異世界無宿

ゆきねる

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第十九章 暴力の嵐

第二百七十八話 対価

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フラウリアは改めて窓の外を見ると、その移動速度に驚いたのか目を見開いていた。
どうもさっき窓を見たのは、グラデミアから言われた事を思い出していただけなのかもしれない。

「そうですね…我々への対価ですが、イズミさんの精をラミア族の同胞2名に提供で如何でしょうか?」

その対価を聞いたベリアが咳き込み、フラウリアの顔を見るために体勢を変える。

「ラミア族は他種族の男性の精を貰い子孫を残すのです。イズミさんの持つ武器や道具も魅力的ですが…気になるじゃないですか、不思議な人間の男の精を貰ったらどんな子が生まれ育つのか」

フラウリアの目が今までに無い程に輝いている。

「そんなので良いなら、別に構わないけど」

イズミは特に表情を変える事もなく承諾した。
その言い方はまるで、自分の事ですら他人事のように考えているかのようだった。

「…良いのですか?」

「火山地帯に到着してからなら特に問題は無い。チャチャっと済むなら尚良いが」

驚いている2人に向け、イズミは普通に答える。

「俺の人生の目的は、死ぬまでマスタングと共に旅をする事だ。それ以外の出来事は、正直そこまで重要な事じゃない。仮に精をフラウリアが指定する2人に渡したとして、その後しばらく旅が再開出来ない訳じゃ無いならば…その対価で構わない」

「イズミ…お前スゲェ奴だな!」

ベリアは呆れを通り越して、妙な感心までしていた。

「…子を授かった事を確認出来るまで、近くに居て頂く事にはなりますよ?」

「具体的には?」

「人間よりは圧倒的に早いですが、およそ半月は欲しい所です」

「だとさマスタング、どう思う?」

イズミは念の為にマスタングにも確認を取った。

「マスターが五体満足かつ心身が健康であれば。火山地帯には目的が複数ありますので、問題無いかと」

返答はアッサリとしたものだった。

「じゃ決まりだな」

そう言うとイズミは、フラウリアが持っている資料を受け取った。
直ぐにマスタングのグローブボックスに入れると、モニターに情報が反映された。

「…思ったよりデカいな」

「そうだな、敵もかなり居そうだ」

イズミとベリアがモニターを見ながら詳細を確認していると、フラウリアが友人との連絡を終わらせたようだった。

フラウリアが蛇の姿に戻り隣へ移動すると、勿論初対面の魔族が転移魔法で現れた。

「フラウリア、私を呼ぶってどんな用件なの?」

姿を見せたのは、淡い桃色のドレスを身に纏った魔族だった。

「人間の友人がこれから戦闘をするのだけれど、相手の人数や武器を把握しておきたいの。それと、その場所にある色々な資料の確保ね」

蛇の姿のままで説明をしてくれたフラウリアに感謝をしてから、イズミは自己紹介をした。

「始めまして、イズミと言います。旅を生業にしています」

「…で、戦う理由は?」

「大した事じゃありません…ふざけた連中をちょいと懲らしめるだけです」

イズミは冗談めかして答えてから、本音を零した。

「奴等は俺を『自分達の買い豚とする決定を下したから、大人しく飼われろ』と勝手に決めましてね。今までもそうやって様々な人達を蹂躙して来たのでしょうが、俺を相手にそんな好き勝手な事をしようとする組織が眼の前に現れて、許せる程の寛容さは持ち合わせて無いのです。特に俺とマスタングとの旅路を邪魔するとは、本当に気に入らない」

「だから殺すの?」

「そうだ。何か問題でも?」

「…人間は愚かね。争いばかりして」

魔族の女はイズミを冷たい視線で見つめる。

「それには同意します。いっその事さっさと滅んだ方が世界の為になるだろうし、その方が魔族にも都合が良いとまで思います」

ショルダーバッグからアサルトライフルを取り出して弾倉を挿入し、初弾を装填しダストカバーを閉じセイフティを掛けて収納する。

「そんな愚かな人間に、手を貸して頂けますか?」

「対価次第よ」

女はフラウリアを見てから、何を対価を手を貸すのかを尋ねた。

「フラウリア、貴方は何を対価に求めたの?」

「彼の精をラミア族の同胞2名に与える事ですわ。既に契約済みよ」

「…そうなのね」

女はイズミをジッと見つめる。
その後、小さなため息をついた。

「敵の情報と、敵地にある資料…証拠の確保の2点ね」

女は両手を伸ばすと可愛く欠伸をする。

「お酒や菓子なら直ぐに出せますが、物によっては戦闘後に対価を払う事になりますね」

モニターで現在位置を確認しながら、イズミは手持ちのカード…対価になりそうな物…を挙げてみる。

「それも魅力的ではあるけど、足りないわね。1つはお酒とお菓子のセット、もう1つを決めるのは戦闘後でも良いかしら?」

「とんでもない対価でなければ」

イズミはマスタングから酒とお菓子のセットを実体化させ、女へと手渡した。
酒の種類は瓶の形からは特定出来ず、お菓子はクッキーにチョコレートにマシュマロにと、兎に角沢山入ったセットだった。

「ありがとう…自己紹介がまだでしたわね。私はノルト、上位魔族よ」

イズミはノルトと握手を交わすと、再度モニターで敵地の確認に戻った。
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