異世界無宿

ゆきねる

文字の大きさ
332 / 624
第二十一章 武器が出来るまで

第三百二十二話 公爵邸

しおりを挟む
ガーネディアン公爵家の屋敷は、グラテミア達の屋敷から馬車でまったり移動した約40分程度の場所にある。
マスタングで行こうかと提案したが、公爵家への牽制としてラミア族の所有する馬車で向かう事になった。

「武器も無しに移動するってのは、心許無いな」

「なにもさ、全部置いてくる事は無いんじゃないか」

イズミは慣れない馬車での長時間移動に疲れ始めていたが、酔うまででは無かった。
武器は何一つ馬車に乗せず、マスタングの後部座席にショルダーバッグや腕時計と共に置いてある。

勿論、フラウリアの分身が何時でも動けるように待機もしている。
荷物を仕舞う時に相変わらず野良猫がマスタングのボンネットで丸まっていたので、餌を用意してやるとガツガツと食べ始めるのも確認済みだ。


しばらくすると馬車が停止した。
どうやら目的地に到着したようで、敷地内に入ると手荷物検査が始まった。

直接のボディーチェックかと思っていたが、魔術師が虫眼鏡の様な魔道具をかざし、全身をサラッと確認するだけで検査が出来るようだ。
非常に便利な代物である。

「…この腰にある道具は何だ?」

魔術師の虫眼鏡を一緒に見ていた衛兵が、イズミの左腰にある道具を見て声を上げた。

「道具…あぁ、これはライトです」

「ライト?」

「私は魔法が使えなくてですね。これを使って夜に足元を照らしたり、暗がりに物を落とした時に地面を照らして探したりするのです」

イズミはゆっくりと左手でライトを取り出すと、試しに馬車の下を照らして見せた。

「こんな感じです」

「成る程、こう使うのか。魔法が使えないと、ちょっとした事でも道具を使わなければならない。色々と苦労するのだな」

「もう、慣れましたけどね」

衛兵は武器では無いと理解してくれたが、屋敷内に持ち込む必要は無いとの判断をしたので、馬車にあった籠に仕舞う。
フラウリアはスムーズに検査をパスし、ベリアの番になる。
魔術師が虫眼鏡を構える前に、持っていたナイフを取り出した。

「コレがアタイの武器だ。魔法剣らしいので、今受け取った者以外が手にした場合の安全は保障出来ない」

事前に注意事項を説明すると、衛兵の体長らしき男がやって来て確認をする。
男が手に取っても腕が微塵切りにはならなかった。

「…このナイフは、我々が預かるには荷が重い代物です。私の責任で持ち込みを許可します」

「どうも」

何かを感じ取った男は、ナイフを鞘から抜く事無くベリアへ返却した。
ベリアはナイフを簡単には取り出せない様に革紐で括ると、定位置に戻す。

一通りの検査が終わり屋敷内へと案内されると、大きな扉の前で一度立ち止まった。
扉を守るように立っていた衛兵が、静かに扉を押し開くと、豪華と言うよりは落ち着いた雰囲気の部屋が姿を見せる。

「御足労頂き、感謝致します」

部屋の奥に居る堀の深い顔の男が、イズミ達を見てから静かに言った。

「ヒュミトールを含む7つの町を領地として管理しています、グラント・ガーネディアンと申します」

相手が先に名乗ったので、此方も自己紹介はしておこう。

「イズミと申します。只の旅人です」

「ベリアと言います、冒険者でランクはAです。ジェヴェドール王国にて意気投合しまして、イズミの旅に同行しています」

簡単な挨拶を済ませた所で、グラントが話を切り出した。

「冒険者ギルドから報告がありました。アダマンタイトは冒険者ギルドでの買取りが決まったとか」

「そうですね。一個人が所有していても、手に余る代物でしたので」

「商人ギルドを挟ませたくないからと、レオンチーノから報告と相談があった。一部は儂が一時的に肩代わりする方向で既にまとまっている。レオンチーノも良い判断をした、商人ギルドが絡むと面倒だからな…」

イズミは努めて余計な事を口にしないように注意しつつ、グラントの話に答える。
嫌な緊張感が部屋を支配し、目と表情だけでの牽制があった。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...