異世界無宿

ゆきねる

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第十章 気楽な一人旅

第百三十二話 怪しい雲行き

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食事を終えて身体を休めているグリフォンの近くで、イズミは広場にあった椅子を勝手に拝借し、様子を伺っていた。

「なあマスタング。グリフォン相手だったら、ショットガンでも良かったんじゃないか?」

「それではマスターの射撃訓練にはなりません。アサルトライフルに慣れて頂く必要があります」

「そう言う事ね」

イズミは少しづつ落ち着きを取り戻し始めた広場で、今回の戦闘に関して考え始めた。

「なぁマスタング。グリフォンの活動範囲ってどのくらいだ?」

「…山岳地帯や魔獣の森が主な活動範囲です。この町は活動範囲外となります」

海辺の町はそもそも、グリフォンの活動範囲からは逸脱している。
わざわざそんな所に目的を持ってグリフォンが来るとは思えない。

「最も近い場所だと、ここからどのくらいだ?普通の商人や冒険者の移動速度で」

「およそ1ヶ月程度かと」

空を飛べるグリフォンであっても、そこそこの距離があるこの町まで来るだろうか。

「…大方、誰かの差し金だろうけどな」

イズミはそれ以上の詮索は一旦止めて、グリフォンの様子を見守る事にした。
今直ぐ自分が何かをする必要は無い、そう結論付けたのだ。


太陽が傾き始めた時、グリフォンが動き出した。

見張りをしていた衛兵が立ち上がり、近くに置いていた槍を手に取った。

「もう大丈夫なのか?」

イズミは椅子に座ったまま、グリフォンに対して声をかけた。
どうも此方の言葉は通じている…そんな感覚があったからだ。

グルルル…

グリフォンがイズミを見て声を出したが、イズミには何と言っているか分からなかった。

「元いた場所に帰りな。こっちの事は気にしないで良いから…仲間の2体に関しては、すまなかった」

イズミは素直に謝罪した。
グリフォンはじっとイズミを見つめたと思えば、そのまま空へと羽ばたいた。

攻撃される心配はしていなかったが、いざ目の前で飛ばれる怖さはあった。

元いた場所へ飛び去るグリフォンを見送ってから、イズミは衛兵に挨拶をして宿屋へと戻って行った。


宿屋に到着したイズミは、マスタングのトランクを開けてアサルトライフルを収納した。
勿論、マガジンを外してチャンバー内の1発も抜き取っている。

中途半端に使ったマガジンもトランクへ仕舞い、マスタングに周囲の警戒を頼んだ。

宿屋に入って従業員へ挨拶をすると、グリフォン騒ぎに関して色々と聞かれてしまった。
回答に困っていた所で宿屋の主人が助け舟を出してくれたので、いらぬ発言をせずに済んだ。

イズミは宿屋の夕食を食べてから、水汲み場を経由して部屋へと戻った。

椅子に置いていた蝋燭形の魔道具を使い部屋を明るくすると、静かにベッドへ座り込んだ。
ため息をつきながら上着を脱ぐと、部屋内の確認をしてからマグナムを枕元に寝かせた。

革製のベストを脱いでベッドの足元に置いたら、マスタングへと魔法通信を繋げた。

「マスタング。様子はどうだ」

「…気になる魔法反応が4つあります」

イズミは腰の装備を外すのを止めて、マグナムを手に取った。
一度スイングアウトして、しっかりと弾が込められているのを確認する。

「攻撃を仕掛けてくる可能性は?」

「有りえます」

「なら…先手を打つか」

イズミは深呼吸をしてからショルダーホルスターにマグナムを仕舞う。

水で顔を洗いサッパリしてから、戦闘に向けて心を切り替えた。
ベストを担いで重い足取りで部屋を出る。
これで戦闘中に部屋を漁られても、武器に関する情報はほぼ相手に渡らない。

「宿屋内で戦闘になるのは避けないとな、他の客に迷惑をかけたくない」

宿屋から出たイズミはベストを収納する為に、足早にマスタングへと歩き出した。
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