異世界無宿

ゆきねる

文字の大きさ
152 / 624
第十一章 新たな相棒

第百四十九話 再現戦

しおりを挟む
イズミが訓練場から出ようとした時、見た目から魔術師だと分かる者が広場に魔法で壁を作り始めた。

「彼女と王都から来た訓練官です。特技は過去視とゴーレムでの再現です」

男が魔術師に声をかけると、ふらふらと近付いて来た。

「何でしょうか?」

「こちらの方が貴方様の魔法に興味を持っておりましたので」

男が魔術師に何か小声で話をしていたが、そこはイズミには聞こえなかった。

「貴方…私の魔法を受けてみる?」

フードを外した女性は、青い髪をしたエルフだった。

「受けるって、俺は冒険者では無いし…多分、何の参考にもならないと思う」

イズミは過去の戦闘を思い出してみた。
村を巻き込んだ賊との戦闘、ゴブリンの巣の討伐、サイクロプス戦、ドラゴンやグリフォン。

見られたとしても、どの冒険者にも参考にならない戦闘ばかりな気がする。

「大丈夫。戦いの記憶はどんな形であっても大切なものだから」

困ったイズミがベリアを見るが、ベリアもイズミの過去の戦闘に興味があるようだ。

大きなため息をついてから、イズミはエルフに答えた。

「分かった…受けよう」


エルフが取り出した水晶にイズミが手をかざすと、呪文を唱え始める。
水晶が光ったと思えば、様々な色に変化する。

暫くして、光が消える。

「終わった…こんな戦闘スタイルは初めて見た」

エルフがそう言いながら、訓練場に魔法をかけた。
広場に現れたのは、サイクロプスだった。

「サイクロプスだと!?」

訓練場内にいた冒険者達から声が上がった。

「記憶だと攻撃をしていたのは4人だけど、私の魔法では相手だけしか再現出来ない」

サイクロプスのゴーレムは1番厄介だった奴を再現しているようで、近くで見てみるとその大きさに圧倒される。

「こんなデカかったのか?」

「過去視で見たから間違いない」

エルフがそんな事を言うので、聞いていた冒険者達も訓練官も近寄って来た。

質問攻めから逃げるように訓練場から出ようとするも、ベリアに左手を掴まれて外へ出られない。

再現とは言えサイクロプスである。
イズミはマスタングに魔法通信を繋げる。

「マスタング。ちょっと面倒な事になった」

「…状況を把握しました。ショットガンをお使い下さい」

イズミはベリアと一緒にマスタングに向かうと、トランクから武器の入った袋を取り出した。

「フルオートショットガンと訓練弾です。散弾ではありませんのでご注意下さい」

マスタングは訓練である事を考慮して、訓練用の弾で実体化をしてくれた。
有り難い事に、マグナムの弾も訓練用のものが入っている。

「…今までで1番シビアな戦闘になるかもな」

イズミは覚悟を決めて訓練場へと歩いて行く。
歩きながらベリアと戦闘での役割分担を説明する。

広場に立つ前に準備を整えると、エルフに声をかけた。

「準備出来たぞ」

「分かった。動かすね」

戦闘判定用だと言うバングルを両方の手に付ける。
ショットガンに初弾を装填して、サイクロプスに銃口を向けた。
ベリアもナイフを抜いて体勢を低くしている。
エルフの声と共に、サイクロプスが動き始めた。

ドンドンドンドン!

ショットガンの連射がサイクロプスの胸部より下へと着弾する。
本物との戦闘より近距離なのもあってか、機敏な動きをするサイクロプスに当てるのは難しいものの、最初の数発以外は命中し始めた。

太腿に命中したのか、体勢が崩れたサイクロプスに対してベリアがナイフで斬りかかる。
ナイフに風魔法を纏わせたらしく、実戦の時のようにサイクロプスは胴体から真っ二つになった。

「やった!?」

ベリアは倒したと思ったようだが、イズミは知っている。
このサイクロプスは上半身のみでも戦闘を続ける怪物だと。

サイクロプスの単眼がベリアを睨みつけると、光線を出そうと構え始める。
光線まで再現するのか分からないが、イズミは弾切れになったショットガンを地面に置くとマグナムと戦闘用ライトを構える。

「ベリア!離れろ!」

素早く後ろへ距離を取るベリアとほぼ同時に、イズミはライトでサイクロプスの目に照射する。
サイクロプスが目を閉じた瞬間を逃さず、胸部を狙ってマグナムを6発撃ち込んだ。

腕に命中してサイクロプスが倒れ込む。
イズミはライトを口に咥えてからマグナムに弾を込め、近付きつつ今度は頭を狙って6発撃ち込んだ。

「ベリア!頭を斬り落とせ!」

「分かった!」

イズミの指示を聞いたベリアが、全力疾走でサイクロプスへ接近してナイフを振り落とした。

実戦の時と同じように、サイクロプスの頭が地面に落ちた。

「再現戦、終了」

エルフの声が聞こえたと思ったら、サイクロプスのゴーレムは土塊へと戻った。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...