とか、雨に降られてる時とかかな」
「革服は雨に弱いんじゃ」
そんな話を聞いていた店員が、レインコートを手に取って2人の前に持って来た。
「この服に使われてる革でしたから雨にも強いですよ、乾かす時には日陰干し推奨ですが。他にもあるのですが…ご覧になります?」
店員は何故か語気が控えめになっているが、気にはなるので一応持って来てもらう事にした。
「これは店長が遠方から来た商人から話を聞いた、ある部族の衣装を言葉だけの情報で作った…一体服です」
それは平たく言えばツナギ、魔物の革を使ったレザースーツみないな服だった。
この世界にはジッパーはまだ存在しておらず、魔物の角や牙を加工したボタンで締めるタイプのレザースーツだ。
「店員さん。コレは売れてるのかい?」
「いいえ全く。兎に角、着るのも脱ぐのも大変で。身体のラインがくっきり見えてしまいますし、とても時間がかかります。試作品を最初に着込んだ際は1人で10分は必要でした」
「それは、厳しいね」
「かなり改良したのですが、それでも手足をスムーズに着脱するにはオイルが必須でして…そのオイルも安いのでは革を痛めるので妥協も出来ず」
「お花摘みは?」
「…一度全て脱ぐ必要があります、その際も10分は脱ぐのにかかると思って頂ければ。慣れれば5分程度で脱げます」
「それでも実用的な服装じゃないね。この服の下には何か履く想定なのかい?」
「そうしますと、濡れた下着がとても不快なまま生活する事になりますね」
店員もオリヴィアもレザースーツの使い勝手の悪さと扱いの難しさに閉口しているが、イズミとしては似合いそうだとは思っていた。
そのままでは日常生活に支障しか無いが、マスタングにカスタムを頼めば多少はマシになりそうな気がする。
「…もしかしてアンタ、この服が好みなのかい?」
「オリーに似合うとは思ってる」
「身体のラインが丸わかりの服だけど…まさか、そう言う趣味があるとか?」
「趣味…趣味?なんか違うような」
オリヴィアから疑うような視線を向けられたイズミだったが、自分の趣味なのかを自問自答するが答えは出て来ない。
「分割した試作品もあります」
店員が他に持って来たのは、ジャケットとパンツが別々になっている服だった。
まだこの上下セットの方が楽そうではある。
水着だったりノースリーブな服は無いようだ。
「これはこれで、良い感じに見えるけど」
「アンタは革の服が好きなんだね」
「…かもしれん。だが、オリーが着てるならって条件付きだ。着るなら買うぞ?」
「ははぁ…そう言う事ね」
オリヴィアは何かに納得したような表情をすると、店員に採寸を依頼して革服の調整を始める。
「魔物の革は数種類選べますが」
「理想を贅沢に言うなら…雨風に強くて、蒸れすぎず、メンテナンス性の良いのがあれば」
「魔物革ならどれも雨風とメンテナンスは楽ですよ。蒸れすぎないとなりますと…高級にはなりますが、ライラタウロスの革が一番です」
店員の説明では兎に角気性の荒い牛型の魔物であり、一度暴れだしたら1週間は手に負えない狂暴な魔物でAランク冒険者でも討伐が困難らしい。
その為、討伐が出来ても革製品に使える部位が少なくなりがちで、衣服に使えるような程度の良い革は非常に希少なのだという。
革を指定すると価格は跳ね上がるが、ブラッドバッファロー位の革であれば上下一体型でも銀貨で70枚程だそうだ。
ライラタウロスの革だと。
「一体型は一着で金貨30枚になります」
「え、高!?」
店員から聞いた価格に驚くオリヴィアだったが、イズミは特に気にする素振りもせずに話を進める。
「では一体型を2着、上下別々のタイプをそれぞれ2着でお願いしよう」
「ライラタウロスの革にもお色があります。黒と赤味がかった茶色の2色で、価格は同じとなります」
店員が持って来た革の切れ端を確認するが、赤味がかったとは言え茶色の方が強い色合いだった。
「そうだな…上下一体型は2着とも黒が良い、別々のタイプは黒と茶色をそれぞれ1着ずつにしよう。それとメンテナンス用のオイルと、着る時に必要なオイルも用意して欲しい」
「かしこまりました。そうなりますと、衣服の合計が金貨120枚、メンテナンス用のオイルが一瓶で銀貨10枚、着る時用のオイルが一瓶で銀貨30枚です」
「オイルに使用期限は?」
「そうですね…メンテナンス用は約2年、着る時用のオイルは約1年です。身体に塗る関係で、着る頻度にもよりますが毎日着るようでしたら1本辺り約半月で使い切るかと」
店員が持って来たオイルは500mlは入らなさそうな瓶に入っている。
「此方のオイルには革の保護も考慮した商品でして、身体に塗る際は勿体無いと渋らずにしっかりと使って頂くのが良いです」
「内側は着る度にメンテナンスもするようなイメージなんですね。外側のメンテナンスは」
「脱いだ際に汚れを落とすのは勿論ですが、オイルを使うのは月に一度を推奨しております。塗ったら1日は寝かせて置くのが理想です」
「かなり細かいですね」
「長持ちさせるには、必要な手間というものです。魔物の革は基本的に頑丈ですから、丁寧にメンテナンスをすれば10年後でもちゃんと使えます」
説明を聞き終えたイズミは、革の服と旅用の衣服を込み込みで支払いを済ませた。
早速店の奥で作業をすれば明後日の昼間には仕上がると言う事で、明後日の昼過ぎに受け取りをすべく記憶に留めておく。
明日は光の協会にて料理の実習、明後日は服の受け取りと夜に酒盛りだ。
まだ身体を休めるのは難しいようだと、イズミは小さくため息をつくのだった。
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※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
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