異世界無宿

ゆきねる

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第二十章 火山地帯で小休止

第二百九十二話 卵は孵ってました

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「お久しぶりです。この町が拠点なのですか」

「いえ、本来ならばもっと火山に近い町で合流する手筈だったのですが」

トレットは屋敷の方を一度見てから、イズミに告げた。

「主様がこの町で卵と再開した翌日に、卵が孵ったのです」

「それで?」

「子育てに大忙しで戻るに戻れず、今日に至りますわ」

「そう聞く限り、元気なんですね」

「それはもう!元気過ぎて皆が大変な位ですよ」

トレットの案内でマスタングを大きな馬車置き場に停めると、屋敷へと入った。

屋敷の広間へ案内された2人は、用意された椅子に座り身体を休める。
適度な柔らかさの椅子は、疲れた身体を癒すには最高の質感だった。

「あ!イズミだ」

少女姿のカーネリアが現れ、イズミ達の元へやって来た。

「久しぶりだな、コッチはどうだったんだ?」

「順調にこの町に到着したんだけどさ、親と再開したら卵が孵ってさ!今は皆で子育てだな…子育てと言ってよいのかどうか」

カーネリアの口調が途中から疑問形に近い状態である。

「どうした?」

イズミが椅子から立ち上がろうとした時、カーネリアの足元にラミア族の子供が駆け寄って来た。

「かーねりあ、遊ぼ!追いかけっこ!」

まだ呂律に幼さがあるが、しっかりと言葉を使えている子供だった。
子供の身体が光に包まれると、人間の姿へと変化して屋敷の廊下へと走ってゆく。

「ちょっと、待ちなさい!」

カーネリアはイズミとの話を切り上げると、人間の姿に変化した子供の後を追いかけ始めた。

イズミとベリアは呆気に取られていると、トレットが別のラミア族と一緒に現れる。

「トレットさん、今しがたカーネリアがラミア族の子供と追いかけっこを始めましたが」

「娘を助けて頂きまして、本当にありがとう御座いました」

イズミとベリアへ頭を下げた女性は、そっとソフィアに尻尾を預ける。

「私はガーベラと申します」

「イズミです」

「ベリアと言います」

3人は挨拶を済ませると、早速本題に入った。

「先程変化の魔法を使ったのが、娘のリコです…まだ孵って半月程なのですが、常識外の速度で成長しています」

「常識外とは?」

「孵って3日目には簡単な言葉を話せて、5日目には少しづつ会話が出来るようになりました。変化の魔法が使えると分かったのは、6日目の夜の事でした」

ベリアの目がまん丸になった。

「1週間も経たずに?」

「はい」

ガーベラの説明にトレットも頷いている。
廊下ではリコとカーネリアの追いかけっこが時折見える。

「卵の時に魔剣が吸収されたと言う話は聞いております。それの影響なのかは不明ですが、魔力量も桁違いです」

「具体的には」

「既にラミア族内でも、人間の両手の指数に入ります」

ガーベラが廊下を見ると、カーネリアが追いかけっこの途中ながらトレットに声をかける。

「トレット!やっぱり私だけじゃ無理!援護して」

カーネリアから本気の援護依頼を受けたトレットはため息をつくと、ガーベラに許可を貰い廊下へと向かった。

「変化の魔法を体得した3日後には、人間の姿の状態で歩けるようになりました。子育てとは何なのか、少し分からなくなり始めてますわ」

「あの…」

ガーベラの説明中にベリアが声を上げる。

「リコ様ですが、既に身体強化の魔法とかも会得してませんか?」

「…」

イズミとガーベラは廊下でリコを真剣に追いかける2人を見ると、静かにベリアへと顔を向ける。

「イズミ様。リコが卵で眠っている時に、本当に何もしていないのですね?」

「何かと申されましても、私は特に何も…そもそもラミア族は成長速度が著しく速い種族と言う事は」

「ありませんわ」

ラミアの姿に戻ったリコがガーベラの元へやって来たので抱きかかえると、息も絶え絶えな2人が戻って来た。

「ガーベラ様…私達でも、捕まえるのが大変なのですけど」

「ハーピーの姿だったら飛んで楽に追えるけど、建物内は不利過ぎる…」

その姿を目の当たりにしたイズミとベリアは、苦笑いを浮かべるしかなかった。
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