異世界無宿

ゆきねる

文字の大きさ
33 / 624
第三章 無宿人の宿命

第三十三話 旅の再開

しおりを挟む
原初魔族のルノさんが飛び去ってから約1時間、なんとも言えない脱力感が俺の身体を包んでいた。
カレンが夕御飯を作ってくれていたらしく、鍋の煮立つ音が耳に心地良い。

俺はミグルン町にいるフレイルに魔法通信を繫いだ。
町での一件がどうなっているのかを聞く為だ。

「魔獣化の原因は、帝国が作った薬の可能性が濃厚と報告が出ている」

帝国が兵士達の戦意高揚の為に生み出したと言う薬があるらしく、それを過去に接種していた結果オーガは魔獣化して暴走に至った。

これがオーガ騒ぎの報告だった。
俺に攻撃を仕掛けて来た連中については、ギルドをクビになった奴等が俺を捕まえて手柄にしようと目論んでの犯行として処理されたそうだ。

「分かった。色々とありがとう」

俺は魔法通信を切ってからカレンのいる焚火まで向かう。

「カレン。明日、森を出発でもするか?」

そろそろ大丈夫だろうと判断し、カレンの故郷へ行こうと思ったのだ。

カレンと一緒にマスタングに乗り込み、カレンの故郷を探してもらう。
この洞窟からだと、馬車での移動換算で約1ヶ月半程かかるらしい。

道中の町や村で補給をしつつの旅路になる。
そこで、ふと金を稼ぐ方法を持っていない事を思い出した。

手持ちの金は、襲撃して奪ったものだからな…
俺達は賊では無いのだから、しっかりとクリーンに金を稼ぐ必要がある。

そろそろ心許無いしな…
マスタングの能力は隠しておきたいし、冒険者ギルドのような仕事をするのは波風が立ちそうだ。

賞金稼ぎとか用心棒とか、そんな稼ぎ方しか思い浮かばなかった。
行き当たりばったりで旅をするのが性に合っているのかもしれない。

そう自分に言い聞かせて、カレンに話を投げた。

「商人や貴族の護衛とかであれば、冒険者ギルドでなくても仕事の依頼はありますよ?」

…最初からカレンに相談すれば良かった。


翌朝、俺はカレンが起きる前にマスタングを洞窟から出してやり、焚火を準備した。
昨日の鍋を温めつつ、マスタングの新機能を確認しておく。

「マスタング、特殊な機能の調子を見ておきたい」

そう言うとマスタングは返事をしてくれた。

「マスター、モニターをご確認下さい」

言われた通りに車内に乗り込みモニターを確認すると、コンソールボックス内にトグルスイッチが追加されたと表示されていた。

開いてみるとスイッチが2個付いている。
右側のスイッチ下には「Gun」、左側には「Fire」と書いてある。
スイッチが奥に倒れていると安全状態で、手前に倒すと攻撃可能状態になるようだ。
手動で攻撃をする際は各トグルスイッチに対応したボタンを押し続けている間は連続で攻撃が可能らしい。

試しにスイッチを中央に切り替えて車外に出て様子を見ると、内側の丸目ヘッドライトがあった所からガトリングガンが飛び出していた。
勿論、その原理は分からない。
トランク側を見ると、特徴的なマークのあった場所から火炎放射器のノズルが出ていた。
質量保存の法則は適応外なのだろうか?

「自動操縦の際の攻撃は可能なのか?」

マスタングからの回答は『可能』だった。
本当に心強い相棒だ。

カレンが起きてきたので武器スイッチを安全状態に戻し、一緒に朝食を取って出発の準備を始める。
焚火をしていた場所をしっかりと現状回復して、使えそうな炭はカレンが布袋に仕舞った。

「じゃ、出発しますか」

マスタングのナビにはカレンの故郷までの間にある、食料等を補給出来る町から小さな集落までピンが刺さっていた。
その中から、今回は1番近い場所を目的地に設定した。

「目的地をロウガ村に設定しました」

ロウガ村はこじんまりとした農村らしい。
取り敢えずは昼過ぎに到着出来るように、移動速度を計算しつつまったり走る事にした。
そんなに急ぐ必要もない旅だ。


腕時計を確認すると、午後の1時間半を過ぎた所だった。

ロウガ村は寂れた農村と言っても良いだろう村だった。
掘っ立て小屋と牛と馬の小屋、残りは畑と言った具合だ。

村の入口付近に駐車して、近くを軽く散策する。
小さな村でも宿屋を兼業で営んでいたりすると、カレンから聞いていたからだ。

カレンが宿屋と書いてある小屋を見つけてくれたので、早速扉を叩いてみた。
遠くから声が聞こえ、次第に足音が近付いて来た。

「おやおや、宿泊かい?」

一泊と水や食料を頼んだ所すんなりと話が通ったので、冒険者や商人も同じようなスタイルで旅をしているのだろう。

俺は銀貨を3枚渡してから、マスタングを宿屋の隣に持って来た。
案内された部屋は簡素な作りであったが、ベッドや武器掛けが置いてあった。

近くにあると説明された井戸に水を汲みに向かう途中で、聞き慣れない動物の声を耳にした。

「カレン。今の声は動物か?」

カレンは声のした方角を見つめている。

「これは…凶暴化した魔獣ですね」

魔獣にも大きく分けて二種類存在しているそうだ。
意思疎通が可能か否か、らしい。
通常の魔獣であれば意思疎通が出来て、農作物を荒らさないで欲しいとか此処の作物は食べても良いとか、共生が出来るそうだ。

意思疎通が出来ない魔獣は魔力が暴走して制御が効かない為、魔族でもエルフ族でも平和的な対処が出来ないのだと言う。

俺はマスタングからレバーアクション式のライフルを取り出して、声のした方へと歩いて行く。
そこでは村人達が魔獣を追い払おうと奮闘していた。

村人達に声をかけた。
すると、村の偉い人だろう方が手を振ってくれた。

「魔獣が出たのか」

俺はライフルを肩にかけて話しかける。

「そうだ。最近は大事な農作物を狙ってきて困っておるのだ」

凶暴化した魔獣は人間も亜人もエルフも関係なく襲うらしく、どの町でも村であっても悩みの種になっているそうだ。

俺は一度カレンの方を見る。
カレンは凶暴化した魔獣を見つめ、静かに首を振った。
意思疎通は叶わなかったのだ。

目の前の男に確認を取る。

「凶暴化した魔獣は、あの一匹だけか?」

男は頷いた。
確認出来ている魔獣は、今いる一匹だけのようだ。

「魔獣の駆除はギルドに頼んでいるのだが、一匹や二匹程度では大した稼ぎにならなくてな」

聞くと魔獣駆除の仕事は何処にでもあるようだが、ギルドのある町から移動して狩るとなると、割に合わないのだと言う。

相場は一匹当たりで、おおよそ銀貨2枚。
大型の魔獣であれば、もっと報酬は上がるそうだ。

凶暴化した魔獣の狩人…これは旅の肩書になるような気がした。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...