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第二十八章 梅雨が明けるまで
第六百九話 ようやく納品
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イズミはグラテミアの執務室にて、完成させたブレスレットとネックレスをテーブルに並べている。
「昨日マスタングにも検品をしてもらいましたが、気になる点がありましたら調整しますので」
「ありがとうございます。フラウリア達に確認させますね」
グラテミアは部屋に呼んだフラウリア他数名の者にブレスレットの確認作業を頼むと、イズミが取り出したツールボックスを調べ始める。
「面白い構造ですね…箱にはかなりの余裕があるようですが」
「ブレスレットの修理用工具以外にも収納出来るように、あえて大きめのツールボックスにしました。ある程度のメンテナンス機能も付与してありますので、切れ味の悪くなったハサミとかを入れても大丈夫です…勿論、職人さんに調整を依頼するのが1番ですが」
「そのような工具箱を3個も?」
「有効活用して頂けますと幸いです」
確認作業を終えたフラウリアがブレスレット一式を転移魔法で何処かへ送ると、部屋から出て行った。
その左手にはイズミが渡したブレスレットが付けられていた。
「イズミさん、一つお耳に入れておきたい話があります」
二人きりとなった執務室にて、グラテミアが椅子に座り直す。
「サンダーブレード作戦でしたね、作戦終了後にその地に住んでいた魔族やエルフ族が戻って来た迄はお話していたと思いますが…つい先日、ゼーレラント王国から正式な訪問があったそうです」
「調査部隊が居る中で戦闘を仕掛けましたし、貯水池では遠目ですが姿を見られてますからね…無論、接触はしてませんが」
「ゲヘナ様の件もあったので質問攻めに近い状態だったそうですが、現地の魔族とイズミさんは面識も無いので知らぬ存ぜぬで通したとだけ、報告が来ました」
「これでゼーレラント王国側は私の存在までは掴めていない筈…ですよね?」
「えぇ、別ルートから探りを入れていなければ、ですが」
別ルート、それは国家間あるいは貴族間のやり取りであれば必ず存在する、裏取引のような代物だ。
どの世界どの業界にも情報通が居て、報酬次第でスキャンダルや相手の首根っこを掴めそうなネタを売る。
それがガセネタなら売った情報通は命を狙われるリスクもあるので、信頼出来る情報源があってこその商売ではあるが。
「まぁ、私に辿り着いた所でって感じですがね」
「ゼーレラント王国ならまだ良いかもしれませんが、ノストラテジア帝国を侮ってはいけません」
「それは分かっています。必要に応じて、また派手に戦う迄です」
「帝国はそんな事お構いなしな所もありますが、気を付けておかないと旅先で何があってもおかしくは無いのです。例えば旅の途中で帝国がミレイユの情報を入手し、ジェヴェドール王国での式典期間中にミレイユの誘拐を試みる事も考えられます。以前保護をしていた夫婦や取巻きに口止めはしていないでしょう?情報は何処かから漏れるものと考えておくべきです」
「…確かに」
何時もなら全員始末して終わりとしていたが、今回はミレイユの保護と言う目的もあり始末しなかったのだ。
つまり自分達の事を話す口が何時もより多い。
「注意しないとか」
「そうなります。それとですが、ドワーフの武器屋から連絡がありましたよ」
どうやらオリヴィア用の武器が完成したらしい。
近々受け取りに行かなければ。
話を終えたイズミはグラテミアの執務室から退室すると、身体を伸ばしてから自室に戻ると何故かオリヴィアが椅子に座って待っていた。
「どうしたんだ?」
「いやぁ、アタシの部屋に精霊が入り込んだってミレイユが来たんだけどさ…まだ体力が回復しきれてなくて、そのまま寝ちゃったんだよ」
オリヴィアはミレイユをベッドに寝かせると、自分が隣に寝るのはどうなのか悩んだ末にイズミの部屋へと移動して来たそうだ。
「梅雨明け迄にある程度回復していてくれると助かるのだが」
「そこは心配無いと思う。急に駆け足とかするのが少し厳しいみたいだけど、ちゃんと回復してるよ。お昼もしっかり食べてたし、もうパン作りしたいって言ってたし」
「そうか…じゃ、明日買い出しにでも行くか。さっきドワーフの武器屋から連絡があって、オリーの武器も完成したらしいから受け取りも兼ねて」
「やっと出来たのね」
オリヴィアは両肩を軽く回して武器を扱う動作を見せるが、イズミにはどうしても相手を棒でしばき倒す姿にしか見えなかった。
「さて、アタシは部屋に戻るね。ミレイユが目覚めた時に誰かいた方が、不安にならないだろうし」
「よろしく頼む」
「…別にイズミが側に居ても良いと思うけど」
「起きた時に面識の少ない野郎が側に居たら、むしろ警戒するんじゃないかな」
ミレイユはまだ未成年であり、思春期に突入するお年頃なのだ。
1つ屋根の下であったとしても、プライベートな空間は可能な限り確保してあげたい所である。
そんな少女の就寝中に男が近くに居たら、あらぬ誤解も生まれてしまいかねないのだ。
これは死活問題であり、今後の人生にも悪影響を及ぼしかねない。
「オリー、念の為に言っておくが」
「流石に子供の前で寝巻きは脱がないよ」
「違う、酒は飲み過ぎるなよ」
部屋に戻ろうとしたオリヴィアに声を掛けると、思っていた回答とは違う返事が来た。
イズミはオリヴィアに対して一般常識は持っていると思っているので、深酒のみ注意を促しておく。
酒の失敗談は誰にだってあるが、出会って間も無いミレイユに泥酔や酩酊状態の姿を晒すのは悪手が過ぎる、そう思っての判断だ。
「分かったよ、今日は葡萄酒を少しだけにしておくよ」
部屋から出て行ったオリヴィアを見送ったイズミはドワーフ酒を手に取り、納品完了祝いの1杯としてグラスに注いで飲んだ。
それ以上は飲まないと我慢し、寝支度を始めるのだった。
「昨日マスタングにも検品をしてもらいましたが、気になる点がありましたら調整しますので」
「ありがとうございます。フラウリア達に確認させますね」
グラテミアは部屋に呼んだフラウリア他数名の者にブレスレットの確認作業を頼むと、イズミが取り出したツールボックスを調べ始める。
「面白い構造ですね…箱にはかなりの余裕があるようですが」
「ブレスレットの修理用工具以外にも収納出来るように、あえて大きめのツールボックスにしました。ある程度のメンテナンス機能も付与してありますので、切れ味の悪くなったハサミとかを入れても大丈夫です…勿論、職人さんに調整を依頼するのが1番ですが」
「そのような工具箱を3個も?」
「有効活用して頂けますと幸いです」
確認作業を終えたフラウリアがブレスレット一式を転移魔法で何処かへ送ると、部屋から出て行った。
その左手にはイズミが渡したブレスレットが付けられていた。
「イズミさん、一つお耳に入れておきたい話があります」
二人きりとなった執務室にて、グラテミアが椅子に座り直す。
「サンダーブレード作戦でしたね、作戦終了後にその地に住んでいた魔族やエルフ族が戻って来た迄はお話していたと思いますが…つい先日、ゼーレラント王国から正式な訪問があったそうです」
「調査部隊が居る中で戦闘を仕掛けましたし、貯水池では遠目ですが姿を見られてますからね…無論、接触はしてませんが」
「ゲヘナ様の件もあったので質問攻めに近い状態だったそうですが、現地の魔族とイズミさんは面識も無いので知らぬ存ぜぬで通したとだけ、報告が来ました」
「これでゼーレラント王国側は私の存在までは掴めていない筈…ですよね?」
「えぇ、別ルートから探りを入れていなければ、ですが」
別ルート、それは国家間あるいは貴族間のやり取りであれば必ず存在する、裏取引のような代物だ。
どの世界どの業界にも情報通が居て、報酬次第でスキャンダルや相手の首根っこを掴めそうなネタを売る。
それがガセネタなら売った情報通は命を狙われるリスクもあるので、信頼出来る情報源があってこその商売ではあるが。
「まぁ、私に辿り着いた所でって感じですがね」
「ゼーレラント王国ならまだ良いかもしれませんが、ノストラテジア帝国を侮ってはいけません」
「それは分かっています。必要に応じて、また派手に戦う迄です」
「帝国はそんな事お構いなしな所もありますが、気を付けておかないと旅先で何があってもおかしくは無いのです。例えば旅の途中で帝国がミレイユの情報を入手し、ジェヴェドール王国での式典期間中にミレイユの誘拐を試みる事も考えられます。以前保護をしていた夫婦や取巻きに口止めはしていないでしょう?情報は何処かから漏れるものと考えておくべきです」
「…確かに」
何時もなら全員始末して終わりとしていたが、今回はミレイユの保護と言う目的もあり始末しなかったのだ。
つまり自分達の事を話す口が何時もより多い。
「注意しないとか」
「そうなります。それとですが、ドワーフの武器屋から連絡がありましたよ」
どうやらオリヴィア用の武器が完成したらしい。
近々受け取りに行かなければ。
話を終えたイズミはグラテミアの執務室から退室すると、身体を伸ばしてから自室に戻ると何故かオリヴィアが椅子に座って待っていた。
「どうしたんだ?」
「いやぁ、アタシの部屋に精霊が入り込んだってミレイユが来たんだけどさ…まだ体力が回復しきれてなくて、そのまま寝ちゃったんだよ」
オリヴィアはミレイユをベッドに寝かせると、自分が隣に寝るのはどうなのか悩んだ末にイズミの部屋へと移動して来たそうだ。
「梅雨明け迄にある程度回復していてくれると助かるのだが」
「そこは心配無いと思う。急に駆け足とかするのが少し厳しいみたいだけど、ちゃんと回復してるよ。お昼もしっかり食べてたし、もうパン作りしたいって言ってたし」
「そうか…じゃ、明日買い出しにでも行くか。さっきドワーフの武器屋から連絡があって、オリーの武器も完成したらしいから受け取りも兼ねて」
「やっと出来たのね」
オリヴィアは両肩を軽く回して武器を扱う動作を見せるが、イズミにはどうしても相手を棒でしばき倒す姿にしか見えなかった。
「さて、アタシは部屋に戻るね。ミレイユが目覚めた時に誰かいた方が、不安にならないだろうし」
「よろしく頼む」
「…別にイズミが側に居ても良いと思うけど」
「起きた時に面識の少ない野郎が側に居たら、むしろ警戒するんじゃないかな」
ミレイユはまだ未成年であり、思春期に突入するお年頃なのだ。
1つ屋根の下であったとしても、プライベートな空間は可能な限り確保してあげたい所である。
そんな少女の就寝中に男が近くに居たら、あらぬ誤解も生まれてしまいかねないのだ。
これは死活問題であり、今後の人生にも悪影響を及ぼしかねない。
「オリー、念の為に言っておくが」
「流石に子供の前で寝巻きは脱がないよ」
「違う、酒は飲み過ぎるなよ」
部屋に戻ろうとしたオリヴィアに声を掛けると、思っていた回答とは違う返事が来た。
イズミはオリヴィアに対して一般常識は持っていると思っているので、深酒のみ注意を促しておく。
酒の失敗談は誰にだってあるが、出会って間も無いミレイユに泥酔や酩酊状態の姿を晒すのは悪手が過ぎる、そう思っての判断だ。
「分かったよ、今日は葡萄酒を少しだけにしておくよ」
部屋から出て行ったオリヴィアを見送ったイズミはドワーフ酒を手に取り、納品完了祝いの1杯としてグラスに注いで飲んだ。
それ以上は飲まないと我慢し、寝支度を始めるのだった。
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