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第二十八章 梅雨が明けるまで
第五百八十二話 魔王、異世界の映像作品にハマる
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酒盛りが盛り上がって来ると、何故か話題はイズミの居た世界の事になった。
発端は前魔王の発言からだ。
「イズミよ。お主の居た世界の娯楽は、この世界にもありそうか?」
「娯楽ですか…テレビもネットも無いですから、あっても書物とかになりますかね」
「テレビとは何だ?」
「説明が難しいですが、劇とかを何処でも観れるようにした機械…ですかね」
「そんな機械なるものがあるのか。して、どんな劇なのだ?私は異世界の劇に興味がある」
現職の魔王はジントニックを飲み終え、2杯目の酒を注文してからイズミに話しかける。
「本当に色々ですよ。種類が豊富で」
「イズミは何が好きだったのだ」
「そうですね…アクションとか、特撮ですかね?」
「それは、今観れないのか?」
現職の魔王はその眼を輝かせながらイズミに詰め寄る。
その顔は若き日のアラン・ドロンのようであり、真剣な眼差しで瞳を覗かれるとイズミでもドキリとしてしまう。
「今ですか」
返答に困っていた所で、マスタングから魔法通信が入ってきた。
「マスター。メガネをテーブルに置いて下さい」
「メガネを?」
ショルダーバッグからメガネを取り出したイズミは、テーブルにそっと置いてマスタングからの動きを待つ。
程なくしてメガネから光が放たれ、壁に映像が表示された。
「これは、父上の乗り物ソックリだ」
「我の記憶とも然程違いは無いな」
「選りによってコレか」
それはゴースト・ライダーだった。
ハーレーが特別仕様に変形するシーンが映し出されたのだ。
高層マンションを垂直方向に走行し、水中に落下したと思えば浮かんで来て水上走行をするハーレーの姿に、前魔王は満足そうに映像を眺めている。
「この姿こそ、我の記憶にあるハーレーだ」
「それはそれで違うと思いますがねぇ」
「コレの他には、どんな劇があるのだ?」
「他にですか?」
マスタングがテレビのチャンネルを変えるように作品を流していると、ある作品でアラン・ドロンな魔王の動きが止まった。
「この劇は何と言う名前なのだ?」
「これは…」
イズミは流れている映像を確かめる。
男はバイクに乗って襲ってきた敵を拳銃で倒すと、バイクを奪って爆走を始める。勿論ノーヘルである。
銃撃を避けつつ周囲の状況を瞬時に判断して、追いかけて来る敵の車両を倒してゆく。
こんなスタントをする俳優は世界でも極少数、映像の男はその代表格と言っても良いだろう。
ホルスターから9mmのオートマチックを抜くと男は車へ向けて発砲すると、その様子がスローモーションで映し出され、車は派手に爆発した。
「ミッションインポッシブルで、シリーズの二作目ですね」
「意味は」
「直訳すると不可能な任務で、意味合いとしては…極めて困難で成功の見込みが殆ど無い任務、です」
「ふむ、勝ち目の無い戦闘のようなものか」
「でもどうにかなるんですよ、これが」
食い入るように映像を見ているので、イズミは一旦席から離れて酒盛りの対応に戻る。
あの勢いだとバイクを所望されそうな気もするが、その時はマスタングと相談の上で対価を決めて交渉する事にしよう。
酒盛りも終わりに近付いてくると、男神様も精霊達もメーレルがカクテルを作っているカウンターに近いテーブルに、お礼代わりの品々を置いてから去ってゆく。
小振りながら尋常ではない量の魔力が籠った魔石、何処で見つけたのか皆目見当も付かない薬草、滑らかに加工されたコマのような金属等々。
時間のある時に鑑定をしてもらい、皆で山分けにする作業が必要そうである。
「イズミよ、この作品は何だ?」
「仮面ライダーブラックですね。変身をしていますが、劇ですので人が特別に作られた衣装を身に纏って演じています」
「そうなのか…この変身なるポーズは、何か意味合いがあるのだな」
「子供向けの劇なのでこれから変身をする合図みたいになってますが、あのポーズと変身を合図にしてベルトが起動して変身すると考えて頂ければ」
「そういった考え方であれば、私でも魔法陣を組めば出来そうだな。しかし、あの乗り物が…」
やはり現職の魔王も映像作品にハマりかけているようだ。
そしてバイクにも興味を持っている。
「同じ姿では出せませんが、私のアーティファクトで実体化が可能なモデルをピックアップしましょうか?」
「なんと!?しかし酒盛りの場を設けて貰っておきながら、そこまでして頂くのも」
「お気になさらず」
イズミがマスタングに魔法通信で状況を伝えると、メガネで表示されていた映像が一時停止して数台のバイクが映し出された。
ハーレーダビッドソン、トライアンフ、ドゥカティ、そして日本メーカーのホンダとカワサキのバイクだ。
「どういった乗り方を想定しているかで、選ぶバイクのジャンルが変わります」
「私は、そうだな…私も父上のように妻と2人で乗って走りたいな。それと、出来るだけ左右対称に近いのが好みだ」
「左右対称に近いとなると、このマフラーと言うパーツが片方出しだと微妙ですかね」
イズミがバイクのマフラー部分を指さして確認してもらうと、魔王は少し考えてから首を縦に振った。
「そうだな。この2つ出ているのか、中央で1つだけになっているのが良い」
「2人乗りをするのであれば、センターアップは熱を持ちやすいので避けた方が良いかもしれません」
イズミの説明を聞いていた前魔王が、補足で説明を入れてくれた。
「流石に動力源を魔力にした所で、多少の熱は発生する。2本出しか4本出しマフラーの方が良いだろう」
「タイヤは2つ、マフラーも2つ、乗るのは1人から2人、エンジンは1つで2気筒か4気筒の大型なら…トライアンフのT120が良いかと。4気筒なら別のモデルになりますが、どうします?」
現職の魔王は既にフルカウルバイクは選択肢から外れているようで、ピックアップされている数台のバイクを食い入るように見つめている。
「あとは走り方ですね。スポーツ走行つまり、兎に角速さを求めるのか。はたまた、まったりと流すように走るのか」
「速く移動するならば転移魔法や瞬間移動で済む。ならば流すように走る方が良いな…このバイクが良い」
魔王が選んだのは、イズミがおすすめしたトライアンフのT120だった。
若き日のアラン・ドロンな見た目をしている魔王なので、トライアンフに跨った時の姿は圧巻だと思ったてはいたが、そのようになりそうだ。
「では魔王様。大変恐縮ではございますが、私のアーティファクトが居る馬車置き場まで来て頂きたく」
「うむ」
イズミはメーレル達に一声かけてから馬車置き場に向かうと、魔王は瞬間移動でマスタングの隣に立っていた。
「これがイズミのアーティファクトか」
「初めまして、マスタングと申します」
「…イズミよ、美しいアーティファクトだな」
「はい。最高の相棒ですよ」
魔王がマスタングのルーフを軽く撫でると、トランクが開いてイズミに飲ませるドリンクが出てきた。
「マスター。此方をお飲み下さい」
「そうなると思ってたよ」
「魔王様。バイクの実体化及び所有者登録の為に、魔王様の魔力を頂きたく」
「良かろう」
「くぅ~、まっずい!」
本当に美味しくないドリンクを一気に飲んだイズミと、特に気になる様子も無い魔王がマスタングのルーフに手を置くと、バイクの実体化が始まった。
発端は前魔王の発言からだ。
「イズミよ。お主の居た世界の娯楽は、この世界にもありそうか?」
「娯楽ですか…テレビもネットも無いですから、あっても書物とかになりますかね」
「テレビとは何だ?」
「説明が難しいですが、劇とかを何処でも観れるようにした機械…ですかね」
「そんな機械なるものがあるのか。して、どんな劇なのだ?私は異世界の劇に興味がある」
現職の魔王はジントニックを飲み終え、2杯目の酒を注文してからイズミに話しかける。
「本当に色々ですよ。種類が豊富で」
「イズミは何が好きだったのだ」
「そうですね…アクションとか、特撮ですかね?」
「それは、今観れないのか?」
現職の魔王はその眼を輝かせながらイズミに詰め寄る。
その顔は若き日のアラン・ドロンのようであり、真剣な眼差しで瞳を覗かれるとイズミでもドキリとしてしまう。
「今ですか」
返答に困っていた所で、マスタングから魔法通信が入ってきた。
「マスター。メガネをテーブルに置いて下さい」
「メガネを?」
ショルダーバッグからメガネを取り出したイズミは、テーブルにそっと置いてマスタングからの動きを待つ。
程なくしてメガネから光が放たれ、壁に映像が表示された。
「これは、父上の乗り物ソックリだ」
「我の記憶とも然程違いは無いな」
「選りによってコレか」
それはゴースト・ライダーだった。
ハーレーが特別仕様に変形するシーンが映し出されたのだ。
高層マンションを垂直方向に走行し、水中に落下したと思えば浮かんで来て水上走行をするハーレーの姿に、前魔王は満足そうに映像を眺めている。
「この姿こそ、我の記憶にあるハーレーだ」
「それはそれで違うと思いますがねぇ」
「コレの他には、どんな劇があるのだ?」
「他にですか?」
マスタングがテレビのチャンネルを変えるように作品を流していると、ある作品でアラン・ドロンな魔王の動きが止まった。
「この劇は何と言う名前なのだ?」
「これは…」
イズミは流れている映像を確かめる。
男はバイクに乗って襲ってきた敵を拳銃で倒すと、バイクを奪って爆走を始める。勿論ノーヘルである。
銃撃を避けつつ周囲の状況を瞬時に判断して、追いかけて来る敵の車両を倒してゆく。
こんなスタントをする俳優は世界でも極少数、映像の男はその代表格と言っても良いだろう。
ホルスターから9mmのオートマチックを抜くと男は車へ向けて発砲すると、その様子がスローモーションで映し出され、車は派手に爆発した。
「ミッションインポッシブルで、シリーズの二作目ですね」
「意味は」
「直訳すると不可能な任務で、意味合いとしては…極めて困難で成功の見込みが殆ど無い任務、です」
「ふむ、勝ち目の無い戦闘のようなものか」
「でもどうにかなるんですよ、これが」
食い入るように映像を見ているので、イズミは一旦席から離れて酒盛りの対応に戻る。
あの勢いだとバイクを所望されそうな気もするが、その時はマスタングと相談の上で対価を決めて交渉する事にしよう。
酒盛りも終わりに近付いてくると、男神様も精霊達もメーレルがカクテルを作っているカウンターに近いテーブルに、お礼代わりの品々を置いてから去ってゆく。
小振りながら尋常ではない量の魔力が籠った魔石、何処で見つけたのか皆目見当も付かない薬草、滑らかに加工されたコマのような金属等々。
時間のある時に鑑定をしてもらい、皆で山分けにする作業が必要そうである。
「イズミよ、この作品は何だ?」
「仮面ライダーブラックですね。変身をしていますが、劇ですので人が特別に作られた衣装を身に纏って演じています」
「そうなのか…この変身なるポーズは、何か意味合いがあるのだな」
「子供向けの劇なのでこれから変身をする合図みたいになってますが、あのポーズと変身を合図にしてベルトが起動して変身すると考えて頂ければ」
「そういった考え方であれば、私でも魔法陣を組めば出来そうだな。しかし、あの乗り物が…」
やはり現職の魔王も映像作品にハマりかけているようだ。
そしてバイクにも興味を持っている。
「同じ姿では出せませんが、私のアーティファクトで実体化が可能なモデルをピックアップしましょうか?」
「なんと!?しかし酒盛りの場を設けて貰っておきながら、そこまでして頂くのも」
「お気になさらず」
イズミがマスタングに魔法通信で状況を伝えると、メガネで表示されていた映像が一時停止して数台のバイクが映し出された。
ハーレーダビッドソン、トライアンフ、ドゥカティ、そして日本メーカーのホンダとカワサキのバイクだ。
「どういった乗り方を想定しているかで、選ぶバイクのジャンルが変わります」
「私は、そうだな…私も父上のように妻と2人で乗って走りたいな。それと、出来るだけ左右対称に近いのが好みだ」
「左右対称に近いとなると、このマフラーと言うパーツが片方出しだと微妙ですかね」
イズミがバイクのマフラー部分を指さして確認してもらうと、魔王は少し考えてから首を縦に振った。
「そうだな。この2つ出ているのか、中央で1つだけになっているのが良い」
「2人乗りをするのであれば、センターアップは熱を持ちやすいので避けた方が良いかもしれません」
イズミの説明を聞いていた前魔王が、補足で説明を入れてくれた。
「流石に動力源を魔力にした所で、多少の熱は発生する。2本出しか4本出しマフラーの方が良いだろう」
「タイヤは2つ、マフラーも2つ、乗るのは1人から2人、エンジンは1つで2気筒か4気筒の大型なら…トライアンフのT120が良いかと。4気筒なら別のモデルになりますが、どうします?」
現職の魔王は既にフルカウルバイクは選択肢から外れているようで、ピックアップされている数台のバイクを食い入るように見つめている。
「あとは走り方ですね。スポーツ走行つまり、兎に角速さを求めるのか。はたまた、まったりと流すように走るのか」
「速く移動するならば転移魔法や瞬間移動で済む。ならば流すように走る方が良いな…このバイクが良い」
魔王が選んだのは、イズミがおすすめしたトライアンフのT120だった。
若き日のアラン・ドロンな見た目をしている魔王なので、トライアンフに跨った時の姿は圧巻だと思ったてはいたが、そのようになりそうだ。
「では魔王様。大変恐縮ではございますが、私のアーティファクトが居る馬車置き場まで来て頂きたく」
「うむ」
イズミはメーレル達に一声かけてから馬車置き場に向かうと、魔王は瞬間移動でマスタングの隣に立っていた。
「これがイズミのアーティファクトか」
「初めまして、マスタングと申します」
「…イズミよ、美しいアーティファクトだな」
「はい。最高の相棒ですよ」
魔王がマスタングのルーフを軽く撫でると、トランクが開いてイズミに飲ませるドリンクが出てきた。
「マスター。此方をお飲み下さい」
「そうなると思ってたよ」
「魔王様。バイクの実体化及び所有者登録の為に、魔王様の魔力を頂きたく」
「良かろう」
「くぅ~、まっずい!」
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