異世界無宿

ゆきねる

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第二十章 火山地帯で小休止

第二百九十四話 カクテルを作りましょう

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「美味しいですね、身体が温まるので寒い日にはホットで飲みたくなります」

「お湯で割るのですか?」

「そうですね、それが一番手っ取り早いかと」

イズミはグラスをテーブルに置くと、酒で割ったらどうなるかを思い出すべくドワーフ酒を取り出した。

「酒に使うのか?」

「活用出来たら良いのだが、イマイチ浮かんで来ない」

酒が絡むと乗り気になるベリアが、イズミの隣でジンジャエールもどきを飲む。

「コレはコレで良いけど、炭酸?がちょっと微妙かな」

「炭酸の有無は個人の好き嫌いが出る所だもう少し生姜、ジンジャーが多くても良いかな」

イズミの小言をガーベラは聞き逃さなかった。

「イズミ様はご存知なのですね、この飲み物の中味が」

「良い香りを感じましたので」

ウォッカ風のドワーフ酒を手に取ると、カクテルセットの計量カップを使い30mlをグラスに注ぐ。
目分量でジンジャエールもどきを注ぎマドラーで軽く混ぜる。

氷が無いので温いのが残念だが、飲んでみると悪くはない。
しかし、何か物足りない。

「何だったかねぇ…思い出せん」

考え込んでいるイズミの手元にあるグラスを取ったベリアが、一口飲んではイズミと同じような表情をする。

「イズミの作るヤツは、氷で冷やす前提なのか?」

「冷えてる方が美味しいのが多いな」

それを聞いたガーベラとトレットが、自分のグラスで試してみる。
自分達用のドワーフ酒と氷を準備し、イズミのやっていた手順で作り始める。

「…確かに、美味しいですね」

「そうですね。もう少し酸味があれば、味にまとまりが出るかと」

「酸味ねぇ」

ガーベラ達の感想を聞いたイズミは、カクテルセットを物色し1つの小瓶を取り出す。

「コレを少し入れてみますか」

瓶の蓋を開けるとライムの爽やかな香りが鼻腔を刺激する。
それをドワーフ酒の半分、15mlをグラスへ注ぎ軽く混ぜる。

「うん、良い感じだ」

「どれどれ…おぉ、少ししか入れてないのに結構変わるんだな」

ライムジュースの入った小瓶をガーベラ達に渡すと、分量を間違えずに注ぐ。

「美味しいです。完成した感じがします」

ガーベラがそう言って味わっていると、トレットはトニックウォーターを持ち出した。

「これも美味しいですが、私はこの前のカクテルが好きです」

トレットはジントニックが大層気に入っていたのか、イズミに向けて期待の籠もった視線を送っている。

「…分かりました」

観念したイズミはショルダーバッグからジンを取り出すと、ジントニックを作る準備をする。

「氷とグラスをくれないか?グラスは6個で」

「6個ですか?」

「そう。ちょっとね」

氷の入ったグラスにジンを注ぎ、トニックウォーターをゆっくりと注ぎ込む。
理想を言えばライムを飾り付けたいが、このままでも十分である。

「どうぞ」

「やりぃ!」

ジントニックの美味しさを知っているベリアとトレットは、グラスを受け取ると直ぐに飲み始める。

ガーベラも飲んでみるが、直ぐにジンが特殊なものだと気付いたようだ。

「イズミ様、このお酒はドワーフ酒ですか?」

「それは秘密と言う事でお願いしたいですね」

ジンの瓶を仕舞うと、余分に作っていたジントニックを左腕に着けているバングルに近づける。
バングルに後付けしたアメジストがイズミが気付かないくらい淡く怪し気に光ると、グラスが一瞬消えた。

「?」

ガーベラはイズミの行動を見逃してはいなかったが、この場では言葉にしなかった。

戻って来たグラスは中味が無くなっており、代わりに小振りな魔石が入っていた。
高度に加工された魔石は、正十二面体になっている。

魔石を手に取ったイズミはポケットに仕舞い込むと、グラスをそっと片付けて自分のジントニックを一口飲む。

「イズミ、おかわり!」

ベリアがグラスをイズミの前に置いて追加のジントニックを希求する。
その後ろではトレットも頷いている。

「ガーベラさん、トニックウォーターはもう少し使っても?」

「良いですわ」

ガーベラの了承を得たので、追加でジントニックを作り渡した。

「ありがとう御座います。そういえば、最初に作ったカクテル?の名前はなんなのでしょうか?」

トレットがジントニックを満足気に飲むと、思い出したかのように尋ねた。

「それが、全然思い出せなくてね」

イズミはそう言うと力無く笑った。
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