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第二十八章 梅雨が明けるまで
第五百九十話 面倒な展開
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イズミはアヤとベリアをマスタングに乗せて、ガーネディアン公爵の屋敷へと移動をしている。
オリヴィアも連れて行こうとしたのだが、研究大好きなフラウリアに捕まりクリームのテスターをやらされているので居ない。
「前回は馬車で来た訳ですが、今回はどう言われる事やら」
「武器は仕舞ってるし、特に何も言われないだろ」
ベリアは今日明日は冒険者ギルドの仕事も休みのようで、暇だから公爵家からの呼び出しに同席すると言ってマスタングの助手席に座っている。
屋敷の門の前にマスタングを停車し書類を門番に渡して通過すると、敷地内にいた小綺麗な服装を身に纏った初老の男の案内で駐車出来る場所へと移動する。
「馬の不要な馬車とは、不思議な乗り物ですな」
「馬車だと酔ってしまって駄目でして」
イズミは初老の男の言葉に軽く返答をしながら、武器を所持していないかを確かめてから屋敷へと入ってゆく。
魔法で確認をされたが2丁拳銃とベルトのセットは見破られなかったので、イズミはあえて黙ったままにしてい
。
ショルダーバッグは公爵が待つ部屋の前で向かった先で回収され、手ぶらの状態で部屋へと入る。
公爵家の面々が既に準備済みだった。
「御足労感謝する」
「ご無沙汰しております。ご要件は」
イズミは挨拶もそこそこに本題に入るように促す。
「書面に書かれた通り、お主に酒の不正な横流しの疑いがあると報告を受けてな」
「何処からその疑いが出て来たのかを聞きたい所ですが、どうせ調べた情報と一般常識に囚われている思考能力での判断結果でしょう」
イズミは用意された椅子に座ると、持論を述べる。
「大量に酒を購入し、数日後には全て空にしてまた購入してを繰り返している。どう考えても賃貸に住んでいる人数では飲み切れない数にも関わらず、全ての瓶が空になっている事から別の瓶に移し替えているのではないか…みたいな」
「うむ、そんな疑いをお主へ持っている者からの報告ではあるな。大きく動けば何かしら勘繰りたくなるものだ」
「私に監視を付け、色々と嗅ぎ回っているようですから、何かしら思惑の一つや二つはあるのでしょう」
ガーネディアン公爵家の現当主であるグラントが、豪華な装飾の施された椅子に背を預けながらイズミへと視線を向ける。
「儂の考えでは、そんな事はしていないと思っておる。しかしな、していない証拠も無いのだ。だとしたら本人に聞く他あるまい」
「説明が難しいんですよ、これが」
イズミは腕を組みどう説明しようかと考え込んでいると、左腕に付けているバングルの石が光りだした。
「我が代わりに説明してやろう」
突然聞こえたその声に対応しようとしたが時すでに遅く、前魔王様が姿を現したのだった。
「何者だ!?」
グラントが険しい表情をすると同時に隣に置いていた剣に手を伸ばそうとしたが、魔王の魔法で剣が消滅してしまい伸ばした手は空を掴むだけだった。
「我は…そうだな、イズミの良き友人だ」
魔王は椅子やテーブルなど存在しないかのようにすり抜けながら、グラントの近くへと歩きてゆく。
「イズミ、これはマズイんでねぇの?」
「物凄くマズイ気がしてならないが、出て来てしまった以上どうしようもないだろ」
イズミとベリアが小声でやりとりをしている隣で、アヤはニコリと笑みを浮かべたまま椅子に座り様子を伺っている。
「イズミは借りた家に精霊達を招き酒盛りをしていたのだ、お陰で精霊達も活力が漲っておるぞ。お主如きでは精霊の姿も見えぬどころか、声すら聞けぬだろうがな」
魔王はグラントの事など気にする様子も無くイズミの行動について説明をするが、グラントは冷静を装ってみせるが状況を理解しきれてはいないようだ。
「イズミは酒の横流し等という小男のするような悪事はせん。我が保証しよう」
「…イズミの良きご友人とやら。保証をすると申しておいて自らの名を名乗らないのは、頂けませんな」
「魔王が人間如きに名を名乗る訳が無かろうに。もう魔王と呼ばれる期間が長過ぎて、名などとうの昔に忘れてしもうたがな!」
豪快に笑う魔王はグラントの剣を手元に出現させると、鞘から抜いて刀身を確認する。
「手入れは行き届いておるが、この剣ではまともに戦えぬな」
「魔王…だと」
剣を軽く構えた魔王だったが、ほんの僅かに魔力を込めようとした瞬間に派手な音をたてて粉々に砕けてしまった。
「やはり駄目だったか」
「父上、何事ですか?…誰だ貴様は!?」
派手な音を聞きつけたグラントの息子ウィレムが部屋に入って来ると、魔王の姿を確認した瞬間に腰に下げた剣を抜いて構える。
「ほう!我を見て即座に剣を構えるとは、悪くないぞ人間よ。だが、戦う必要は無い。我は友人であるイズミにかけられた疑いを晴らしたいだけなのでな」
ウィレムが魔王へ向けて剣を振り上げようとしたが、またたく間に刀身が風に解けるように消滅してしまい、驚愕の表情でウィレムの動きが止まった。
「うわぁ、話がこじれそうだ」
「あんな風に武器を奪われたら、戦闘どころの話じゃないな」
完全に蚊帳の外気味になっているイズミ達は、どうにか状況を本来の目的に戻すべく声を掛ける。
「皆さん、取り敢えず座って話をしません?」
イズミは警戒を解かない公爵親子にそう話してみるも、目の前に居る魔王と自称する男への本能的な警戒心が判断を鈍らせている。
「しかしイズミよ、魔王と名乗る者が目の前に居るのだぞ?」
グラントからの全うな指摘があったが、そこは何とか説明して納得してもらうしかない。
「前魔王様ですので、多分大丈夫です。落ち着きましょう」
「そうだ。魔王職は息子に継がせたのだ、今の我は好き勝手しておる自由人なのだ。イズミよ、折角来たのだから酒でも飲もうではないか」
あまりにもマイペースな魔王が近くにあった椅子に座ると、自分用のグラスを実体化しテーブルに置く。
「…すみません、何方か私のショルダーバッグを持ってきて頂きたいのですが」
小さくため息をついたイズミがそう告げると、ウィレムが魔王を警戒しながら父であるグラントにアイコンタクトを取り、イズミのショルダーバッグを取りに部屋の外へと出ていった。
オリヴィアも連れて行こうとしたのだが、研究大好きなフラウリアに捕まりクリームのテスターをやらされているので居ない。
「前回は馬車で来た訳ですが、今回はどう言われる事やら」
「武器は仕舞ってるし、特に何も言われないだろ」
ベリアは今日明日は冒険者ギルドの仕事も休みのようで、暇だから公爵家からの呼び出しに同席すると言ってマスタングの助手席に座っている。
屋敷の門の前にマスタングを停車し書類を門番に渡して通過すると、敷地内にいた小綺麗な服装を身に纏った初老の男の案内で駐車出来る場所へと移動する。
「馬の不要な馬車とは、不思議な乗り物ですな」
「馬車だと酔ってしまって駄目でして」
イズミは初老の男の言葉に軽く返答をしながら、武器を所持していないかを確かめてから屋敷へと入ってゆく。
魔法で確認をされたが2丁拳銃とベルトのセットは見破られなかったので、イズミはあえて黙ったままにしてい
。
ショルダーバッグは公爵が待つ部屋の前で向かった先で回収され、手ぶらの状態で部屋へと入る。
公爵家の面々が既に準備済みだった。
「御足労感謝する」
「ご無沙汰しております。ご要件は」
イズミは挨拶もそこそこに本題に入るように促す。
「書面に書かれた通り、お主に酒の不正な横流しの疑いがあると報告を受けてな」
「何処からその疑いが出て来たのかを聞きたい所ですが、どうせ調べた情報と一般常識に囚われている思考能力での判断結果でしょう」
イズミは用意された椅子に座ると、持論を述べる。
「大量に酒を購入し、数日後には全て空にしてまた購入してを繰り返している。どう考えても賃貸に住んでいる人数では飲み切れない数にも関わらず、全ての瓶が空になっている事から別の瓶に移し替えているのではないか…みたいな」
「うむ、そんな疑いをお主へ持っている者からの報告ではあるな。大きく動けば何かしら勘繰りたくなるものだ」
「私に監視を付け、色々と嗅ぎ回っているようですから、何かしら思惑の一つや二つはあるのでしょう」
ガーネディアン公爵家の現当主であるグラントが、豪華な装飾の施された椅子に背を預けながらイズミへと視線を向ける。
「儂の考えでは、そんな事はしていないと思っておる。しかしな、していない証拠も無いのだ。だとしたら本人に聞く他あるまい」
「説明が難しいんですよ、これが」
イズミは腕を組みどう説明しようかと考え込んでいると、左腕に付けているバングルの石が光りだした。
「我が代わりに説明してやろう」
突然聞こえたその声に対応しようとしたが時すでに遅く、前魔王様が姿を現したのだった。
「何者だ!?」
グラントが険しい表情をすると同時に隣に置いていた剣に手を伸ばそうとしたが、魔王の魔法で剣が消滅してしまい伸ばした手は空を掴むだけだった。
「我は…そうだな、イズミの良き友人だ」
魔王は椅子やテーブルなど存在しないかのようにすり抜けながら、グラントの近くへと歩きてゆく。
「イズミ、これはマズイんでねぇの?」
「物凄くマズイ気がしてならないが、出て来てしまった以上どうしようもないだろ」
イズミとベリアが小声でやりとりをしている隣で、アヤはニコリと笑みを浮かべたまま椅子に座り様子を伺っている。
「イズミは借りた家に精霊達を招き酒盛りをしていたのだ、お陰で精霊達も活力が漲っておるぞ。お主如きでは精霊の姿も見えぬどころか、声すら聞けぬだろうがな」
魔王はグラントの事など気にする様子も無くイズミの行動について説明をするが、グラントは冷静を装ってみせるが状況を理解しきれてはいないようだ。
「イズミは酒の横流し等という小男のするような悪事はせん。我が保証しよう」
「…イズミの良きご友人とやら。保証をすると申しておいて自らの名を名乗らないのは、頂けませんな」
「魔王が人間如きに名を名乗る訳が無かろうに。もう魔王と呼ばれる期間が長過ぎて、名などとうの昔に忘れてしもうたがな!」
豪快に笑う魔王はグラントの剣を手元に出現させると、鞘から抜いて刀身を確認する。
「手入れは行き届いておるが、この剣ではまともに戦えぬな」
「魔王…だと」
剣を軽く構えた魔王だったが、ほんの僅かに魔力を込めようとした瞬間に派手な音をたてて粉々に砕けてしまった。
「やはり駄目だったか」
「父上、何事ですか?…誰だ貴様は!?」
派手な音を聞きつけたグラントの息子ウィレムが部屋に入って来ると、魔王の姿を確認した瞬間に腰に下げた剣を抜いて構える。
「ほう!我を見て即座に剣を構えるとは、悪くないぞ人間よ。だが、戦う必要は無い。我は友人であるイズミにかけられた疑いを晴らしたいだけなのでな」
ウィレムが魔王へ向けて剣を振り上げようとしたが、またたく間に刀身が風に解けるように消滅してしまい、驚愕の表情でウィレムの動きが止まった。
「うわぁ、話がこじれそうだ」
「あんな風に武器を奪われたら、戦闘どころの話じゃないな」
完全に蚊帳の外気味になっているイズミ達は、どうにか状況を本来の目的に戻すべく声を掛ける。
「皆さん、取り敢えず座って話をしません?」
イズミは警戒を解かない公爵親子にそう話してみるも、目の前に居る魔王と自称する男への本能的な警戒心が判断を鈍らせている。
「しかしイズミよ、魔王と名乗る者が目の前に居るのだぞ?」
グラントからの全うな指摘があったが、そこは何とか説明して納得してもらうしかない。
「前魔王様ですので、多分大丈夫です。落ち着きましょう」
「そうだ。魔王職は息子に継がせたのだ、今の我は好き勝手しておる自由人なのだ。イズミよ、折角来たのだから酒でも飲もうではないか」
あまりにもマイペースな魔王が近くにあった椅子に座ると、自分用のグラスを実体化しテーブルに置く。
「…すみません、何方か私のショルダーバッグを持ってきて頂きたいのですが」
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※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
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