異世界無宿

ゆきねる

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第二十八章 梅雨が明けるまで

第五百九十六話 魔道具開発?

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野良猫と一緒に馬車置き場に居るマスタングの元へ向かうと、そこには漆黒の狼の姿もあった。

「来たか」

「これはお二方とも食事って事で?」

「そうなる」

イズミはマスタングに料理の実体化を頼むと、トランクが開いたので準備を始める。

「この前私が殲滅した帝国兵の拠点はどうなりました?」

「避難していた者達が戻り、今は帝国兵が来る前と遜色のない生活に戻っているぞ。水門は魔族が改良して魚が貯水池に入れるようになった」

「人魚達もあの場所まで来てましたし、それが良いでしょうね」

イズミが野良猫と狼の前にご飯を置くと、野良猫は会話を中断してガツガツと食べ始めた。
そこそこの量があったと思っていたが、ペロリと平らげると直ぐにお菓子を出せと言わんばかりの顔をする。
どちらとも菓子は食後派なのかもしれないが、別に食前に出しても食べそうではある。

マスタングが用意した菓子はバタークッキーとチョコチップクッキーの2種類だった。
動物相手には出せないが、精霊の類に当たる存在なので食べても問題はないはずだ。
因みにだが、野良猫はチョコチップが好みで狼はバタークッキーの方が好みに見える。
がっつき方を見る限り、そんな気がするのだ。

お菓子を食べ終えた狼はマスタングの隣で丸くなるとそのまま休憩に入り、野良猫はボンネットに飛び乗ると香箱座りをしてイズミへと顔を向けた。

「さて。お主達は梅雨が明けたら、また隣の王国へ戻るのだったな?」

「ジェヴェドール王国に戻りますよ。ベリアがSランク冒険者になった記念に、式典を開く事になったとかで」

「向こうでも酒盛りをする予定はあるか」

「求められるなら頑張ってみますが、メーレルさんやラミア族のサポートが得られないとなると、厳しい所がありますね」

イズミは酒盛りに関してどれだけラミア族の助けを借りたかを思い出す。
バーテンダーとしてメーレルのレンタル、ドライフルーツや菓子やナッツ類の準備と手配、そしてまだ少数生産であるトニックウォーターの手配。
対価として金銭で支払っているとはいえ、ラミア族の助け無しでは成功しなかったと言っても過言ではないのだ。

「菓子やドライフルーツはほとんどラミア族にて準備をして貰ったので、ジェヴェドールでの調達は難易度が高いんです」

「そうなのか…向こうで活動している者達にも食べて貰いたいのだが」

「ヒュミトールで買える果物とジェヴェドール王国で買える果物の種類も違うので、ドライフルーツに加工出来るかも判断し難いのです。その辺りが解決出来れば、グラテミアさん達との交渉次第では用意も出来る…かもしれません」

「そのアーティファクトから実体化するのは可能であろう」

「確かに可能ですが、どうせなら自分達の活動している国や地域で生産された果物で作った方が良いでしょう」

「むぅ、それは一理あるな」

野良猫はムニャムニャと考え込むと、香箱座りを止めて両前足を伸ばす。

「いや待て…アーティファクトよ。ドライフルーツを作る魔道具の設計は出来るか?」

「設計図のみでしたら可能です」

「では、その設計図をラミア族に渡して梅雨明け迄に完成させれば、現地でドライフルーツの準備も出来る訳だ」

野良猫はマスタングと相談を始めたが、其処にも課題はある。

「野良猫さん、魔道具ってそんな簡単に作れないですよね」

「設計図があれば作る事自体は出来るだろう」

「素材の確保と加工に必要な道具、完成した魔道具がちゃんと使えるのか確かめる必要もあります。作りが甘くて使用中に破損する可能性もありますから、安心して使える状態に仕上げる迄には時間がかかると思うのですが」

「流石に梅雨明け迄には厳しいか」

野良猫としてはどうしても、酒盛りで出された食べ物を向こうでも欲しいと考えているようだ。

「そこは設計図と必要な素材次第、ですかね」

イズミは取り敢えずマスタングに魔道具の設計図を実体化して貰うと、グラテミア達に見せる前に一度確認をする。
見た目はオーブントースターに近いが、必要な素材が良く分からない物だった。

「フォティーとかクシィーロスって何だ?初めて聞いたが」

「厄介な素材だな…ヒュミトール近辺ではまず入手困難だ」

「早速手詰まりか」

「何処かで入手する必要があるな」

「取り敢えず、この設計図を見せて反応を確かめてみるとしますよ」

イズミは野良猫達に挨拶をして、設計図を片手に屋敷へと戻る。
相談をするなら一度グラテミアを通すべきと判断したイズミは、屋敷の従者に声をかけて話をする時間を作ってもらう。

「グラテミア様は明日の昼過ぎ以降でしたら、まとまった時間が取れるかと存じですが…急用でしょうか?」

「いえ、急用では無いので大丈夫です。訳あってとある魔道具の設計図を入手しまして、作成可能なら作成まで依頼したいのです。それに関して先ずは相談をと」

「かしこまりました、その旨をグラテミア様に伝えさせて頂きます。詳細な時間が決まりましたら、イズミ様にお伝え致します」

「よろしくお願い致します」

相談のアポイントは取ったのでイズミは部屋に戻り一休みすると、ブレスレット作りを再開する。
まだまだ沢山作る必要があるのだ、時間は有効活用しなければならない。
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