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第二十八章 梅雨が明けるまで
第五百九十二話 真剣に検討する
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グラテミアの屋敷に戻ったイズミ達はグラント達との会話内容を報告した上で、今後の動きについて相談をしている。
「イズミさんに対してはこの国では迂闊に手を出せませんから、一応は大丈夫ではありますけど…ベリアさんは難しい立ち位置になるわね」
「賓客として扱う、でしたっけ」
「そうです。条件には【如何なる状況になろうとも】と記載してますので、魔王との関係が明るみに出たとしても例外にはなりません。とは言え」
グラテミアは持っていた書類から目を離してイズミ達を見つめる。
「何かしらの牽制や正当な手続きを経ての聴取ならあり得ます。魔王が最後に出現して侵攻して来たのはかなり前の事とは言え、魔王と関係を持つ事に否定的な国や地域の方が多いのが実情です」
「魔王と関係を持っている事実が広まれば…場合によっては国への入国を拒否される可能性も?」
「有り得ます。更に言えば敢えて入国させてから身柄を拘束、拷問にかけて情報を吐かせた上で火刑に処される可能性も」
「それは…気楽な旅どころでは無いですね」
イズミは椅子の背にもたれかかると、天井を見上げながら息を吐く。
「暫くは極秘に扱われるでしょうけど、いつかは明るみになるので覚悟が必要です」
「身を焼かれる覚悟と、身を守る為に戦う覚悟ですね。ベリアとオリヴィアに多大な迷惑を掛ける事も考慮しないと駄目だな」
「アタイは独り身だし家族も皆天命を全うしてるから、迷惑はかからないだろ」
イズミの言葉に反応したベリアだったが、イズミは現状で考えられる懸念事項を列挙した。
「そうか?以前パーティーを組んでた仲間が人質に取られたり、出身地が騎士隊とかに確保されてイズミを殺さないと村民を皆殺しにすると脅される可能性はある」
「そこまでするか?」
「人間ってのは、何をしでかすか分からないから恐ろしいのさ。特に追い詰められてる時とか…旧知の仲の奴から【ベリアがイズミを殺せば、村の皆が助かるんだ。お願いだからイズミを殺してくれ、俺達の子供の命も生まれたばかりの赤ん坊の命もかかってるんだ】とか言われた時に、断れるのかって話さ」
「ぐぬぬ」
ベリアは物凄く険しい表情をして考え込んでしまった。
勿論そんな動きを察知したら自分達も可能な限り対応するが、秘密裏に動く連中の行動を何処まで察知出来るかは未知数だ。
「行動原理ってのは似たようなものだ。何かを守る為、何かを手にする為だ。その【何か】が人や立場や状況によって変わるだけ…魔物や盗賊や帝国兵や魔王から、家族や仲間や国を守る為。魔物や盗賊を討伐して地位や名誉や金銭を得る為」
「何か、ねぇ」
「それが脅かされ、俺を殺せば解放するなんて取り引きをしてたら。かつて一緒に冒険者パーティーを組んでいた仲間が俺と行動を共にしている事が分かったら」
「アタイに近付いて、イズミを殺してくれと頼んで来る?」
「なりふり構っている場合じゃないだろ?愛する家族が人質に取られてると仮定したら、何気ない顔して一緒に飯でもと誘って毒を盛るとかも否定出来ないぞ」
「…そんな事まで考えたら、誰も信用出来なくなっちまう」
「そんな事態にもなりかねない状況なのさ」
「やっぱりあの時、魔王が出て来たのはマズかったのか」
大きなため息をついたベリアだったが、過ぎた事は変わらないので今後の事を考える。
「取り敢えず梅雨明けまではヒュミトールに居よう。明けたらジェヴェドール王国への移動を開始する、当初の予定通りのスケジュールで」
「賃貸はどうします?」
「折角借りたので帰りたい所ですが、1日以上空けたら細工とかされてそうですよね」
疑惑をかけられ、説明をする為に家を空けたのだ。
監視の目もずっとあった事を踏まえると、家を空けている間に侵入して盗聴器みたいな代物を仕込んでいる可能性は否定出来ないし、何らかの証拠を入手する為に家中を物色していてもおかしくはない。
「グラテミアさん、家の中での会話を盗み聞きする魔法とかってあります?」
「ありますよ」
「それが賃貸の何処かに仕込まれていたりする可能性は」
「勿論ありますね。実力のある魔族であれば直ぐに見破れますのでいくらでも対応出来ますが、イズミさんがそれをすると…余計に怪しまれるかもしれません」
「ですよね。家に何か荷物を置いてたっけか?」
イズミは賃貸の2階に何か荷物を置いたままにしていたかを思い出してみるが、今のところ何も無さそうだ。
ベリアにも確認するが野営用の道具以外は置いておらず、それも新調する予算はタンマリあるので問題ないとの事だった。
念の為にオリヴィアにも確認をしようと、フラウリアがクリームのテストをしていると言う部屋に案内してもらう。
「フラウリアさん失礼します。オリーに少し確認したい事があるのですが今は大丈夫です?」
「大丈夫ですよ」
フラウリアの返事を聞いてから部屋に入ると、オリヴィアはクリームを塗った箇所がに赤くなったりしないかを確かめている所だった。
「イズミ、どうしたんだい?」
「あの酒盛りの一件で一悶着あってね、さっき話しをして来た所なのだが。オリーはあの家に何か荷物を置いてるか」
「あの2階建ての家に?特に無いね。服もマスタングさんのアイテムボックスに入ってるし」
「そしたら…梅雨明けして出発する迄、この屋敷にてお世話になる事に決まっても大丈夫そうだな」
「…訳ありだね?」
「詳しく話すと。俺が大量に酒を購入していたのは酒の横流しをする為ではないかとの疑いを持たれたみたいで、今日ガーネディアン公爵の所へ説明をしに行って来たんだ。で、いざ説明しようとした所で前魔王様が突然現れて俺の身の潔白を主張したもんだから大騒ぎ。って感じ」
「今の話と荷物の話を合わせると、家も危険な可能性があるから、この屋敷で出発まで過ごす事にすると」
「ご明察。ついでに聞くが、オリーは魔王をどう思う?」
「どうって…よく分からないね。昔話で聞いたみたいな感じでは無かったし、支配を企んでる感じも無かったように見えたけど」
「なら良いんだけど。問題は皆が皆、そんな考えになる訳では無いって事だな」
「そうだねぇ。アタシはイズミと一緒に旅をするって決めて此処に居るんだから、何があっても離れる気は無いよ…何があってもね」
オリヴィアはイズミが不安に思っている事を察したのか、笑顔でそう付け加えて答える。
「分かった」
イズミはオリヴィアとフラウリアに挨拶をしてから部屋を出ると、馬車置き場に駐車しているマスタングの元へと歩き出した。
「イズミさんに対してはこの国では迂闊に手を出せませんから、一応は大丈夫ではありますけど…ベリアさんは難しい立ち位置になるわね」
「賓客として扱う、でしたっけ」
「そうです。条件には【如何なる状況になろうとも】と記載してますので、魔王との関係が明るみに出たとしても例外にはなりません。とは言え」
グラテミアは持っていた書類から目を離してイズミ達を見つめる。
「何かしらの牽制や正当な手続きを経ての聴取ならあり得ます。魔王が最後に出現して侵攻して来たのはかなり前の事とは言え、魔王と関係を持つ事に否定的な国や地域の方が多いのが実情です」
「魔王と関係を持っている事実が広まれば…場合によっては国への入国を拒否される可能性も?」
「有り得ます。更に言えば敢えて入国させてから身柄を拘束、拷問にかけて情報を吐かせた上で火刑に処される可能性も」
「それは…気楽な旅どころでは無いですね」
イズミは椅子の背にもたれかかると、天井を見上げながら息を吐く。
「暫くは極秘に扱われるでしょうけど、いつかは明るみになるので覚悟が必要です」
「身を焼かれる覚悟と、身を守る為に戦う覚悟ですね。ベリアとオリヴィアに多大な迷惑を掛ける事も考慮しないと駄目だな」
「アタイは独り身だし家族も皆天命を全うしてるから、迷惑はかからないだろ」
イズミの言葉に反応したベリアだったが、イズミは現状で考えられる懸念事項を列挙した。
「そうか?以前パーティーを組んでた仲間が人質に取られたり、出身地が騎士隊とかに確保されてイズミを殺さないと村民を皆殺しにすると脅される可能性はある」
「そこまでするか?」
「人間ってのは、何をしでかすか分からないから恐ろしいのさ。特に追い詰められてる時とか…旧知の仲の奴から【ベリアがイズミを殺せば、村の皆が助かるんだ。お願いだからイズミを殺してくれ、俺達の子供の命も生まれたばかりの赤ん坊の命もかかってるんだ】とか言われた時に、断れるのかって話さ」
「ぐぬぬ」
ベリアは物凄く険しい表情をして考え込んでしまった。
勿論そんな動きを察知したら自分達も可能な限り対応するが、秘密裏に動く連中の行動を何処まで察知出来るかは未知数だ。
「行動原理ってのは似たようなものだ。何かを守る為、何かを手にする為だ。その【何か】が人や立場や状況によって変わるだけ…魔物や盗賊や帝国兵や魔王から、家族や仲間や国を守る為。魔物や盗賊を討伐して地位や名誉や金銭を得る為」
「何か、ねぇ」
「それが脅かされ、俺を殺せば解放するなんて取り引きをしてたら。かつて一緒に冒険者パーティーを組んでいた仲間が俺と行動を共にしている事が分かったら」
「アタイに近付いて、イズミを殺してくれと頼んで来る?」
「なりふり構っている場合じゃないだろ?愛する家族が人質に取られてると仮定したら、何気ない顔して一緒に飯でもと誘って毒を盛るとかも否定出来ないぞ」
「…そんな事まで考えたら、誰も信用出来なくなっちまう」
「そんな事態にもなりかねない状況なのさ」
「やっぱりあの時、魔王が出て来たのはマズかったのか」
大きなため息をついたベリアだったが、過ぎた事は変わらないので今後の事を考える。
「取り敢えず梅雨明けまではヒュミトールに居よう。明けたらジェヴェドール王国への移動を開始する、当初の予定通りのスケジュールで」
「賃貸はどうします?」
「折角借りたので帰りたい所ですが、1日以上空けたら細工とかされてそうですよね」
疑惑をかけられ、説明をする為に家を空けたのだ。
監視の目もずっとあった事を踏まえると、家を空けている間に侵入して盗聴器みたいな代物を仕込んでいる可能性は否定出来ないし、何らかの証拠を入手する為に家中を物色していてもおかしくはない。
「グラテミアさん、家の中での会話を盗み聞きする魔法とかってあります?」
「ありますよ」
「それが賃貸の何処かに仕込まれていたりする可能性は」
「勿論ありますね。実力のある魔族であれば直ぐに見破れますのでいくらでも対応出来ますが、イズミさんがそれをすると…余計に怪しまれるかもしれません」
「ですよね。家に何か荷物を置いてたっけか?」
イズミは賃貸の2階に何か荷物を置いたままにしていたかを思い出してみるが、今のところ何も無さそうだ。
ベリアにも確認するが野営用の道具以外は置いておらず、それも新調する予算はタンマリあるので問題ないとの事だった。
念の為にオリヴィアにも確認をしようと、フラウリアがクリームのテストをしていると言う部屋に案内してもらう。
「フラウリアさん失礼します。オリーに少し確認したい事があるのですが今は大丈夫です?」
「大丈夫ですよ」
フラウリアの返事を聞いてから部屋に入ると、オリヴィアはクリームを塗った箇所がに赤くなったりしないかを確かめている所だった。
「イズミ、どうしたんだい?」
「あの酒盛りの一件で一悶着あってね、さっき話しをして来た所なのだが。オリーはあの家に何か荷物を置いてるか」
「あの2階建ての家に?特に無いね。服もマスタングさんのアイテムボックスに入ってるし」
「そしたら…梅雨明けして出発する迄、この屋敷にてお世話になる事に決まっても大丈夫そうだな」
「…訳ありだね?」
「詳しく話すと。俺が大量に酒を購入していたのは酒の横流しをする為ではないかとの疑いを持たれたみたいで、今日ガーネディアン公爵の所へ説明をしに行って来たんだ。で、いざ説明しようとした所で前魔王様が突然現れて俺の身の潔白を主張したもんだから大騒ぎ。って感じ」
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「ご明察。ついでに聞くが、オリーは魔王をどう思う?」
「どうって…よく分からないね。昔話で聞いたみたいな感じでは無かったし、支配を企んでる感じも無かったように見えたけど」
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「そうだねぇ。アタシはイズミと一緒に旅をするって決めて此処に居るんだから、何があっても離れる気は無いよ…何があってもね」
オリヴィアはイズミが不安に思っている事を察したのか、笑顔でそう付け加えて答える。
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※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
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